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RR ー Double R ー  作者: 文月理世
RR ー Double R ー ZWEI
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1-1 Lunatic Night ー 不可思議 ー ①

 

 暖かい春の風が桜の枝から無数の花びらを解き放っている。


 日時は、日本時間四月五日、午後八時少し前。


 テニスコートほどの広さの駐車場。

 薄暗い街灯があたりをぼんやりと照らす中、一人の男が佇み、いくつかの人影があからさまな殺気を放ちながらそれを取り囲む。

 青白い月光の下、その空間だけが異様な歪みに包まれていた。





 時間は二カ月ほど前に遡る。

 神宮寺高校では、あまり素行がよろしくない生徒たちの間でちょっとした揉めごとが起きた。とはいえそれはほぼ毎年恒例のことであった。

 三年の卒業が近づくと、次年度のい四月から新三年になる第二学年の間で、どのグループの誰がこの学校のトップになるかという奇妙な権力争いがあるのだ。


 神宮寺高校不良グループの歴代トップはかなりの猛者がその位置についていた。そしてそれが意味するものは、階級でいえば近隣の不良連中の頂点だ。事実、この近辺で神宮寺高校に立てつく勢力はいない。


 今やマイノリティとなりつつあるやさぐれた生徒にも当然個性があり、力関係に固執する者もいれば喧嘩の強さに興味がない人間もいた。近年では緩い連帯であれば協力はするので、面倒なことにはあまり巻き込んでほしくない、と考える生徒の割合が多いのが実情であった。

 神宮寺高校の最近の傾向としては、在籍する全校生徒の割合に対してのやんちゃな生徒の人数は以前ほど多くはない。とはいっても、それは全体数に対する割合の部分であって、数としては数百人はくだらなかった。


 争奪戦の結果いくつかの主要グループがふるい落とされ、瀬戸派と谷松派という比較的力のある二グループが最終的にトップの座を巡り争うことになった。

 両グループとも、人数やグループ全体としての戦闘力では大差はなかった。小競り合いを続けてお互いのメンバーに怪我人を出したりすれば、またいろいろと面倒になることもわかっている。結果、手っ取り早くグループの頭同士のタイマンでケリをつける方向になった。

 グループの頭同士である瀬戸と谷松の一騎打ちだ。しかし、ほぼそれも毎年恒例の流れではあった。


 瀬戸の身長は平均より少し高い程度であるが、パワーと技術を両方併せ持つ実力派だ。しかし谷松の体格は百九十センチ近くあり、個の強さとしては頭一つ抜けているバキバキの武闘派であった。

 立ち合いが始まると、谷松はリーチを生かしたパワフルな攻撃で手数を出していく。瀬戸は、最初こそ足を使いながら谷松の猛烈な打撃を凌いでいたが、近距離で谷松のオハコである投げ技を使われると為す術なく一方的な展開となってしまった。

 結果として谷松が勝ち、学校の次年度のとりまとめグループは谷松派になることで話がまとまった。

 


 谷松能也は以前から、もし自分のグループがトップになったら学校の目立ったグループをまとめ上げて、上下関係のあるちょっとした組織を作り上げようと考えていた。

 そして二年の三学期のうちに、同学年と下の学年にある通達を出した。来年度は全グループを系統立てて一つのまとまった組織にするので、少しでもこの学校でイキがるのであれば自分に面通しをしておけよ、という知らせであった。

 その後、主だったグループは谷松に挨拶に行き、事実上谷松グループの傘下になった。一方でいくつかのグループは、そういった息苦しいのはごめんだとばかりに、ヤンキーをやめていった。


 そんな具合に学校中の目立ったグループの掌握を始めたのだが、二月のある日、谷松は一つの気になる情報を耳にすることになった。

 挨拶に来たある一年生の話である。

 その生徒の話によれば、なんでも今の一年にランクバトルという格闘技の大会に出ている、やけに喧嘩の強い生徒がいるらしい、とのことだ。それは金髪と短髪の二人組であった。

 詳しく話を聞くが、その二人は他のグループといがみ合ってもいなければ、偉そうに幅を利かせているわけでもないようである。

 谷松はその話に特に興味のあるそぶりも見せず、ランバトとうちの組織は関係ないから、とその話にはそれ以上深入りしなかった。

 しかし内心、その話が本当であるかどうかを確認したくなっていた。谷松にとって目立った動きをしていないそんな二人組は、全く気にも留める相手ではなかったのだが、ランバトに参加しているというのであれば話は別であった。 


〈ランクバトル〉に関しては、谷松グループの中でも一部の人間しか知らないものである。仮に知っているとしても、単純にその名前だけ知っている程度だ。せいぜい格闘技の大会であるぐらいの認識でしかなく、実際にランバトにエントリーしているのとは全く別物なのだ。



 それから少し時間を置いたある日、その話の真偽を確かめようと、谷松は一人で金髪と短髪をよく見かけるという学食に会いに行ったのだが、そこで思わぬ人物に出くわす。

 テーブルの一角、金髪と短髪と話しをしている伊吹蓮の姿を見て谷松は身震いした。

〈イブキレンじゃねえか〉

 気持ちを落ち着かせ、少し様子を確認した後、何もせずにその場を引きあげた。

 谷松の頭の中から金髪と短髪の存在は完全に消えていた。








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