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RR ー Double R ー  作者: 文月理世
RR ー Double R ー ZWEI
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2-4 Unnerving Presence ー 災 ー ④


 美月は林田と茂木とのやり取りについて誰にも相談しなかった。

 自分自身の不注意でそうなってしまったので、結果としてお金を払うことになってしまったのも仕方ないという考えもある。だが、そのことを誰にも言わなかった一番の理由は、兄や蓮たちに余計な心配をかけたくないという気持ちであった。それに加えて、今ようやく学校に来られるようになったのに、こんなことで負けたくないと言う思いもあった。


 クリーニング代を払った後、林田と茂木の二人は美月に話しかけることもなく、何事もなく過ごしていた。払うものはちゃんと払ったので、この件は終わったのだろうと、美月は胸をなでおろしていた。

 しかし数日後、そんな美月の思いを裏切るかのように、例の二人が再度近寄ってきた。

 教室で帰りの学活が終わるといきなり二人にはさまれ、美月は教室の外にある休憩スペースについて来るように言われた。

 美月がのろのろとそこついていくと、林田がバッグからシャツを取り出して、茶色いシミが付いている部分を見せてきた。そして、

「このシミ、クリーニングにだしても取れなかったんだけど」と厳しい口調で美月に詰め寄った。美月が何も言えずにいると、

「新しいの、買うしかないかもね」と今度は茂木が独り言のようにつぶやいた。

 新しいシャツを買うから、また金を出せと言いたいのだろう。確かに学校指定のシャツであれば、それなりの値段がするはずであった。

「ま、またお金払うの?」と美月がおそるおそる聞くと、林田は持っていたシャツを地面に叩きつけ、

「当たり前だろ!」と怒鳴った。

 美月は、涙があふれ出るのをなんとか堪えながら、

「い、いい、いくら払えばいいの?」と震える声で聞いた。

「三万円」林田は前もって準備していたかのように即答した。


 美月はバッグから財布を取り出すと、林田に三万円を渡した。震える手で財布からお札を取り出す手元を、二人がじっとりとした視線で見つめていた。

 美月は何かあったときのために、ある程度の現金は持ち歩くようにしていた。電車が動かなくなったり、必要な時にタクシーを使えるようにある程度まとまったお金をもつように那珂島に言われたからである。それにそれは、いままでのお小遣いを貯めたりしたお金であり、決して遊ぶためのお金ではなかった。


 美月がお金を渡すと、林田の顔は怒っている風であったが、その目の奥に喜びのようなものを明らかに浮かべた。しかし林田の顔をまともに見ることもできない美月が、その表情に気づけるわけもなかった。

 三万円は美月にとって決して安い金額ではない。

 しかし、事の発端が自分の不注意である、と何度も言い聞かせながら、こればかりは高い勉強代だと思いこむようにして、ひたすら我慢した。








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