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【 断 章 】
梅花が降り止まない。
手を上げて捉え、握りしめると、血となって滴る。
赤いそれは、まるで手のひらから湧き上がるようにこぼれ落ちた。
握りしめて立ち尽くす。
足許に、骸。
刀の刺し傷から血を流し、臥している。
仰いだ空には雷雲が立ち込めていた。
その稲光りは激しく。
目が射抜かれ、視界が真っ白に染まる。
瞬き、開眼したそこに美しい京の都。
様々な色に染まって、涼しい春の風が吹き抜ける京……。
四方を山に囲まれた、主上の御座す地。
平安京……。
血に染まった手を握りしめてふたたび、空を仰ぐ。
これが、神の託宣か。
このものを殺せというのか。
京を護るために、人をこの手にかけろと……。
奥歯を噛んでうつむいた。
血塗られた京はまだ、犠牲を欲するか。