6-1 White Knight ー 騒 ー ①
六月上旬、神宮寺高校体育祭当。
天気は快晴。各クラスで朝の学活が終わると、全校生徒はグラウンドに集合して開会式が行われた。短い式が終わり、係生徒や各競技に出る生徒が一斉に移動を始めると一気に校内はざわついた様相を見せ始めた。
開会式の後、蓮と凜、仲西、美月の四人はせわしなく行き交う生徒を横目にのんびりと体育祭を過ごしていた。体育館でバレーやバスケのトーナメントを見たり、競技の合間に行われる演技発表などを見学していった。次々と競技は消化されほぼ滞りなくプログラムは進行し、あっという間に午前の部が終了する。昼休みには那珂島が四人に合流して中庭のテープルで昼食をとった。
「もう実行委員なんて絶対にやらん」那珂島はげんなりとしていた。
那珂島は今回放送担当になってしまったらしく、午前中は本部テントで休むことなく各競技の出場生徒の確認や訂正に追われていたらしい。
一方の仲西は美月と一緒に体育祭をエンジョイできてすこぶる機嫌が良かった。二年になってからバイトやランバトで忙しく、こんなふうに美月とゆっくり過ごせる時間が全くなかった。それに加えて五月に入院騒ぎもあったばかりだ。美月は美月でいろいろと忙しくて、二人はお互いに時間を合わせることができないでいた。
仲西の機嫌がいい理由はもう一つあった。美月の服装である。小学校の途中から学校に行けなかった美月の体育着姿をこんな間近で見る機会は、仲西にとって初めてである。おかげで朝から心拍数は無駄に上がりっぱなしであった。
「いや、マジでつまんねえ」一方の那珂島は何度目かのため息をついた。
「まあ、午後には俺の代表リレーがあるから本部の特等席で応援してくれよ」仲西はそんな那珂島に向かってニコニコとうれしそうに言った。
仲西の、ここで美月にカッコイイところを見せて距離を縮めようという魂胆が丸見えである。そんな仲西を那珂島は恨めしそうな目でじろりと見た。その時、
「仲西は朝から美月ちゃんといるからスタミナが心配ね」と凜がつぶやく。
途端に仲西は真顔になる。隣にいた美月が心配そうに仲西を見つめた。
「仲西先輩、私と一緒で疲れてるんですか?」美月がおそるおそる聞いた。
「いや全然、もうやばいぐらい元気だよ」仲西はすぐに笑顔になるとアホみたいに片腕で力こぶを作ってみせた。
「元気なのは別のとこでしょ」凜がまた口をはさむ。
仲西は再度真顔になった。
実は朝から仲西は美月の体育着を見ると、ちょっと油断しただけで体の一部に血液が集中してしまっていた。なんとか理性を保とうとするのだが、残念ながら理性で抑えられないオスの本能もあるのだ。
そのため仲西は、午前中のそのほとんどの時間を股間に気を付けながら過ごさねばならなかった。一度そういった生理現象が起こるとどうしても動作が不自然になってしまうことがあり、その度に美月にばれていないかとヒヤヒヤしていた。しかしそんな努力も虚しく、蓮や凜にはとっくにばれていたのであった。
「ちゃんと体が反応するってことは健全な男子って証拠でしょ」蓮が苦笑いしながら微妙にフォローした。
「美月ちゃんの体見て変なことばっかり考えてるからよ」その横で凜が呆れて言うと美月の顔がさらに赤くなった。
「まあ、ありがとうとしか言えん」仲西はぶすっとした顔で本音を漏らした。
「お前ちょっとは遠慮しろ」那珂島はその日初めて笑った。




