1-3 Lunatic Night ー 不可思議 ー ③
以前、谷松能也はランクバトルのゴールドリーグのチームに所属していた。そして、そのチームは蓮が以前所属していたチームであるサンクチュアリというチームと対戦し敗れていた。
目の前で蓮に一方的に攻め込まれ、あっという間に崩れ落ちるチームのメンバーの姿は、今でも谷松の脳裏に鮮明に焼き付いている。
谷松がいたチームはそのシーズン、サンクチュアリと対戦した次のバトルでも敗戦。リーグ降格戦でも連敗し、次のシーズンはシルバーリーグへ降格してしまった。
タイミングの悪いことに、時期を同じくしてチーム内の賞金分配を巡るトラブルが起こり、結果としてチームは解散。
谷松は金銭を巡るあらぬ疑いをかけられ、チームメンバーからは完全にハブられてしまった。どんなに無実を訴えても、誰も谷松を信用する者はいなかった。
新天地を求め他のゴールドリーグのチームへの移籍をしようとしたのだが、谷松が解散したチームのトラブルを起こした原因であるという噂がすでに相手の耳に入っており、とりつく島もなく加入を断られてしまった。
ゴールドよりも下のリーグでもいいと思い、しばらくは復帰を目指したが、シルバーのチームはおろかブロンズのチームにまで加入を断られてしまう始末であった。
そうして谷松はランバトを諦め、失意のままランバトの舞台から姿を消さなければならなかった。
後になってわかった事実であるが、解散したチームの主要メンバーが結託して賞金の流れをうまくごまかし、谷松が金を多めにもらっているように見せかけていたようであった。そして全てを谷松の責任にして、自分たちの身を守るために、あらぬ噂をあちこちに流していたらしいことを、だいぶ時間が経ってから元のチームメンバーが教えてくれた。
谷松がそれを知った時点でもうランバトに復帰しようという気持ちは無くなっていた。新メンバーとしてどこかのチームに入ったとしてもバトルに起用される保証はどこにもない。
なにより以前のチームで自分なりに築けていたと思っていた人間関係に裏切られたことが、谷松にとって大きなショックであった。
その後ランバトのことは吹っ切れたつもりでいたが、実際は心の奥底に気持ちの悪い小さな棘が刺さったままであった。
〈自分なら、もっと上に行けたんじゃないか〉
ランバトに参加しながら、リーグの頂点であるプラチナリーグで戦うことは、谷松のみならず、おそらく全リーグに在籍するチームの目標でもある。
トラブルさえなければ、自分にもプラチナリーグに行けたチャンスはあったはずだ、と谷松は今でも思っていた。ランバト復帰はとうの昔に諦めてはいたものの、そうして過去への鬱屈した想いは決して消え去ることは無く常に心の奥で疼いていたのだ。
〈イブキレン〉は、上位リーグの中では伝説の域にいる人間であった。
谷松のチームが降格し解散に至る最中でも、その活躍は常に噂されていた。そのイブキレンに谷松が偶然出会えたのは、まさに僥倖である。
最早、谷松にとって学校をまとめるあげることは二の次となっていた。
〈あのイブキレンとサシで勝負できれば、それだけで十分だ〉
谷松の心がこれほどまでに高鳴るのは、それまでの人生で初めてのことであった。




