なんかよく分からんが(元)親友から電話が掛かってきた件
7月26日。
今日はいい天気だった。
ピピピ…ピピピ……ガチャン。
目覚し時計を止め、布団の中で暫くもがき、そして起き上がる。
顔を洗いシャワーを浴び、着替えて炊飯器をセットする。
大学生になってから一人暮らしをしている俺だが、やはり朝食をしっかり取ることは大事だ。そんなことを考えながら米をかきこみ、味噌汁を啜った。
いつもの、朝だ。
いや、正確には、
この時点までは、いつもの朝だったと言えるであろう。
机の上の携帯が振動する。特に友達が多いわけでもない俺にとって、夏休み中に電話が鳴るなどということは滅多にない。好奇心で、携帯を手に取った。
「はい、もしも…
「おい!こ、小林か!?」
し、と言おうとした瞬間、ノイズ混じりの大声が飛んできた。
「え、ええっと、どちら様で?」
「あ?オレだよオレ!絶賛ニート満喫中、いや、満喫中だったオレだよ!」
「え、あ、あー…」
彼と話すのは久しぶりのだからか、若干思考回路に空白が生じる。
「おい聞いてんのかよ小林!」
聞いてるよ、何?と返すと、彼はまた叫ぶ。
「助けろ!」
「………はあ?」
「いいから助けろよ!…あああああああ!?くそ、地面が抉れ………
ブチッ。ツーツーツー。
意味不明な叫びとともに通話が切れる。
「助けろ、か……」
彼との関係。
きっと一般的には幼馴染というのだろう。
小学二年生の頃、本ばかり読んでいた根暗な俺に、彼が遊ぼうと声を掛けてくれた。
それをきっかけに、俺達は親友になったのだ。
でも、それは過去のこと。
大学受験に失敗した彼はいわゆるニートになった。更にもともとの2ちゃん気質が災いして「オレはニートじゃない、自宅警備員なんだ」などと供述するように。
別に、俺だって勝ち組じゃない。友達は居ないし、成績だって下から数えたほうが早いだろう。特別な特技もなし、彼女いない歴=年齢だし、夢もなし、楽しいことも特にない。
でも、かつて幼馴染だった彼よりもマシだ。マシなはずだと、そう思って暮らしている。
だから、
「少し動揺したのかもな」
…まあ掛けなおすのも面倒だし、そのまま放って置くことにしよう。
「コバヤシハ カンガエルコトヲ ホウキシタ!」
くだらない独り言。この2年間で、すっかり板についてしまった。
「はあ…暇だ。これだから夏休みっつーのは、」
嫌になる。