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RR ー Double R ー  作者: 文月理世
RR ー Double R ー ZWEI
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5-1 Crowd Control ー 謀 ー ①


「この感じだと、とりあえずはおとなしくなったかな」

 仲西は独り言のようにつぶやいた。この日は久しぶりにみんなでグリルガーデンに集まっていた。近ごろ凜や美月はいろいろと用事があって、放課後そろって集まることができなかったのだ。


 仲西のカエシの後しばらく様子を伺っていたが、田辺たちが再び仕掛けてくる気配は今のところなさそうであった。

 仲西が大島から聞いた話によると、ステッカーの販売は完全になくなったわけではないが、その動きはどういうわけかだいぶ落ち着いているようであった。

 とはいえ大きなトラブルが聞こえてこないだけで、依然として組織の動きはあるはずであった。しかし、その陰はすっかり身を潜め日常が不気味なほど穏やかに過ぎていた。


 そんな中、相変わらず蓮と凜は美月を迎えに行くのが日課になっていた。

「もうそろそろ俺が迎えに行ってもいいんじゃないのか」と仲西は改めて言うと、

「あなたは美月ちゃんとくっつく前に、あばらくっつけなさい」と凜が返すと隣にいた美月の顔が赤くなった。

 肋骨はほぼくっついていたが、仲西はあえて何も言い返さなかった。痛みは引いてはいるとはいえ体調が完全に元に戻ったわけではない。しかも田辺たちとタイマンした時に無理して動いたおかげで治りが遅れていた。

 仲西はゆっくりとアイスコーヒーに手を伸ばし一口飲みながら、もうしばらく蓮と凜に美月のことを任せようと思った。




 五月も後半になると、体育祭に向けての動きが多くなってくる。

 神宮寺高校の体育祭は様々な事情から、学年を縦割りにした三チームをつくり競う形式をとっていた。生徒数が多い状況などもあり、全校生徒が必ず競技に参加しなければならないわけではない。競技に参加したくない、またはできない生徒は集計係や用具係召集係、準備や片づけだけすればよいことになっていた。

 蓮と凜は早々に準備係に手を上げ競技に参加せずのんびりすることにしていた。本人は全く気付いていないが、クラスの男子全員が、凜が体育着で何かの競技に参加する姿を見たいと思っていた。しかしそんな思春期男子の青い願いも空しく叶わなかった。

 美月も二人の真似をして準備係になり競技には参加しないことにしていた。そんな美月のクラスでは林田が体育祭の実行委員になった。担任が実行委員の立候補を担任が募ったとき林田が真っ先に手を上げたらしい。

 他の男子生徒は、林田とはあまりかかわりあいたくないようで誰も立候補しなかった。林田が実行委員になってまで頑張りたいという熱意がどこからくるのか理解できなかったが、おそらくただ目立ちたいだけなのだろう。

 林田と茂木も教室ではあからさまに美月を避けるようになっていた。裏ではどうなのかわからないが、表立っての素行の悪さは今のところ落ち着いているようであった。


 那珂島はクラスで体育祭実行委員をやらされるはめになっていた。

 女子の実行委員がかなりきつい性格で、最初に実行委員に決定した男子生徒がそれに嫌気をさして途中で辞退してしまったのだ。その後実行委員に誰も手を上げる者はおらず、結果としてクジ引きとなってしまい、それを那珂島が見事に引き当てたのであった。

 那珂島自身は体育祭に全く興味はなく、実行委員なんて言うのは無駄に目立ちたいやつがやればいいと思っていた。当たりクジを引いてしまったときは不快感しかなかったが、そこで変にごねることをせず実行委員を引き受けるのは、那珂島の実直さがなせる業であった。

 

 そして仲西である。

 カエシをして気分が良くなったのか驚異的な回復力で怪我も治り、肋骨の痛みはすっかり取れていた。そんな仲西は早い段階から体育祭の競技に参加してほしいと、実行委員の何人かに声をかけられていた。仲西の運動能力は高く学年でもトップクラスであり、昨年は短距離の競技に出てさらりと一位を取っていた。

 しかし仲西はそのオファーを面倒くさいからと言って断っていた。言いはしなかったが、先日負ってしまった怪我がまだ十分完治していないという理由もあった。しかし、その真意は別のところにあった。

 その煩悩にまみれた頭の中にあるのは、体育祭を美月と一緒に見て回るという欲望である。仲西にとって重要なことは、体育祭の競技より美月とイチャイチャすることなのだ。

 そんな仲西であったが、縦割りのチーム対抗リレーの選手に教員から声をかけられた。仲西は小さいころから短距離走の速さはずば抜けていた。陸上に興味を示さなかったのは、単純に金にならないからという理由である。実際四月に行われた体力測定でも、昨年同様かなりいい結果を出していた。

 チーム対抗リレーは体育祭で全校生徒が最も盛り上がる競技である。各チームの各学年四人ずつ、計一二名の代表が、それぞれ二百メートルをリレーで走り競うものだ。男女別で行われ、タイムの早い生徒に競技の担当教員から打診がされるのだ。

 仲西はその話を聞いた瞬間に、〈めんどくせぇ〉と思った。しかし担当教員の、

「ここで目立って、周りにカッコいい所見せてもいいんじゃないか」の一言ですぐに美月の顔が思い浮かんだ。

〈カッコいいところねえ〉煩悩が頭をもたげる。

 仲西はチーム代表リレーのメンバーを引き受けることにした。








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