詩『Pathetique』
『Pathetique』13/10/28
荒れ果てた
大地を覆いつくす
雪
否応なく
吹き荒れる冷厳な
風
白なのか
黒なのか
氷に閉ざされた
壁の奥のわずかな体温
かすかな鼓動が切りとられる
小さな歴史のはじまり
与えられる痛みと浴びせられる光
「有る」ことの確かさを覚え
緩んだ風にゆだねた時の舟は
しだいに鮮やかになっていく景色の中を
冷たさに震えながら下っていく
四角い石板に刻みこまれた
記憶の列をなぞる手の
儚さ
膨らみ
軟らかさ
色つや
節ぶし
しわ
痣
時とともに
変わりつづける
肉体を映した影は
深く、長く、頭上を覆い
いつしか重くのしかかる
石板とわが身が重なったとき
荒野を逝く道の傍らに
蔦をからめて
埃にまみれ
人知れず
立つ
石碑で
あった
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