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就眠ノ天稟探シ 前編

あの日、やっと千暁に会えて、本当にほっとした。

最初の方にオレと姉ちゃんのドッペルゲンガー……いや、AIペアに追われて、しっぽを取られて。

千暁、すげぇよ。最後まで生き残ってたんだろ?

オレも姉ちゃんも、あの「るいるい」って子も、三人纏めて捕まっちまったんだよ。


他にも生き残ってた奴居たな。後で紹介して貰った。

この前別のイベントに巻き込まれてたな、あの天使の女の子、死んじゃったんだったか。

そばにいた男の奴も凄い気の落とし方してたよな。

可哀想では済まないと思う。


あと、カンナって子とまりもって奴。

まりもって人は、正直得体の知れねー人間だと思う。

何考えてんのかほんとーにわかんねぇ。カンナちゃんの事、好きなのか?

喋ってたらとんでもない目で見られた、怖ぇよ。


でも、カンナちゃんはカッコいいと思う。

ちょっと押しに弱くて、でも流されないだけの強さを持ってる。


なぁ千暁、オレ、ずっとお前に謝りたいんだ。

オレがあの時、天蓋花学園の話をしなかったら、もしかしたらお前は巻き込まれてなかったかもしれないのに。

もしあの時、姉ちゃんにURLを強請らなければ、きっとお前は、こんな地獄に陥ってなかったのに。

もし、……………もし。


もし、オレとお前が出会ってなかったらーーーーー。



ーーー結局、オレはずっと、ずっと中途半端な人間だ。


ごめんな、千暁、オレのせいだ。

いや、今はかがりか。ーーー本当に、悪かった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


わたしのお隣に、ずうんってしてる雪兎さん。

その目の前にこれまたずうんってしてる、朝陽さんって呼ばれてた人。

わたしの後ろに、れむさんや柳原、まりもさん。

わたしの反対側のお隣に、若干船を漕いでるノートリアスさん。


………なぁに、これ。すごくカオス。


「……あの、どうしてわたしが此処なの?」

後ろの三人に声をかける。


三人はいつの間に仲良くなったのやら、揃って親指を立てた。

わたしは心の中で、親指を下に立てた。

我ながらいい性格に育ったと思う。


「朝陽さんは、どうしてわたしのところに来たんですか?」

「…イベントクリア者で一番とっつきやすそうだったから」

「……あぁ、……」

「オレ、こういうの、苦手で。わかんないんだよ、貰ったヒントが。」

「ヒント?さっき貰ってた紙ですか?」

「おう……、」


ひらり、と差し出された紙をみんなで覗き込む。


はな ひとつ


かいは くだって おとみっつ


そと ひとり


かぎはかくして こいのぼり


ほね ひとくみ


なかにひときれ たからじま


ななまでかぞえて しにましょう  。



「最後のだけは、本人に言われてわかってるんだ。七日で見つけられなければ、夜月はゲームオーバー、だってさ」

「七日しか猶予がないのか……」

アンニュイモードから脱出したらしい雪兎さんが、ふむ、と何やら考え事を始めた。


遠くで、誰かと誰かの怒鳴り声が聞こえた。


「そうやってお前はいつもいつもーーー!!」

「そうじゃない、オレはただ、本当にお前に申し訳がなくて!!」


聞き覚えがある気がして向こうを見ると、喧嘩の主は ツナくんとかがりくんで。

近くでは、まりりんさんと、華奢な体つきの子が、おろおろと喧嘩の行先を見守っていた。


「あっち大丈夫かなぁ」

ぼそ、と呟くと、興味なさげにまりもさんが

「大丈夫なんじゃない?」

と言う。


向こうを気にするよりも、今はイベントを優先しなければ、と思い至ったわたしは、再度紙に視線を落とす。


くらり、目眩がした。


「はなひとつ……どうして平仮名なのかな、」

「漢字にするとこう、だろうか」

雪兎さんが、紙にペンでさらさらと書き込みを始める。


花一つ


回は下って 音三つ


外一人


鍵は隠して 鯉のぼり


骨一組


中に一切れ 宝島


「でも、この場合だと……、何を下るのかな。下るのって、大体階段だよね、」

「! そう言うことか!」


花一つ


階は下って 音三つ


外一人


鍵は隠して 鯉のぼり


骨一組


中に一切れ 宝島


雪兎さんがそう書き直すと、再度考え込んだ。


「花は……なんなんだろうか、骨もわからない。」

「どう解釈すればいいんだろうね、」


その時。


「詰まってるのかしら」

ふわり、と雪兎さんの背後に現れ、彼の肩に自分の手を添える、フード付きマントの女性。

「!? デュアル!!」

驚いた雪兎さんが、バッ、と後ずさる。

そう、このクイズの作成者であるデュアルさんだった。


「あらあら、漢字正解されちゃったわ。」

悔しそうにもせずにくすくす笑う彼女に、朝陽さんは問うた。


「……花と骨はなんなんだよ」

「骨はそのままの意味だわ。花はそうねぇ、解毒剤よ。」


驚愕するわたし達に、彼女は説明する。


「夜月くんが飲んだ睡眠薬は、七日以内に解毒剤飲まないと、一生を眠って過ごしてしまう、と言うものよ。アタシも止めたんだけれど、それが良いって言って聞かなくてねぇ」

「夜月、アイツ……、」

「あ、忘れてた。あなた達がのんびりそれ考えてる間に、もう四日経ってるわよ」

「え」


「答えに少しずつ近づく度に、時間をカットしてるのよ。最終的に、解き終わったら残り一日になるわ」

「そ、そんなのアンフェアだよ!」

れむさんがそう言うも、デュアルさんは妖艶な微笑みを浮かべるだけ。


「だって、此処で行われているのはデスゲーム、ですもの。良かったわね、失敗しても犠牲が一人で。」


ひゅっ、と誰かの、息を呑む音がした。

お久しぶりです、スランプ脱却しました。


かがりくんの本名は 千暁 綴 (ちあき つづる)です。

他の子達の詳細も、またいずれ番外編として掲載する予定です。

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