第一話「小さな戦士 コビットルーパー」(1)
『縮小大戦コビットルーパー』を読むときは、適度な小休憩を挟んで、読んでくれ!
21××年。
世界では「コビットルーパー」という小型対戦ロボットが老若男女関係なく流行っていた。
コビットルーパーは見た目はフィギュアやプラモデルに似ているが、専用の操縦ゴーグルを使って自由自在に動き回らせ、戦わせることができる"小さな戦士"なのだ。
ちなみに名前がやや長いので、「コビット」と呼ばれることがほとんどである。
人気は凄まじく、大きな大会も開催されるほどであった。
そして、今日も人々は自分のコビットルーパーを操り、競い合う。
それはまさに、蘇った"戦乱の世"である。
物語は、とある少年コビットマスター二人の「戦い」から始まる。
コビットを操縦する者たちを「コビットマスター」と呼ぶ。
コビット同士の戦いは「シュリング」と呼ばれ、専用のバリアフィールドシステムを使って公園や学校の校庭などを"戦場"にすることができる。
バリアフィールドは直径5メートルまでの範囲で展開することができ、その中では自由に「シュリング」をさせることができる。
バリアによって他者に攻撃が飛んだりする恐れがないのだ。
そしてもう一つコビットに重要なことがある。
それは操縦方法だ。
こういうのは普通はリモコンなどで操作するところであるが、コビットは未来の玩具である。
操縦方法はなんと、操縦用のゴーグルを使って意識をコビットの中に一時的に移すことができるのである。
意識をコビットに移すことで自分の体のようにコビットを動かすことが可能で、喋ることもできる。
ただし痛覚などは移されてないため、仮に破損したとしても安全である。
また、移している間のコビットマスター本人は気を失った状態になるが、コビットの操縦を終えることで瞬時に元の身体に意識を移されるので安心だ。
つまりコビットマスターは、まるでロボットのパイロットにでもなったような気分を味わえるのだ。
そして、今まさに少年たちの「シュリング」が終わろうとしているところである。
「今だ!」
その掛け声と共に公園の遊具の物陰から赤いコビットが現れて、無防備になっている青いコビットに飛びかかった。
武器の大剣を使って青いコビットに斬りかかり、斬られた青いコビットは「うわー!」という声を上げながら倒れる。
地面に倒れたと同時に、青いコビットの背中にあるランドセルのような機械が赤いランプを光らせた。
コビットが赤いランプを光らせたら、それは敗北の証。
つまりこの「シュリング」は赤いコビットの勝利である。
「シュリング」の勝敗が決まった途端、バリアフィールドの外にいた数人ほどの見物人たちが歓声を上げた。
専用の対戦席に座っていた青いコビットのコビットマスターは敗北した瞬間に意識が瞬時に肉体に戻っていたため、一足先に意識を取り戻していた。
操縦ゴーグルを外して「ふぅ・・・。」とため息を吐いた。
少し遅れて赤いコビットのコビットマスターである少年も意識を肉体に取り戻して操縦ゴーグルを外した。
この少年こそが、この物語の主人公となる "五十嵐トウマ" である。
「シュリング」を終えた二人は町中を歩いていた。
「これで2勝27敗5引き分けかー・・・。」
メガネをかけた大人しそうな少年が空を眺めながら呟く。
彼はトウマの親友である "一ノ瀬シロウ" 。
二人は仲良しで、よく一緒に遊んでいた。
主にコビットルーパーで。
「よく覚えているな。」
「そりゃ、いつかあと26勝して逆転しようとしてるからね。」
二人は話しながらよく通っている「ホビーショップ・デンドー」に入って行った。
このホビーショップにはフィギュアなどの普通の商品などもあるが、主に注目されているのがコビットのパーツや武器などである。
ホビーショップに入った二人は、そこで奇妙な光景を見る。
「このコビットを知らないか?」
謎の男が「ホビーショップ・デンドー」の店主に写真を見せながら聞いていた。
店主は二、三回髭をイジると「見たことないな。」と答えた。
店主の返答を聞いた謎の男は「そうか。」と一言述べると、そのままホビーショップを出て行った。
男がいなくなったのを確認すると、トウマたちは店主に近付く。
「こんちは、おっちゃん!」
「おお、トウマたちか。」
店主は元気よくトウマたちを迎えてくれた。
