感情を売り払った—今、違法の取引人が再び喜びを感じさせてくれると約束した
ストーリー概要 :
感情が通貨として取引されるディストピア世界。無気力な青年カイルは、密売人エルと出会う。彼女は「喜びを感じる能力」という、カイルが求めていたものを与えられると主張する。二人の旅は、現実と真実、そして自己認識の境界を揺るがすことになる。
曇天に覆われた重苦しい都会。ネオンの看板が「幸福を買え」「感情取引今すぐ」と喧噪を放ち、狭い路地を埋める人々の顔には、点滅するデジタルマスクが「感情レベル」を表示していた。
「感情が通貨となった世界で、富裕層は喜びを糧に生き、残された者たちは──」
ボロボロの服をまとった人々が肩を落とし、虚ろな目で歩く。マスクには「不安3%」「苦悩2%」と記されている。
「残された者たちは、空っぽの存在として漂う。感情もなく、空白のスクリーンに顔を隠したまま」
人混みの中で一人静止する青年・カイル。古びたマスクに「無感情0%」と薄く表示され、腕はだらりと垂れ、影に覆われた目は周囲と隔絶していた。
(まるで奪われた息のようだ……)
(これが……残された全てか?)
マスク越しの瞳は虚ろで、遠くを見据えている。ネオンの光が瞳孔に映り、不気味な輝きを放つ。
(感情のない人生……)
カイルは群衆に紛れながら歩き出す。周囲と同調しながらも、孤独は誰より深い。
(この麻痺に囚われて……)
(俺は……何も感じない)
ゴミが散乱する路地裏にカイルが入る。背後のにぎわいがぼやける中、街の影が彼を押し潰すように迫る。
「カイルのような者にとって、沈黙にさえ安らぎはない……あるのは空虚だけだ」
(そもそも……ここにいる意味は?)
マスクの割れたスクリーンが微かに flicker。「無感情0%」の文字がかすれ、低い雑音が響く。
(このマスク……日増しに重くなる)
路地の奥でたたずむカイル。壊れた椅子と「感情取引で目的を!」のビラが街灯に照らされ、マスクの下で彼は嘲るように笑う。
(目的……か)
(そんなもの売ってるのか?)
マスクの縁を掴む震える指。外す寸前の緊張が走る。
(消えたって……誰も気づかねえだろ)
街灯に小さく浮かぶカイルの影。背後の高層ビルが無関心にそびえ、彼は俯いて拳を緩める。
(ここには……何一つ意味がない)
ひび割れた階段の縁に座り、地面を見つめるカイル。影が孤独を強調する。
「感情が売買される街で、カイルは何も所有していない。自分自身さえも」
(感じるとは……どういうことかも忘れた)
割れたマスクを無意識になぞる指。デジタルホローの向こうに、かすかな自我がのぞく。
(この下には……昔の誰かがいた)
路地裏を見下ろす俯瞰図。ゴミに囲まれた小さな影は、街灯の光すら飲み込まれる。
(消えても……覚えていてくれるのか?)
擦り切れた手袋の拳が微かに震える。
(俺は……少しずつ消えてる)
マスクを上げて虚空を見る横顔。瞳に宿るのは空白だけ。
(繋ぎ止めるもの……あるのか?)
背後から見た路地の構図。届かぬ街の明かりに、ナレーションが響く。
「感情が通貨の世界で、カイルは与えるものさえ持たない」
階段から立ち上がる足元。街の機械音が低く唸る。
諦めの姿勢で路地を出るカイル。ポケットに手を突っ込み、肩を落とす。
(今日も……行き止まりか)
彼の視界に、突然ホード姿の人物が浮かぶ。スカーフで顔を隠したその影は、街灯に幽かな光を纏う。
(……誰だ?)
