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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕〔残酷描写〕が含まれています。

魔王を倒して王国に平和をもたらすだけの話

作者: みそ
掲載日:2025/11/04

性癖だけ詰めました。よろしくお願いします。

 ヘリックス辺境伯の次男、トレイルは呪われている。トレイルに見つめられた者は石になってしまうのだ。どんな魔法も、奇跡もトレイルには意味を持たない。石になったら、それまでだ。それゆえに、トレイルは恐れられてきた。誰だって石になりたくないからだ。同時に便利使いもされてきた。辺境伯領に攻めて来る魔物も敵国の軍もトレイルが一度目を見開けばそれで終わりだ。邪魔なものは割り砕き、あるときは石を残して防壁替わりにした。そんなことをしていたから、ヘリックス辺境伯領には誰も攻めてこなくなった。


 誰もがトレイルを恐れた。近づく者はいなかった。次男だったから、最悪死んでも良かった。だから、メイドも執事も近寄らなかった。1人を除いて。トレイルと同い年の執事のラグスはトレイルに近寄る唯一の人物だった。石にするとかチョーカッケーとか言ってトレイルと話をしたがった。トレイルも、怖がるだけ怖がるくせに利用するだけの周りとは違うラグスのことを面白いと思って、一緒にいた。8歳の頃からずっと2人だけで一緒に居た。


 トレイルとラグスは15歳になった。辺境伯の次男であるトレイルと、ネカテー男爵家の三男であるラグスは貴族の義務として王立学園に入学した。学園でも当たり前みたいにトレイルは孤立した。ラグス以外、トレイルに近寄る者はいなかった。でもトレイルはそれでよかった。ラグスさえいてくれれば良かった。だってずっとそうだったから。ラグスに他の友人ができて一緒にいる時間が減ったら悲しいなとは考えていたけれど、ラグスはトレイルを恐れるだけの周りを嫌っていたので、学園でも二人だけでずっと一緒にいた。


 夏頃から、トレイルはだんだんいじめられ始めた。ヘリックス辺境伯領は攻め込めないと思った周囲の国や魔物は、それ以外の場所から攻め込み始めた。ヘリックス辺境伯自体が嫌われ始め、それの原因になったのはコイツだとトレイルは周りから憎まれた。トレイルは学園では目隠しをしていた。不用意に石にしないようにするためだ。それが良くなかった。自分の意思で魔法を操ることもできない未熟者だと思われた。ラグスがいないと移動もままならない。それが軟弱だ、辺境伯の子息とは思えない、と周囲はトレイルを嗤い者にした。トレイルは気にしなかった。家でもされてきたことだからだ。エスカレートする行為はトレイルとラグスに直接魔法をぶっ放すレベルにまで到達したが、二人は気にしなかった。怪我をしても魔法で治せば良いだけだから。


 学園での三年間が終わった。卒業を祝うパーティーで、それは起きた。ラグスが、殺された。トレイルは拘束されていて、助けてあげられなかった。トレイルにできたことは、ラグスの悲鳴と最期の言葉を聞くことだけだった。


「トレイル、逃げろ!何でもいいから、お前だけは…」


 トレイルは、しっかりその言葉を聞いた。最期まで、自分のことを想ってくれたラグスの言葉を、しっかり受け止めた。トレイルの拘束が解かれた。目隠しがあるから、石にすることなどできやしないと思っている周りは、口々に言った。


「従者も守れないなど、主人失格だ。」

「とてもあの恐れられるヘリックス辺境伯の子息とは思えない。」

「未だに目隠しなどしている!あれがなければせめて従者の最期をみられただろうに。」

「仕方なかろう、トレイル殿は出来損ないなのさ。石にする魔術以外できないし、その唯一の魔術さえコントロールできない。」

「ヘリックス辺境伯もお気の毒だ、こんな使えない息子を持つなんて。」


 トレイルはしっかりその言葉も受け入れた。正しいと思った。ラグスが死んだのは自分のせいだった。ならば、ラグスの最期の言葉はせめて守らなくては。そうでなければ、ラグスはどうして死んでしまったのか。そう、ラグスは何でもいいから、と言った。なら、こうするのが、一番逃げられる可能性が高いだろう、とトレイルは考えた。