「さっきのは誰ですか?」
シロウが店主に先程の男のことを聞く。
すると店主は腕を組んで「んー・・・。」という声を出しながら首を傾げる。
「よく分からないんだ。 突然やってきて『白いコビット』の写真を見せつけながら俺に知っているか聞いてきたんだ。」
店主は一部始終を話す。
それを聞いたトウマは興味津々に聞く。
「その『白いコビット』って、どんなのだったの?」
トウマは若干ワクワクしていた。
トウマは他の子供たちと同様に昔からコビットが大好きなのだ。
「えっと、なんか天使のような姿だったな。」
店主は一生懸命に姿を思い出しながら説明した。
「天使型のコビット?」
「天使っぽいコビットなら何体かなかったっけ?」
コビットには複数種類がある。
トウマたちのコビットも、元々あるコビットを改造したモノである。
「いや、あのタイプのコビットは今まで見たことがないな。」
店主は答えた。
ホビーショップを経営している店主も結構コビットに詳しいため、その店主が知らないのであるから相当なことである。
「つまり・・・、レアコビットってことか!?」
トウマは呑気にワクワクしている。
それを見てシロウはため息を吐いた。
気を取り直してホビーショップでパーツなどを見ようとするトウマたちだったが、そこへまた一人来客が現れた。
「あっ、やっぱりここにいた!」
トウマたちが声のした方を向くと、そこには一人の少女がいた。
走って来たようで、息を切らしていた。
「なんだナナか。」
「一体どうしたの?」
彼女はトウマたちの友人である "二階堂ナナ" である。
「また"ジョーカー"が悪さをしてるのよ。 二人共、力を貸して!」
ナナは慌てた様子でトウマたちに話す。
それを聞いたトウマとシロウは腰に手を当ててため息を吐く。
「"ジョーカー"って、トウマたちの学校の悪ガキだったか?」
店主が聞く。
「うん、本名は "城ヶ崎カンキチ"。 よく気弱な生徒をいじめるんだ。」
シロウは手短に店主に説明した。
「そして、いつも俺たちが懲らしめるんだ。」
続くようにトウマは言った。
顔つきも先程とは違い、やる気満々な感じであった。
ナナに案内されてジョーカーのもとへ急ぐトウマとシロウ。
その途中、一人の男の子に会った。
ナナはその男の子に近付くと、トウマたちに説明をし始めた。
「この子が大切にしてたプロ野球のカードをジョーカーが奪ったのよ。」
「そりゃ、大変だ。」
トウマは男の子を見た。
男の子は今にも泣きそうになっており、目からは少しずつ涙を流していた。
するとトウマは男の子の前に立つと、自分を指しながら言い放つ。
「ジョーカーは俺たちが懲らしめるから、安心してくれ!」
トウマは元気よく言う。
それに続くようにシロウとナナも頷いた。
三人の頼もしさを感じる姿を見た男の子は、目から流れ出ていた涙を手で拭き取って精一杯の笑顔を見せた。
そして三人はジョーカーを懲らしめるために、再び「ヤツ」のもとへ向かうのだった。
ジョーカーは普段、最寄り駅の近くにあるゲームセンターの裏にある小さな廃墟の公園を溜まり場にしている。
二つだけある遊具はどちらも錆び付いており、地面は雑草だらけで、木でできたベンチはボロボロだった。
当然こんな場所に普通の人は寄り付こうとはしないため、ジョーカーは子分たちと溜まり場として使っていた。
そんな場所にトウマたちは訪れていた。
トウマとナナは胸を張って前に出るが、シロウはややビビり気味だった。
「ゲッ、トウマ・・・!」
遊具の上に座っていたジョーカーはトウマたちを見てビビっていた。
流石のガキ大将も格上には弱いのだ。
「ジョーカー、さっさと盗んだカードを返しやがれ。 そうすれば黒星をわざわざ増やさずに済むぞ。」
トウマは強気でジョーカーに言う。
するとジョーカーは遊具から飛び降りて、地面に着地する。
そして額に汗を流しながらトウマを睨む。
「う、うるせえ! 今日こそ俺はお前に勝つぜ!」
ジョーカーはそう言うと、ポケットの中から自身のコビットを取り出した。
続いてジョーカーの左右に近付いてきた二人の子分も同様に自身のコビットを取り出した。
「まあ、こうなるとは予想してたぜ。」
そう言いながらトウマたちもコビットを取り出した。
そう、3対3の「シュリング」が今始まろうとしていた・・・!