フードの隙間からのぞく鋭い瞳。カイルを貫く温かく確かな視線。
エル(穏やかに核心を突く声)
「何か探してるの……カイル」
マスクが一瞬ちらつく。「感情レベル1%」が点滅。彼は動揺する。
カイル(戸惑い)
「なぜ……名前を?」
リラックスした姿勢で微笑むエル。手の平をそっと差し出す。
エル(確信に満ちた笑み)
「知ってることは多いわ……例えば、あなたが『無感情』に疲れてることとか」
街灯の下、エルと対峙するカイル。不安定な姿勢で影が長く伸び、エルの自信に満ちた佇まいが際立つ。
カイル(疑念混じり)
「『無感情に疲れた』だって?……そもそもお前は何者だ?」
エルがポケットから取り出した小瓶。鮮やかな霧が渦巻き、陰鬱な街に異彩を放つ。
エル
「あなたが思うより……多くのことを理解する者よ」
見下ろす構図のカイル。小瓶を凝視する拳はポケットで固く結ばれている。
(また詐欺の類か……?)
片目を細めて挑発するエル。フードの陰から覗く確信に満ちた笑み。
エル(挑戦的)
「詐欺かもしれないね。でも」
「『空っぽ』の人間に、これ以上失うものある?」
俯くカイルの横顔。防御的な姿勢のまま、拳はポケットの中で震える。
(空っぽ……まさに俺の今だ)
街灯に浮かぶ二人。差し出された小瓶が距離を橋渡しする。
エル
「記憶を一つ譲ってくれない?……そうすれば、生きている実感を思い出させてあげる」
腕を組んで視線を逸らすカイル。嘲笑的な態度で肩を竦める。
カイル(嘲る)
「記憶取引?まさか本気で言ってんのか?」
ため息混じりに眉を上げるエル。慣れた様子で懐から発光する細い器具を取り出す。
エル(呆れ気味)
「本当に……厄介な人ね」
カイルの背後から差し出される小瓶。エルの半陰になった顔が謎めいて見える。
エル(落ち着いた説得口調)
「ならば……簡潔に説明してあげる」
街灯の光の縁に立つカイル。完全に照明に浸かるエルとの対比が浮かび上がる。
(こいつ……本気なのか?)
外套から現れた玻璃製の器具。先端が微かに青白く輝く。
厳粛な面持ちで小瓶を掲げるエル。食い入るように見つめるカイルの瞳に、かすかな興味が灯る。
エル
「感情は単なる『気分』じゃない。もっと深いもの……記憶から紡がれるの」
疑いながらも引き込まれるカイル。眉根に皺が寄る。
(本当なら……)
廃墟のような街路を指さすエル。暗い建物群が彼女の言葉に重なる。
エル
「この街では記憶が取引される。売買も窃盗も……方法さえ知っていればね」
突然接近するエルの瞳。底知れぬ輝きを宿す。
エル(囁く)
「記憶にはそれぞれ『味』がある……恐怖、喜び、悲しみ、切望」
腕組みを解いたカイル。緊張が緩み、真剣に聞き入っている。
カイル(躊躇い)
「つまり……他人の記憶を奪えると?」
光る器具を掲げるエルの手。先端の輝きが指紋を照らす。
エル(確信)
「代償と引き換えにね。正確には……『交換』よ」
身を乗り出して器具を差し出すエル。挑発的なまなざしがカイルを射抜く。
エル(誘う)
「ほんの小さな記憶でいい……見せてあげる」
震える拳。俯くカイルの葛藤が指先に現れる。
(現実じゃない……だがもし?)
暗い路地で触れ合う二人の手。器具の先端がかすかに唸る。
カイル(驚愕)
(これは……?)
