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RR ー Double R ー  作者: 文月理世
RR ー Double R ー ZWEI
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2-3 Unnerving Presence ー 災 ー ③


「お前ぶつかっておいて、何知らんぷりしてんだよ!」

 三人は校舎わきにあるベンチのところにいた。

 美月にぶつかられた生徒は林田といい、もう一人は茂木という男子であった。


「あ、あの、知らんぷり、し、してません」と、美月は消え入りそうな声で答える。

「はあ?こっちはお前のせいで授業遅れて怒られてんだよ。誰のせいだよ」

「ご、ごめんなさいー」

「謝れって言ってんじゃねえよ。誰のせいかって聞いてんだよ」

「わた、わたしが、ぶ、ぶつかったから」

「だよね。お前が悪いのに自分だけ普通に授業に行ってるとかありえないんだけど」

「ご、ごめんなさい」

「謝るのがおせーんだよ」

「ごめんなさー

 美月が謝っている途中で、林田の手が美月を突き飛ばした。

 美月は、バランスを崩してしまい地面に倒れる。茂木が、手出したらダメだって、と林田を落ち着かせる声がした。声の方向を見上げると、二人は怒りの表情で美月を見下ろしていた。


「こんなシミつけて、どうすんだよ」林田は、コーヒーの汚れがついたシャツを美月につきだした。

「あ、あの。クリーニングのお金出します」美月は地べたに座り込んだまま下を向いて言葉を絞り出した。

「いくら?」林田が冷たい声で聞いてきた。美月は少し考えるが、いくら払えばいいのかわからないので、

「い、い、いくら払えばいいんですか」と聞いた。

 林田と茂木の二人は、少し小声で相談すると、

「一万円」林田が言った。

 一万円はクリーニング代にしては高いのではないかと、美月は思ったが、何か言ってまた大きい声をだされるのが怖くて、

「そ、それで許してくれるの」と確認した。

「仕方ないから許してやるよ」林田が答えた。


 美月はなんとか気力を振り絞って立ち上がると、バッグから財布を取り出し、一万円を抜き取って林田に渡した。そして下を向いたまま再度、ごめんなさい、と言ってその場を立ち去ろうとしたその時、

「ちょっと、俺には何もないの」と茂木がいやらしい笑顔で言った。

 美月が何も言えず黙っていると、

「お前のせいで、俺も嫌な思いしてるんだけど」茂木のにやけ顔が一変して怒りの表情になる。

「ど、どうすればいいんですか?」美月は聞く。

「自分で考えろ!」茂木は強い口調で言った。

 その時、美月の目に林田が先程渡した一万円札をひらひらさせているのが見えた。そして震える手で財布からもう一万円を取り出し、茂木に渡した。

 茂木は一瞬嬉しそうな顔になるが、美月はずっとうつむいたままだったので、その表情の変化を捉えることはできなかった。

 二人は金を受け取ると、もう用はないと言わんばかりに、そそくさとその場から去っていった。

 美月はしばらくの間、その場にじっと佇む。


 四月終わりの涼しい風が、美月の乾いた心を静かに揺らしていた。









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