3-3 Assaulting ー 襲 ー ③
仲西の入院中、美月は毎日病院へ足を運んだ。
今回仲西が大勢に襲われた元々の原因が自分であることは誰よりもわかっていた。しかし、仲西は決してそのことで美月を責めたりしない。逆に学校での生活を心配されている自分が情けなくて、ひたすら申し訳なかった。
三日で仲西は退院することができた。とはいっても体の痛みはまだ残っており、肋骨のヒビの完治にはまだ時間がかかる。しばらくはランバトの練習もできずにおとなしく生活するしかなかった。
仲西は退院した次の日から無駄にはりきって登校し、昼休みにはいつものように美月に会いに学食に行った。
「もう退院したから。今日から美月ちゃんの出迎えは俺が行くよ」と、仲西はまだ完全にあざが消えてない顔に満面の笑みを浮かべながらさわやかに宣言すると、
「美月ちゃんをバイクの後ろに乗せておっぱいの感触を楽しみたいのはわかるけど、その顔で迎えに来られたら周りが引くでしょ。もう少し蓮に任せたほうがいいんじゃない」と凜が言うと、美月は顔を赤くして下を向いた。
どうしてこうもこの女は人の下心を見抜くのだろう、と仲西は思いながらもそれを了承した。
確かについこの間、あんな物騒なことがあったばかりだ。もしかしたらまた仲西を狙ってくる可能性もある。自分のせいで美月が危険に晒されるのだけはできるだけ避けたい。
それに合わせて仲西には確かめたいことがあった。入院中ひたすら暇だったので、学校の知り合いに連絡して、林田や茂木が関わっているグループについていろいろ情報を集めてもらっていたのだ。
茂木や林田の周辺を調べてわかってきたのが、図書館の前で美月を待ち伏せした男子生徒の特長から、その男は三年の田辺という生徒ではないかということであった。それを聞いて仲西は、自分を襲った連中は一年だけではないという疑問が確信になった。
動きが制限される雨合羽と視界の悪い狭い路地での戦いとはいえ、仲西は自分がそう簡単に下級生にのされるとは思えなかった。激しい風雨と薄暗がりの中で、相手の顔はよくわからなかったが、乱戦の中で明らかに体格やパワーに上級生の圧を感じていたのだ。
そこまでわかると、仲西の頭に真っ先に思い浮かんだのは、谷松の名前であった。
仲西が谷松の名前を初めて知ったのは数ヶ月前、一年の三学期だった。何やらこの学校で楽しく生活したいのであれば、自分のところに挨拶に来て面通しをしろ、という伝達が少しやんちゃな生徒たちの間で回っており、それが仲西の耳にも届いたのである。
どうやら新三年になる一部の連中が、ちょっとした組織を作ろうと目論んでいるらしいとのことであり、そのトップとして聞いた名前が谷松であった。
その時の仲西としては、自分は学校で変にオラオラしたいとも思ってないし、挨拶にも行く必要はないと考えていた。もし仮に谷松が自分に何か言ってきたら、自分はそういったグループに興味がないことをはっきり言おうと思っていたのだ。
しかしその後、三年グループからは何の連絡もなく、仲西自身その存在をすっかり忘れていた。
そんな中、つい先月の四月早々のことだ。自分ではなく蓮が谷松に呼び出されたことを知らされた。そして一緒にその待ち合わせ場所に行ったのである。
しかし蓮と那珂島と共に指定された場所へ行くと、そこに倒れた谷松がいたのだ。それを最後に谷松からは何の音沙汰もなくなっていた。
仲西を襲ったのは、美月に絡んできた品が無い連中である。林田や茂木が、最初に美月を狙ったきっかけは、話の内容からほぼ金銭目的だ。
いつに時代にも無駄に力のあるモラルの無い人間が恐喝やカツアゲをするものだ、と仲西は思っている。しかし、自分の腕力は相手を痛めつけたり苦しめたりして、自分の楽しみを満たすためのものでは決してないという自負があった。
今回の件で仲西は美月を守るために力を使っただけだ。それは自分で間違ったことをしたとは思っていない。世の中には言葉が通じない連中がいることを、仲西はこれまでの短い人生であるがしっかりと学んでいた。
今回仲西を襲ったのは、間違いなくこの学校の不良のグループである。そう考えると、何かしら学校の組織も関係しているのではないかと仲西は考えた。もし組織ぐるみでそういったことが行なわれているとしたら、そのトップにいるのは間違いなく谷松だ。
たとえ相手が三年であれ、不条理に売られた喧嘩を黙って見過ごせるほど仲西は大人ではなかった。そして、何よりも美月をターゲットにしたことが絶対に許せなかった。
仲西は表向きは何事もなかったかのように明るく振舞ってはいたが、その肚の中は恐ろしいほど煮えくり返っていたのである。




