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新しい春?の行方

おい、嘘だよな?


なんでこうなったんだ。


というかこの流れ2回目だよな?


俺は柏木と一緒に高校デビューを成功させるために協力関係を結ぶこととなった。


そして俺は松浦先生に許可をとって特別に放課後の30分間だけ屋上を使わせてもらい、二人だけの反省会を行うことにした。


放課後の屋上は普段なら閉鎖されているため、在校生が訪れることは少ない。例え来たとしてもあの日柏木が屋上にいたように、まだこの学校のルールに慣れていない新入生だ。次期にそのような人間も減るはずだ。


これらの理由を踏まえて俺は反省会を行う場所を屋上に設定した。そしてあの日から俺たちは毎日欠かさずに屋上へ集まったのだが。


その結果、今に至る。


もともとぼっちだった俺はあれから一カ月が経過した現在もクラスでぼっちを継続中。


それに加えて、入学当初はクラス人気最上位だったあの柏木もなぜか今、俺と全く同じように一人机に突っ伏しているのだ。


あり得ん、あり得ない。俺たちは一体どこで選択を間違えたんだろうか。


今日も反省会を行うべく、机に頭を埋めている柏木に話しかけにいく。俺も柏木も現在はクラスで浮いている存在のため、二人で長話をしていると目立つ。なので要件だけを簡潔に柏木に伝える。


「おい、柏木。起きてるか?起きてるよな。今日も反省会をするが、今日は今後に関わる大事な話をしたい。分かったら何か反応をくれ」


柏木の様子からして大分やられているようだが、意思疎通を図ることはできるみたいだ。突っ伏したまま指でこちらにグーサインを送ってきた。


放課後の反省会に向けて今までの出来事を遡ってみよう。最初は順調だったんだ。そう、最初は。


まずは俺。なぜ俺が今現在もぼっち継続中かというと単純な能力と経験値の不足に起因する。


俺は柏木のアドバイスに従い、クラスの男子たちに積極的に話しかけにいった。それがまずかったのだ。


話しかけたはいいものの俺は無策だった。会話の受け応えはできる。でもいざ一つの会話が終わってしまったときに次に何の話題を振ればいいのかが分からずに気まずい雰囲気が流れるのである。中学三年間でろくなコミュニーケーションをしてこなかった弊害である。単純に会話をする能力が乏しかったのだ。


もちろん会話が尽きないやつもいた。会話が終わってもすぐに別の話題を向こうから振ってくれる。でもそんなやつの周りにはすでにたくさんの人間たちが群がっている。今更俺の入る余地はないのである。


そんなことを繰り返しているうちに俺はクラス内で煙たがれるようになった。話しかけてくるくせに、話の中身は大してない。おまけに変な空気にするのだから、煙たがられて当然だ。


そして俺は今でもひとりぼっちを継続中なのであった。



問題は柏木芽依だ。なぜクラス人気最上位だったあいつが俺と同じカースト最底辺に位置してるのかというと、あいつは焦りすぎたのだ。


柏木はクラスメイトたちに常に愛想を振りまいた。何か困っている奴がいたらすぐに助け、何か自分が手伝えることがあれば、すぐに柏木が動いた。そこまではまだよかった。


柏木は余計なおせっかいを焼くようになった。それからというもの柏木のクラス内の評価が少しずつ変わっていった。優しい、可愛いなどともてはやされていた柏木だったが、次第にそれはしつこい、ありがた迷惑、ぶりっ子などと罵られるようになってしまった。


それに加えて、あいつは入学してまだまもないというのに距離感をふまえない、個人のプライベートに深く踏み込んだような質問を多くするようになった。最初は順調に見えた柏木も結局は俺と同じ経験値不足だったのである。化けの皮が剥がれたのだ。


もちろん俺はそれらの行動を止めたし、反省会で俺は毎回そのことを注意した。だが柏木は言うことを聞かなかった。『私のアドバイスを活かせないようなぼっちの意見は要らない』などと抜かして俺の意見は全部無視。結局あの放課後の反省会は柏木の愚痴をただ吐き出す場所にしかならなかった。


という流れである。


さようなら、俺の華の高校生活。

さようなら、俺の横にいたであろう未来の友達&彼女。


そんなことを考えながらも俺はまだ諦めきれずにいた。だから今日も放課後の屋上に柏木を誘った。俺たちは岐路に立たされている。ここで諦めてしまったら本当に終わってしまう。



そして放課後。俺は屋上で柏木を待った。放課後は開放されていない屋上だが、昼休みにお弁当を食べるためにここに来る生徒は少なくはない。そのためにベンチも設置してある。そのベンチに腰掛けながら柏木にこれから話す内容のことを考えていると屋上の扉が開いた。


