ペットを飼う権利
時代は22世紀のある日のこと。
ついに画期的な装置が開発されたのである。
それはなんとペットと会話できるという装置だった。
だが、この技術を巡ってはいろいろ問題になっていた。
神を冒涜するものだという。
また、ペット業界も反対だった。
ペット保護法に基づき、ペットの捕獲、繁殖にも気を使ってきたが、
もしペットに意思があったら、さらに商売がやり難くなると予想されたからだった。
しかし、技術者は開発してしまった。
好奇心には勝てなかったのだ。
それから幾日が経ち、中央機関がその装置を利用し、ペットの諮問を行った。
メスのペットは服を着せられ、円形の大会場の中央に立たされている。
最近は品種改良され、手乗りサイズが人気だが、それは原形の大型種だった。
ペットはいつもより上等な服をまとっていたが、その頭は異様だった。
長い髪の間から装置が見えていた。
頭にその装置が埋め込まれている。
「今の暮らしに何か不満はありますか?」
そのペットに問いかけた。
「私は『人間』です。
不当な拘束は人権侵害です。
自由を要求します」
そのペットは自由の権利を要求した。
そのペットは『人間』?
会場は騒然となった。
『人間』ってなんだ?
それは銀河系のある惑星で捕獲されたペットで、
一応電波文明を持つ下等な生命体だった。
同種で殺し合いをする珍しい生命である。
ペットの主張で会場は混乱し、諮問は打ち切られた。
『ペットが権利を主張した』
その星のニュースとなった。
ペットの自由を認めるか、
自分たちにペットを飼う権利があるのか、
と中央機関の判断が求められた。
『人間と称するペットの権利を認めない』
中央機関は判断を下した。
人間の住む地球を徹底的に調べた結果だった。
「人間は犬や猫などのペットの権利を認めていない。
それに特に酷いのは、要らなくなったペットを殺している」
この判断に反対するものは少なかった。
それは地球の情報が流されたからだった。
ペット業界は商売がし難くならないように必死で地球の情報を採取していたのだ。
人間の悪行が明らかになったが、以前と変わらずペットへの虐待はまったくなかった。
その星ではペットを愛しているからだった。
私は愛犬家という言葉が嫌いです。
なぜなら、日本にはほとんど愛犬家がいないからです。
彼らは一般的な犬が好きなのではなく、
自分が勝っている犬が好きというだけです。
じゃなかったら、保健所で年3万匹も殺されないでしょう。
私はペット購入時に20%のペット税を導入するべきだと思います。
そのお金を使って保護されたペットを飼育するのです。
そうすればペットのためになり、また人間の雇用も生まれます。
この法案が通るようにご協力願います。
自称名探偵藤崎誠はネットにこの物語を投稿した。
これは一人の少女の依頼だった。
彼女は、保健所で犬や猫が殺されていることを知って居たたまれなくなった。
その日の学校の帰り道、『名探偵藤崎誠事務所』のカンバンを見つけた。
真新しいカンバンだった。
彼女は3000円を握りしめ、事務所のチェイムを押した。
「保健所で殺される犬や猫を助けて欲しい」
これが彼女の依頼だった。
藤崎は彼女の話を目を瞑って聞いた。
話が終わると、クッと目を開いた。
「この名探偵にお任せあれ」
少女は探偵に何をするかも聞かず、
お金を置いて帰って行った。
藤崎は一気にこの話を書き上げ、小説投稿サイトに投稿した。
そして、知る限り人脈にメールを送ったのだった。
数年後、ペット税が導入される見込みがたった。