1-6 Lunatic Night ー 不可思議 ー ⑥
神宮寺高校は、授業がある平常期間であれば平日であっても夜遅くまでそれなりの生徒の数が残っていた。
しかし、春休みの間は部活も早めに終わるようで、夜の七時すぎるとめっきり生徒がいなくなってしまう。曜日によっては遅くまで体育館などの施設で何かのスポーツを行っていたりするが、その今日はそれもないようであった。
谷松に指定された場所は、キャンパス中央を南北に横切るように伸びる道路の西側に位置していた。周囲を建物に囲まれ、奥まった場所にあった。使い勝手が悪いせいか、その駐車場を使う人間はほとんどいない。そのため人の目に付くことも無く立ち会うには絶好の場所であった。
〈ベタな場所に呼び出して〉
蓮としては別に一人でもよかったが、この件に関して仲西と那珂島は一緒に行くと言ってきかなかった。そこで二人と変に言い合っても何も意味がないので、一応手を出さないということを条件に同行してもらうことにしたのだ。念のため、真野と渡にも事情を話し、学校の近くで待機してもらうことにもなっていた。
三人は学校の近くにあるドラッグストアにバイクを停めると、そこから坂を下り学校を目指した。蓮は、学校の近くになると通話アプリを起動させ凜に繋いだ。凜が動画通話でその場の様子を実況してほしいと言ってきたからだ。
アプリを繋ぐと、ガジェットの画面に、凜のアバターである猫がちょこんと映った。蓮はそれを確認すると、音声をミュートにして、凜に目の前の景色が見えるようにインサイドカメラの部分を前に向けた状態で、胸ポケットに差し込んだ。
学校に到着すると、蓮たちは正門を通るのを避け、キャンパス南側にある二年校舎のほうから遠巻きに移動して生協へ向かって行った。約束の時間までは十分余裕があった。
〈さっさと終わらせて帰ろう〉
蓮はそんなことを考えながら、まずは谷松との約束の場所が見渡せるポイントのチェックに回った。
指定された駐車場は、生協の裏にある合宿所前の細い道を入った突き当りにあった。西側は数メートルの崖のようになっており、北側が住宅のフェンスで区切られているようであった。
最初に西側の崖の上近辺を確認したが、その方角から駐車場に行くに民家の敷地に入らなければならないので、誰かがそこに忍んでいる様子はなさそうであった。
次に生協のある建物のチェックに回る。その建物の東側には階段があり、その踊り場からであれば裏方向にある駐車場が見えるはずであった。その場所を確認したところ、その時間は階段の踊り場に行く扉に鍵がかかっており、誰も入れないようにようになっていた。
蓮がガジェットの時間を確認すると、約束の時間まであと十五分ほどあった。三人は生協の建物の向かいにある校舎のベンチに腰を下ろし時が過ぎるのを待った。
しばらくじっとしていると、不意に大型のバイクが重量感のある排気音を響かせながら走っていく音が聞こえた。
それが合図であるかのように蓮は立ち上がり、約束の場所へ向かっていく。仲西と那珂島はそれに無言でついていった。




