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終わりよければ全てよし。

次の日の放課後、俺たちは屋上に集まってこれからの作戦について考えていた。屋上の踊り場の横にある微品質にホワイトボードがあったのでそれを取り出して各々の案を俺が書き出していた。


「んー、やっぱり今まで通りじゃダメなんじゃないか?何か新しいことをしないと依頼は来ないだろうな」


「それじゃあ、インスタに高援部のアカウントを作るとか!この学校の生徒を片っ端からフォローしていけば認知はしてくれるんじゃない?」


「悪くない手だと思うが、期日のことを考えるとな。認知はしてもらえるだろうし、興味は持ってもらえるかもしれないが、すぐに効果が出ることはないだろ」


これから先のことを考えればやらない理由はないが、俺たちには先がない。今俺たちがすべきなのは廃部の危機を脱すること。つまり、即効性がある施策を考えならばいけない。こんなことになるのなら部活設立と同時にSNSを使って情報を発信していくべきだった。俺が甘く考えてしまっていた。


「じゃあどうするのよ、何か考えはあるの?」


「ここは泥臭くビラ配りとかどうだ?アナログな手法だが効果は見込めるかもしれない。ポスターとは違って受け取ってもらえればビラに目を通すはずだし」


「でも、ビラを貰ったとしても見ないで捨てちゃうこととかない?そもそも私はそういうのは受け取らないたちだし。微妙じゃない?」


「まぁ、やらないよりかはマシだろ。やれることは全部やろうって決めたんだ。今話したインスタのアカウント設立とビラ配り、それに加えてホワイトボードに書いてある案を片っ端から実行していこう。もう時間はないから今から取り掛かるぞ!」


「分かったわ、やるわよ!おー!」


柏木はベンチから立ち上がり右手を振り上げる。


「おう!廃部なんてごめんだからな」


そんなやり取りをしていると屋上の扉が開く音がした。


依頼、依頼なのか!?


俺の期待は虚しくもすぐに打ち砕かれた。扉を開けて姿を表したのは依頼人ではなく松浦先生だった。


「なんだ、やけに生が出ているな。うんうん、関心関心。私もお前らがやる気になってくれていて顧問として嬉しいよ」


先程までの会話が聞こえていたのか、やる気な俺たちの様子を見て松浦先生はご満悦のようだ。


「お疲れ様です、先生。さすがに俺たちもやる気になりますよ。昨日のプール掃除の依頼を終わらせることができなくて、活動実績を積むことができなかったですからね。高援部は廃部にはさせませんよ」


「そうね。高援部は終わらせないって昨日2人で決めたものね」


「あぁ」


俺と柏木が熱い握手を交わしていると松浦先生がキョトンとした顔で口を開いた。


「何を言っているんだ、お前たちは」


「へ?」

「へ?」


俺と柏木は手をお互い握ったまま松浦先生の発言に対して声を出した。


「いや、だから、お前たちは何の話をしているんだと聞いている。やれ廃部やら、高援部は終わらせないだの」


この人こそ何を言っているんだ?まさか顧問のくせしてこの部の現状を把握していないのか?まぁ、今まで松浦先生は部室に顔を出すことは少なかったし、手助けしてくれたことはあっても、依頼をこなすために直接何かしてくれたことはなかった。どちらかと言えば俺たちを放任していたとは思うが。


「先生ご存知ないんですか?この学校では部活設立後、一定の期間内に活動実績を残さなければ廃部になるってルール」


横の柏木もうんうんと頷きながら先生の方を見る。


「知っているに決まってるだろう。私はこの学校に勤めて5年目だ。今さら知らないことなどない」


そのルールを知っているなら俺たちの話が理解できないというのは尚更おかしな話だ。先生は一体どうしてしまったんだろうか。


「だったら俺たちの話してる内容は理解できるはずです。活動実績を残せてない高援部は廃部の危機なんですよね?」


「そこだよ、新田。私はそこが引っかかっている。いつ私が高援部が廃部になると言った?」


「へ?」

「へ?」


俺たちは再び同時に声を上げた。


「だから私は高援部が廃部になるなんて一言も言ってない。というかいつまでお前らは手を握りあってるんだ」


「あ、すまん」

「う、うん。こっちこそごめん」


「じゃ、じゃあ、高援部は廃部にはならないんですか?」


「あぁ、そうだ。もしここが廃部になりそうなら私がお前たちにそのことを伝えて発破をかけているからな」


「でも、私たち実績という実績なんて…」


「何を言っているんだ、お前たちは依頼をすでに二つもこなしているじゃないか。天木の依頼を達成した時点でこの部の実績は保証されている。よくよく考えてもみろ。この学校は屋上を部室化するしかないぐらい部活が沢山あるんだぞ?部の活動が認められるハードルが高かったならこんな状況になってない」


「つまり私たちはこれからも部活を続けられるってこと?」


「そうだ」


「っくぅ…!よっしゃあ!やったぞ、柏木!俺たち高援部続けられるぞ!」


「あ、新田〜!」


柏木が泣きながら俺に抱きついてくる。

柏木さん?その大きいたわわなのが当たってるから!

距離感もうちょっと大事にしようね?


「ふっ、全くお前たちは。今日はたまには顔を出して二人と話でもしようと思ったんだがな。どうやらお邪魔なようだから今日のところはもう帰るとするかね」


「先生ー!また遊び来てくださいねー!」


俺がそう声をかけると松浦先生はこちらを振り返ることはなく、手を挙げて返事をした。


「つか、お前はもう離れろ!いつまでくっついてんだ!」


「だってぇ!だってぇ!嬉しいんだも〜ん!」


「うわ、汚ねぇ!鼻水人の制服につけんなよ!」


「汚いとかひどい、新田ひどい!」



何はともあれ廃部の危機は脱したらしい。もっと先生が早く伝えてくれていたらここ1週間の心労はなかったのだが。


その後、俺は腰にまとわりついた柏木を引っ剥がして屋上を去った。今日ホワイトボードに書き記したアイデアはとりあえず明日から実行することにしよう。


「まぁ色々あったけど、終わりよければ全てよし、だな!」



こうして俺の高校デビューへの道はまだ続いていくのであった。

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