2-8 Unnerving Presence ー 災 ー ⑧
美月が自分の不注意で他の生徒にぶつかって、相手のシャツを汚してしまった件や、その弁済でお金を渡してしまったことは自分の口からみんなに話した。
相談した結果、事の内容が何か悪質なので、しばらくは仲西を中心に美月の様子を見守ろうという流れになった。
美月が質の悪い連中に目をつけられてしまったのは嫌なことであるが、きっかけがどうあれ美月と一緒に帰ることができるのは仲西にとってうれしいことではある。
「ピンチはチャンスよ」凜は仲西に真顔で言った。
何故だか凜には自分の気持ちを全てを見透かされているようで、仲西は愛想笑いを浮かべながら曖昧に頷いた。
それからの放課後、一年校舎の出入り口から少し離れた場所で、仲西は美月を待つことが日課になった。
ある日、仲西が美月を待っていると、先日見かけた林田と茂木の姿が他の生徒に紛れて見えた。向こうも仲西に気づいたようであった。二人は仲西から目を逸らすと距離を取り、視線をあらぬ方向に向けながら足早に去っていった。
しばらくして、美月が姿を現した。毎度のことであるが、その姿を見ると自分の鼓動が高まるのを仲西は感じた。
美月のクラスの帰り学活は少し遅めで、仲西は待たされることが多かったが、その待っている時間すらも楽しかった。
美月は週に何日か、渋谷に何かの用事で行っており、仲西自身もバイトやランバトの練習で、それなりにやることがあった。そのため二人だけでどこかへ遊びに行くような時間はほとんどなかったが、仲西は美月を駅まで送ったり、家までバイクに乗せて送ったりするだけで、十分幸せだった。
そんな日がしばらく続く。
五月の風が二人の関係を後押しするかのように爽やかに吹いていた。