「よ、柏木」


「ん」


俺の挨拶に柏木は必要最低限の返事とともに手をあげて応えた。


「立ってないでこっち座れよ」


これまでは一定の距離を保って話してきたが、今日は少し人肌を感じたかったのかもしれない。そんな俺の誘いに柏木は素直にこくっと頷いた。こいつも俺と同じくひとりぼっちで寂しかったのだろうか。


柏木との距離が意外と近い。改めて間近で見ると、やはり柏木の容姿はすごく整っていることが再認識できた。まろやかな白髪、目鼻立ちがはっきりしている綺麗な顔、出るとこは出て締まるところは締まっている、そんな緩急のついた身体。外見のことだけ考えるなら、現在こいつが俺と同じ最下層のカーストに位置しているのが信じられないな。


あ、なんかいい匂いする。


「何?そんなにジロジロ見て」


「いや、少し見惚れてた」


「なにそれ、キモい。冗談でもイヤ」


キモいとか言うなよキモいとか。俺、若干クール系入ってるように見えるかもだけど豆腐メンタルなんだからね!そこらへん気をつけてよね!


「すまん。で、本題に入ろうと思うんだがいいか?」


「う、うん。この酷い現状についてでしょ」


「あぁ、俺たちはものの見事に高校デビューに失敗した。誰がどう見てもそう取れるだろうな」


「じゃあ、一体どうすればいいのよ。あのね、私たちはもう終わりなの。もうこんな反省会も意味はないわ」


「いや、まだ俺たちの高校生活はあと2年と11ヶ月残っているんだ。諦めるフェーズに入るのには早すぎないか?」


「そんなこと言ったってどうしようもないでしょ!私ここ最近、新田くんを除いたら誰とも喋ってないのよ?それにクラスのみんなには煙たがられてるし、もう泣きそう」


「そこでなんだが、クラス外に目を向けて見るのはどうだ?それこそ他学年にまで」


「でも私たちには経験が不足してるんでしょ?また同じようなことになるだけだわ」


そこだ、そこなんだよ柏木。俺たちには経験が不足している。ならこれならやることは一つだ。


「なら経験を積めばいい。それこそこの学校の全員と知り合いになるぐらいまで。たとえ最初で失敗しても、最後に俺たちと関わってくれた人たちが俺たちの一生の友達、恋人になってくれるかもしれない」


俺たちは間違っていた。高校デビューなんて端から成功するわけなかったんだ。だったらこれが正解のはずだ。


「でも、そんなの不可能よ。全校生徒となんて」


「俺に秘策がある。もう松浦先生にも許可は取ってある」


「許可ってなんの?」


「それはな、俺たちで部活を作る許可だ!」


俺は昨日の放課後、この考えを思いついて事前に松浦先生には許可をとっておいた。運良くあの先生がまだどこの部活の顧問でもないらしく、忙しい運動部を今後任されるよりは断然マシだと言って快く引き受けてくれた。


「ぶ、部活?部活って一体何の部活よ」



「その名も高校生活支援部、高援部だ!」


き、キマった、、、。俺カッコよすぎない?


「何それダサ。てかそれ私に拒否権あるの?」


「おい、そういうチクチク言葉はもうやめろよ?お前はこれから高援部の一員なんだからな。次言ったらぶん殴るからな?俺は性別で相手を判断しない」


「あんたのが汚い言葉使ってるじゃないの。ていうか何で勝手に部員の一員にされてるのよ!」


「もう決まったことだ。昨日俺がお前の代わりに入部届を出しておいた。晴れてお前は誇りある高援部の一員と言うわけだな。うんうん、よかったよかった」


どうやらこの高校は部員が二人以上いれば部として認められるらしい。部費はこの部の活動が高校に貢献していると示せたなら支給されるみたいだ。さすがは私立高校。こういうところが緩くて助かる。ここに入学して正解だった。


「ねえ、何もよくないんですけど。やっぱり強制参加なんじゃん!」


「うるさい。そういえば部室はここだそうだ。どうやらこの高校は俺たちみたいな小規模な部活がたくさん存在しているようでな。ついに空き教室がなくなったらしい」


「嘘でしょ、ありえない。雨の日どうすんのよ。雨の日は」


俺もありえないと思う。でも空きがないなら仕方がない。俺は我慢ができる男だ。


「安心しろ、雨の日は屋上の扉手前の踊り場にでも窓口を構えればいい」


「普通じゃないわ、この学校…」


というわけで俺たちの物語はもう少し続くことになった。


高援部バンザイ!

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