黄金の霧が器具に吸い込まれる。幼少期の記憶――子犬と遊ぶ断片が浮かぶ。
エル(穏やか)
「これがあなたの一部……記憶の欠片」
器具内に広がるノスタルジックな光景。ぼやけた子犬の影が懐かしさを喚起する。
エル(オフパネル)
「これが『郷愁』……今、あなたが感じているもの」
微かに笑むカイル。記憶の温もりに目頭が熱くなる。
(覚えてる……この感覚)
幼いカイルが子犬と戯れるセピア色の記憶が浮かぶ。
(クスクス……)
現実に戻るカイル。未練がましく虚空に手を伸ばす。
カイル(呟く)
「……消えていく」
哀れみを込めて見つめるエル。共感の影が瞳を掠める。
エル
「郷愁は儚いもの。でも……もっと強い感情をあげられる」
記憶の残滓を見つめるカイル。エルは静かに決断を待つ。
(本物の……感覚だった)
覚悟を決めた瞳。エルをまっすぐ見据える。
カイル
「わかった……他に何ができるか、見せてみろ」
再び光る器具を構えるエル。前のめりになるカイルの期待が溢れる。
エル
「次は……少し『強烈なもの』を」
突如襲った感情の奔流に目を閉じるカイル。笑みが零れる。
(ハハハ……)
(これが……幸せ)
深紅と黄金が渦巻く記憶の小瓶。エルが興味深げに傾ける。
仰向くカイル。幸福感の余韻に浸るも、既に虚脱感が忍び寄る。
(速すぎる……)
業務的な表情で次の採取を始めるエル。飢えたように見つめるカイル。
エル
「次のは……『特別』よ」
頬を伝う涙。苦痛に歪む表情で過去の悲しみと向き合う。
(なぜ……また空虚に?)
器具を握り締めるエル。感情の激流に打たれるカイルが、驚きと苦悩で震える。
激しいオレンジ色に輝く器具を構えるエル。指先に緊張が走る。
エル(静謐)
「今回は……少し厳しいわ」
見下ろし構図のカイル。怒りに顎が震え、額に血管が浮かぶ。
(破壊したい……何かを……)
うつむいて荒い呼吸を繰り返すカイル。震える拳を見つめ虚脱する。
(また……消えていく)
冷静な観察眼を向けるエル。満足の影が瞳を掠める。
エル
「強い感情は高価よ。その代償は……『自分』の欠片」
突然顔を上げるカイル。記憶の霧に混乱する。
(待て……母の名前は?)
頭を抱えてパニックに陥る。背景が白く滲む。
カイル(震える声)
「なぜ……思い出せない?」
無表情で見守るエル。薄い同情が唇に浮かぶ。
エル
「これが代償よ。少しずつ……削られていくの」
瞳孔が拡散したカイルの顔。冷汗が額を伝う。
(家族の顔……思い出せない……!)
膝をついて頭を抱え込む。影が孤独を強調する。
虚空に伸びる震える手。過ぎ去った記憶を必死に掴もうとする。
(子犬が……いた……名前は……?)
恐怖に見開かれた瞳。一粒の涙が頬を落ちる。
カイル(呟く)
「いや……こんなの……嫌だ……」
腕組みして見下ろすエル。背後で記憶の欠片が渦巻く。
エル
「ほつれ始めてるわ、カイル。記憶と感情は糸のように絡み合ってる」
「一方を手放さなきゃ……もう一方は得られない」
真っ黒な背景に縮こまるカイル。幽かな記憶の断片が遠ざかる。
カイル(絶叫)
「返せ……お願いだ……!」
崩れ落ちるカイルを見下ろすエル。興味深げに首を傾げる。
エル
「糸を手繰り寄せる気分は?」
外套内の小瓶群に触れる手。一つを慎重に選び取る。
(そろそろ……完成が近い)
狂気の目で見上げるカイル。理性の糸が切れかかる。
カイル
「なぜ……そんなことする!?」
真剣な面持ちに変わるエル。覚悟の光を宿す。
エル
「私に問う? あなたこそ『何かを感じたい』と来たはず」
「いざ感じ始めて……恐怖したのね」
震える視界に映るエルの手。優しくも誘惑的に伸びてくる。
エル
「望み通りにあげる。最後の取引よ――」
「あなたが深く封印した……『核』となる記憶と引き換えに」
葛藤に歪むカイルの顔。黒い背景が孤立感を増幅する。
(最後の記憶……?)
