4-2 Retribution ー 讐 ー ②
今回仲西を襲撃した連中は、どうやらその組織に所属するグループの一つのようであった。
美月と一緒のクラスにいる林田や茂木は、その中のあるグループのメンバーだ。仲西の襲撃には当然二、三年も混じっているだろうとのことである。仲西は筋斗雲シールの裏を見ながら、わかっているメンバーの名前を読み上げた。
「こいつら潰さないと、また俺たちにちょっかいだしてくるかもな」仲西は言う。
「林田のグループの頭って誰?」蓮が聞く。
「田辺って奴らしい。ちょっと前に美月ちゃんにちょっかいだしてきたとき、一年の二人と一緒に俺がぶっ飛ばした」仲西が答える。
「それってもしかして大島情報?」那珂島が聞く。
「そう。あいついろんなとこに結構顔が聞くからさ」仲西が返した。
「オーシマって誰?」蓮が仲西に尋ねた。
「俺たちの同中の奴だよ。前話さなかったっけ。去年蓮が体育祭の時に何人か吹っ飛ばしたのを俺たちに教えてくれたやつ」
「え?」蓮はしばらく記憶の糸を辿り、去年の体育祭でのちょっとしたトラブルを思い出した。大島は蓮の暴れっぷりをがっつりと目撃した人物である。そう言われて不意に当時の記憶を思い出した。
体育祭の一件の後、蓮は仲西と那珂島にランバトに誘われたが、それを断った。そしてちょうどその頃、凜が転入してきた。それから美月との出会い。ランバトの復帰。
「もう一年前か」
仲西が感慨深げにつぶやくと、その場に妙にノスタルジックな雰囲気が漂った。
「とりあえず今の状況じゃ俺は動かない。まあ動けないってのもあるけどな。美月ちゃんに何もないようにだけ注意しとくわ」仲西がつぶやく。
「私は谷松に会いに行ってみる」少しの間をおいて不意に蓮が言った。
「え?なんで?」仲西がびっくりした顔になる。
「四月の件も聞きたいことあるし、それに今の組織って、たぶん谷松って人の考えていたことじゃないような気がする。瀬戸って人は知らないし、いきなり会いに行ってもたぶん揉めるだけだから、一回谷松に会って話してみる」
「谷松が考えたことじゃないって、なんでそう思うの?」仲西が聞く。
「うーん。なんていうか、勘。最初会った時の感じかな」蓮が曖昧に答えた。
「感じがするだけなら、変に近づかないほうがいい気がするけど」仲西は反対した。
「でもこのままじゃ何も変わらないでしょ」
「まあね。今のところ動きようがない」仲西はつぶやく。その時、
「蓮が行くなら、俺も一緒に行くよ」那珂島が言った。
「別に一人で大丈夫よ。ケンカしに行くわけじゃないし」
「まあそうだけど。どうしても行くなら、念のため何人かで行ったほうがいい」仲西もその意見には同意した。
「変に警戒されないかな?」蓮が心配する。
「そもそも谷松に会いに行くこと自体警戒されるだろ。それにあいつの教室なら俺は知ってる」那珂島の言葉に、蓮も仲西も何のことかよくわからないという顔をした。
「あいつはSAで俺と同じ校舎だ」那珂島が言った。
「マジか」仲西が少し驚いた顔になる。
〈Special Advance Course 〉 通称SAコース。
大学受験のための特別進学科だ。そのコースに在籍するほぼ全員の生徒が難関大学に進学し、この学校の進学実績を上げている。
「なんでSAのやつが不良やってんだろうな」那珂島がつぶやく。
「お前だってランバトやってんじゃねえか」仲西が那珂島に向けて言った。
「俺は不良じゃない。ランバトはケンカじゃない。髪もずっと黒い」那珂島が反論した。
「髪が黒いからヤンキーじゃないっていつの時代だよ」仲西が鼻で笑う。
「お前こないだまで金髪だったくせに偉そうに言うな」那珂島も鼻で笑う。
「二人が不良じゃないのはわかってるから。とりあえずもう今日はもう終わりにしない」と蓮が仲裁に入ると、二人は、まあ、俺たちはヤンキーじゃないよな、とお互いにどうでもいいことを確認していた。
いずれにしても、また何かわかったら、みんなで情報を回そうという話になり解散する方向となる。その時、
「仲西にお願いがあるんだけど」ずっと黙っていた凜が真剣な眼で仲西を見つめた。
「え、俺?」仲西は虚を突かれた顔になる。だいぶ慣れたとはいえ凜に見つめられると変に緊張するものだ。そんな仲西の様子など全く意に介せず凜は言った。
「筋斗雲シールちょうだい」