 隠された瞳があらわにされる。不可思議な色に瞬く2つの球体は、瞬く間にその場の人間を全て石にした。トレイルは、頭に過ぎる言葉を、口にした。


「魔物たちよ、高らかに我が名を讃えよ。我は汝らの守護者、汝らを統べるもの。我が名は魔眼の魔王トレイル・フォン・ヘリックス。我がもとに集い、我に従え。」


 世界は恐慌状態に陥った。300年ぶりの魔王の誕生、ソレによって活性化する魔物たちによって侵された領土は数しれず。たった1年で、人類はそれまで維持してきた領土の7割を失った。ヘリックス辺境伯と学園に通っていた生徒たちの家、そして王国は世界中の国々から責め立てられた。何故か魔王が王国を狙わなかったのもたちが悪かった。実は密かに通じているのではないかと疑われ、他の国々に領土と金を差し出す他なかった。少しでも疑われないようにするために。


 魔物たちは魔王によって与えられた石化の力を大いに振るって攻めた。身体全てを石にするのではなく、一部分だけ石にするだけでも人間は恐慌状態に陥った。そこを砕いてやるのが楽しいと、魔物たちは楽しみながら征服した。


「ああ、逃げられた。逃げられた。ラグス、君の最期の言葉だけは守れた。…違う。本当は、もっと早くこうしていれば、二人で、逃げられたのに…。」

「滅ぼそう。全部。ラグスは、人間のことが嫌いだった。全部滅ぼして、せめて罪滅ぼしをしないと、俺は…。」

「なんで、俺が生きているんだ。俺が死んでいるべきだった。ラグスは、何も、悪くないのに、なんで、なんでっ、なんで!」

「……死にたい。」

「ごめん、ラグス。ごめんなさい…。」


 人間はついにやっかみ合うのをやめた。魔物に征服されるのはマズイと協力を始めた。教会勢力が聖女を旗印にして魔王を討伐するのはどうかと言った。全員、それに同意した。


 聖女とその騎士の力は凄まじかった。あっという間に魔物に奪われた領土を回復していった。そして、2年で魔王城までやってきた。


「魔王の力は強大です。私のバリアの中で必ず戦って下さい。」

「もちろん!石になんてされたくないからね。」

「ああ、分かっている。これで、終わりだ。」

聖女とその30人の騎士は、魔王城に攻め込んだ。


 戦いは終わった。聖女が癒やしの奇跡でまだ生きている騎士を治すところをトレイルは見ていた。真っ二つにされた身体で見ていた。トレイルは負けた。ラグスの最期の言葉を結局最後まで守れなかった。地獄行きだな、とトレイルは思って、一言だけつぶやいてから、さらさらと身体を崩壊させて死んだ。


「王国に繁栄を。…ラグスに、幸福を。」


「…え?」


 トレイルは、生まれ育った王国のことが嫌いではなかった。綺麗な都市だと思っていたし、戦うのはあくまで職業としての騎士だけ。戦う力を持たない平民に無理やり剣だけ持たせて突っ込ませてくるような隣国たちを軽蔑していた。だから、魔王になっても王国を攻めなかった。ラグスと出会わせてくれた王国を攻めなかった。


---

トレイル、来るのが早すぎんだろ。にしても、かっこよかったな、お前の魔王としての姿!…軽蔑しないのかって?するわけないだろ。俺のために、そうなったお前を軽蔑なんて、するはずない。他の国には容赦しなかったくせに、王国を攻めなかったのも、俺との思い出があったから、なんてむしろイイね。めっちゃ好きだぜ、お前のこと。…お前も?いいじゃん、相思相愛ってことだな。行こうぜ、トレイル。死後の世界でも、俺とお前はずっと一緒だ。

読んでくださりありがとうございました。

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