張り詰めた空間で囁くエル。決定的な提案を投げかける。
エル
「守り抜いた記憶を譲ってくれたら……未知の感情を味わえる」
エルの手に触れようとする震える指先。決断の瞬間。
カイル
「……どうぞ。持っていけ」
見下ろすエルの威圧的な影。膝折れたカイルが小さく見える。
エル
「覚悟は? ……今回は痛いわよ」
空中で奇妙な印を結ぶエル。冷徹な集中力がみなぎる。
エル
「抵抗すると……余計に苦しむだけよ」
カイルの頭上で渦巻く記憶の嵐。身体が痙攣する。
カイル(苦悶)
「ぐっ……何……これ!?」
浮かび上がる幼いカイルの記憶。暗い部屋で膝を抱える少年。
エル
「これが……あなたを壊した瞬間」
恐怖に凍りついた少年の瞳。青黒い影が過去を覆う。
エル(オフパネル)
「無感情の根源……ここにある」
記憶を見つめる成人カイル。抑えきれない涙が溢れる。
(思い出した……あの時……)
「やめろ……見たくない……!」
小瓶に記憶を封じるエル。薄笑いが危険な輝きを放つ。
エル
「遅いわ。契約は成立した」
虚脱して見上げるカイル。無力な拳が床を叩く。
(これで……良かったのか?)
小瓶を掲げて余裕の笑みを浮かべるエル。スカーフが無風に揺れる。
エル
「さあ……今の気分は?」
涙の跡が残るカイルの顔。瞳孔がかすかに拡散し、初めての解放感に戸惑う。
(軽い……鎖から解かれたような)
虚無の空間に佇む二人。エルの背後で記憶の渦が静まる。
エル
「ほら、真っさらでしょ?重荷も痛みもない」
脈動する記憶の小瓶。生命の鼓動のように明滅する。
エル
「自由よ、カイル。罪悪感も負担も……」
「ただし……『自分』も消えたけどね」
床を掴む震える指先。爪が地面に食い込む。
(『自分』も……?)
「それ……どういう意味だ?」
腰を折り曲げて囁きかけるエル。スカーフが顔の半分を覆う。
エル
「つまり……ようやく平穏を得たの。望んでいたことでしょう?」
ふらつき立ち上がるカイルのシルエット。虚無が彼の小ささを強調する。
(平穏……?これが?)
「……自分が何者かもわからなくなった」
薄笑いを浮かべるエルの瞳。悪戯心が光る。
エル
「それがいいのよ。今のあなたは……なりたい者に成れる」
霞がかった空間に漂うカイル。輪郭が滲み始める。
(なりたい者……?)
灰色と青の霧が渦巻く虚無。衣装の裾が微風に翻る。
〈周囲の空虚は生き物のようだ……嵐の前の静寂〉
スカーフを解き始めるエル。悟りに満ちた視線を投げかける。
エル
「ずっと疑問だったでしょ?私の正体」
「なぜあなたを……ここまで知っているのか」
警戒しながら後退するカイル。眉間に皺が寄る。
(何を言い出すんだ……?)
亀裂の走る虚無。エルの足元から光の破片が迸る。
エル
「教えてあげる」
スカーフがふわりと舞い落ちる。ドラマチックな瞬間。
(ひらり)
全面見開きで明かされるエルの素顔。カイルに酷似しながらも鋭い輝きを放つ。
カイル(衝撃)
「なっ……!?」
エル
「驚く?でも当然よ……私はあなたなんだから」
後ずさるカイル。現実逃避しようとする手の動き。
(嘘だ……ありえない……)
哀愁を帯びたエルの微笑。共感と憐憫が入り混じる。
エル
「あなたが封印した全て……怒り、悲しみ……」
「……忘れていた希望さえも、私が引き受けている」
虚無が崩壊し始める。幼少期の記憶が断片的に浮上する。
エル
「取引した記憶は消えていない……形を変えてあなたに還元されていた」
「私だけが……決して手放さなかった」
瞳孔に映る世界の亀裂。カイルに理解が訪れる。
(彼女は……俺自身……?)
凍りついたように見つめ合う二人。吐息が白く滲む。
カイル
「お前が俺なら……なぜ……」
「……そんな外見なんだ?」
くすくすと笑うエル。挑発的なまなざしを投げる。
エル
「外見が気になる?そうね……」
「こうでもしないと、あなたは話を聞かないでしょ?」
エルの肩越しに見えるカイルの困惑。腕を掴んで踏ん張る。
カイル
「意味がわからん……」
(自分の潜在意識が……なぜこんな芝居を?)
