プロローグ
ある日、俺は変な夢を見た。
それは何もない空間、ただただ広いだけの空間にいる夢。
だけど暫くすると女の声が聞こえてきた。
≪…人はいつか死ぬ。
病死、事故死、衰弱死など……現代社会の中ではそういった事が多い。
だが人は生き残る。
何故だろうか...賢いから?それとも技術を持っているから?
...どれも違う、違うのだ。
では人は何故今まで生き残ってきたのだろうか、それは人の優劣を決める制度があったからで≫
「仕事を放って何を言っておるのじゃ…次元を司る神イリーナよ」
「ひゃっ!? …なんだゼウスかぁ」
「呼び捨てにするでない。全く、勝手に下界の人間の夢に侵入しおって……」
「まぁまぁ、いいじゃない。だって僕の神託を聞けるなんて超運がいいんだよ?」
「なにが《運がいい》じゃ。お主は神託した者に厄介事を押し付けているだろうに」
「んー? 何のことかなー?」
女の語りに突如割って入ってきた渋い爺さんの声。
つかゼウスとか次元を操るってどんだけファンタジーな夢を見てんだよ。
そう思いながらも二つの声の話は進む。
「それに、神託なんぞ大抵の者は聞かんじゃろ。なんせここはその者の夢の場であるのだからな」
「うるさいなぁ…それでも僕は神託するの。どうせ遅かれ早かれこの人間は僕の暇つぶしに付き合うんだから」
「お主はまた勝手な事を……」
「いいじゃん、次元は僕が司ってるんだし。あんまり頑固だと嫌われちゃうよ?ナンパ神ゼウス?」
「誰がナンパ神じゃ! 儂は全知全能の神じゃぞ」
「はいはい、分かってますよーゼウス様ー」
「くっ、だからこやつの面倒は見たくない言ったのだ。 一体誰が儂をこんな目に合わせるんじゃ!」
「自分の地位と能力でしょ?」
「うっ……! あーやめじゃやめじゃ、お前への説教は連れ帰ってからにする」
「えー! やだやだっ、僕はこの人間に神託したいのーっ!」
「ほぅ……ならば力ずくで―――」
「さっ、さっさと帰ろうか♪」
「うむ、そうするとしよう」
全く…何か夢なのに凄いリアリティのある茶番だな。
そう思っていると、今まで真っ白で何も無かった空間が黒く染まり始めた。
慌てる俺、そんな中さっきの声がまた聞こえてきた。
《じゃあまたね♪ 下界の人間君♪》
そんな声の主に話しかけようと試みるが声が出ない。
そうしていると、俺のいる空間はどんどん黒く染まっていきそれと同時に俺の意識が少しずつ薄れてきた。
夢の中で意識がなくなるって怖いもの…だ……な
《ま、頑張るのじゃな》
消え行く意識の中、哀れむような爺の声が聞こえたのが夢の最後だった――――




