1-7 Lunatic Night ー 不可思議 ー ⑦
生協裏の細い道路は少しなだらかな坂になっており、駐車場はその突き当りにあった。日中に吹いた強めの風のせいか、桜の花びらが道路を覆い、さながら白いヴァージンロードである。
蓮は坂を上がりながら、少し先の様子を目を凝らしてうかがった。しかし、少し先に見える薄明りの中からは人の気配が感じられなかった。時間は間違っていないはずだけど、と思いながら坂を上がりきった先に、異様な光景が広がっていた。
駐車場の中央付近に黒い塊があった。
それは白い桜のカーペットの地面の上に張り付いた、巨大な黒い座布団に見えた。蓮がさらに近づき確認すると、それは倒れた谷松であった。
谷松はうつぶせ倒れたまま地面に張り付き、ピクリとも動いていなかった。
ふと、駐車場の奥のほうから呻く声が聞こえた。
辺りを確認すると五、六人の神宮寺の制服を着た生徒が倒れていた。まるで永松のいる場所から突風に吹き飛ばされたようにあちこちの散らばっていた。全員が放置された粗大ごみのように地面に横たわっていた。
目の前の光景に蓮は絶句しつつも、比較的倒れ方がましな生徒に声をかけ、回復を待って話しかけた。意識が戻ると痛みで顔を歪めて呻いたが、なんとか話せる者がいた。
蓮はその生徒に、いったい何がどうなっているのか聞いたが、相手も何かわけがわからない内にそうなってしまったようであった。短期的な記憶障害を起こしているようでもある。
その生徒は体の痛みを堪えながら、谷松の状態を確認しに向かった。谷松は受けたダメージが大きいようで意識がまだ戻っていない。
蓮は、この状況では立ち合いどころではないので自分たちは帰っていいか、とその生徒に律義に聞いた。
「これやったのお前らの仲間じゃねえのか?」相手の生徒は、痛みに呻きながら聞いてきた。
「私も状況がよくわからないんだけど」と蓮は言う。
相手は、わけわかんねぇ、とつぶやき、
「なんにしても、谷松さん無理だろ。帰ってもらったほうがいい」と蓮に向かって言うと、他の倒れている仲間の確認に向かっていった。
蓮たちは、しばらくその様子を見ていたが、自分たちがここにいる意味も無いので、まだ意識の戻らない谷松を横目に無言でその場を立ち去った。
月明かりが漆黒の夜空に浮かぶ桜を照らし、不気味な生暖かい風が白い花びらを無数に散らしていた。