腰に手を当てて前のめりになるエル。真剣さを滲ませる笑み。
エル
「細かいことはどうでもいい。大事なのは……」
「あなたの疑問が……私への道標になったこと」
光る虚無の破片を反射する拳。握り締める力が緩む。
(狂ってる……だが、どこか……腑に落ちる)
風に舞うスカーフを背に振り返るエル。肩越しの微笑み。
エル
「リラックスしなよ。昔から考えすぎなんだから」
「難しい思考は……私に任せればいいのよ」
言葉を失うカイル。抗議の意思と諦めが入り交じる。
カイル
「現実感が……ない」
エル(オフパネル)
「当然よ。あなたはずっと『現実』から逃げてきたんだから」
接近するエル。記憶の破片が優しく脈打つ。
エル
「あなたを楽にはさせない。向き合わせる……全てに」
「認めなさい。あなたには……私が必要なの」
緩みかける拳。抵抗が弱まり始める。
(馬鹿げてる……だが……彼女の言葉には真実が混じっている)
エルの指先がカイルの腕を掠める。距離が縮まる緊張感。
エル
「急に大人しくなって……もう言葉もないの?」
顔を背けるカイル。輪郭がかすかに透け始めている。
カイル
「ただ……お前が手に負えないだけだ」
エル(オフパネル)
「手に負えないほど魅力的……ってこと?」
光る虚無の中、腕組みするカイルにエルが挑発的に微笑む。
エル
「認めなさい。私がいなくなったら……寂しがるでしょ?」
カイル
「そもそもお前が何なのか……わかってない」
表情を緩めるエル。内省的な輝きが瞳を包む。
エル
「私はあなたが避け続けた部分……かも」
「あるいは……ずっと必要だった部分」
頬に触れるエルの手。抵抗せずに見つめるカイル。
エル
「何であれ、私はここにいる。それで充分でしょう?」
(温かい……どうして?)
カイルの輪郭がちらつき始める。手の平が透けて見える。
カイル
「俺に……何が起きてる?」
エル
「全てを売り払ったの。自分を形作るものさえ……」
消えかける顔に浮かぶ諦念と焦燥。
カイル
「二度と……感じることは?」
独り残されたエルが虚空を見上げる。切ない微笑。
エル
「最初からできたはずよ……感じる方法を忘れてただけ」
闇に飲まれる虚無。エルのシルエットも徐々に溶解する。
ネオンの看板「真の感情を再発見!今すぐ購入!」が賑わう街路。
〈通行人A〉「本当に効くのか?」
〈通行人B〉「給料日になったらノスタルジー買おう」
〈通行人C〉「依存症が怖くて……」
路地から現れるエル。フードを深く被り直す。
(ふん……相変わらず)
懐から微光を放つ小瓶を取り出すエル。群衆は気づかず過ぎる。
エル
「悪くない出来ね……厄介者だったくせに」
小瓶の光を瞳に反射させるエル。満足と寂寥が入り交じる。
(再生か……消滅か……時が答える)
小瓶をポケットに仕舞うエル。街の喧騒に紛れていく。
〈通行人D〉「今の……手の光は?」
エル
「ただの記憶……理解できまい」
ネオンの看板が flicker する中、エルは人混みに吸い込まれる。
〈通行人E〉「やっぱり試そうかな」
〈通行人F〉「金出せよ」
ふとフードがずれたエル。頬を伝う涙が虹色に輝く。
エル
「今度こそ……忘れない」
街の光に飲まれていくエルの背中。看板の点滅がリズムを刻む。
"そして……輪廻はまた巡る"
読んでくださり、ありがとうございます! これは私の小説家になろう「ネット小説大賞」への初挑戦作ですので、何とかまともな作品に仕上がっていれば幸いです。それから、最後まで読んでくださった全ての方々に感謝します。こんな作品を完読してくれる方がいるなんて、本当に嬉しく思います。では、また次の機会に!