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RR ー Double R ー  作者: 文月理世
RR ー Double R ー EN
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35-3 Full Moon ― 歓嬉 ― ③


 二日後の昼過ぎ、蓮は凜と渋谷で待ち合わせをしていた。

 蓮は約束の時間より早めに着いてしまったので、交差点の近くの建物にあるスターニャックスというコーヒーショップでキャラメルグランドルを買って飲むことにした。

 二階の窓際の空いている席に座り、ガジェットを取り出し早めに着いたことを凜にメッセージする。すぐに返信があり、あと数駅で渋谷に着くそうだ。自分がスタニャにいることを伝えると、凜はすぐ行くから待ってて、とのことであった。


 蓮は窓越しに交差点を見下ろしながら待っていた。

 行き交う人々は春休みということもあってか、日中にもかかわらず中高生に見える人が多い気がする。しばらくの間何も考えずぼーっとしていると、不意にスクランブル交差点の向こうから、よく知っているシルエットが目に入った。

 遠くからでも凜のそのスタイルの良さですぐに分かる。その隣には小柄でかわいらしい女の子が一緒になって歩いていた。一瞬、誰だろうと不思議に思ったが、近づくにつれてそれが美月であることがわかった。美月は半年前とは別人であった。

 蓮はその二人を眺めながら少しだけ物思いにふけった。



 三人はスタニャで合流するとそこからガード下をくぐり表参道方面に向かって歩いていった。

 蓮は凜にどこに行くのか聞いたが、着いてからのお楽しみだから、と言っていたずらっぽく笑っただけであった。凜についていくと、大きい交差点を渡り、しばらく建物の間を縫うように歩いた先にあるピカピカのビルに入っていった。

 三人は一階の受付で入館カードをもらい、エレベーターで上の階に向かった。周りのサラリーマンやOLの視線が時折刺さるが、凜や美月は、すでに何回も来ているのか何も感じていないようであった。


 目的のフロアでエレベーターを降り、少しフロアを歩いた先にある会社の受付で凜が来訪を告げる。

 しばらくすると、社員と思われる女性が来て中まで案内してくれた。三人が会議室のような部屋に通されると、中には女性と男性が一人ずつ先に待っていた。凜と美月はもう顔なじみのようであった。

 蓮が、はじめまして、と挨拶をする。女性は石田、男性は豊岡と名乗のり、よく来たね、と言って顔をほころばせた。


 三人が席に着くと、それじゃあ、こないだの続きなんだけど、と豊岡は言って、何かの資料を石田に用意させた。いくつかのファイルと閉じられた分厚い資料が、凜と美月に見せられた。

 蓮も普通に見える席に座っているのでのぞき込んでみると、それは洋服のデザインであった。かなり具体的な部分まで進んでいるらしく、試作も何度かしながら、デザインの最終調整に入っているようである。

 蓮は思わずびっくりして、これって、と凜に聞くと、美月のデザインで洋服のブランドが立ち上がることをさらりと言った。


 蓮は、にわかには信じられず、目の前の豊岡に凜のドッキリなのかと聞いた。豊岡は、なぜかそれがツボにはまったらしく大笑いしていた。

 打ち合わせの中で、美月は試作品とデザインを確認しながら、これはこういうコンセプトだとか、服を使ってもらう人のイメージはこうだとか、かわいらしい声を一生懸命出しながら伝えていた。凜は、美月が言葉に詰まると助け舟を出していた。

 自分の想いを、顔を紅潮させながら一生懸命話す美月の姿は、ランバトのミーティングで無言で座っているときとは別人であった。


 打ち合わせが終わると、次回の予定を確認し三人は会議室を出ようとする。すると豊岡が何か思い出したかのように、あれもってきて、と石田に伝えた。石田は部屋から出ていくとすぐに戻り、豊岡に何かを手渡した。


「先週にはできてたんだけど、渡す機会がなくてさ」と豊岡は言いながら、カード入れのようなものを美月に差し出した。

 美月がそのケースを開けると中身は名刺であった。固まったようにそれをじっと見つめる。蓮と凜はそれをのぞき込んだ。

〈 チーフデザイナー 那珂島美月 〉

 美月が泣き始めた。すごいじゃない美月ちゃん、と凜が歓ぶ。

 蓮は名刺に書かれたブランド名に目が釘付けになった。



〈 RR ― Double R ― 〉 


 

 今、夢中になれるものがある。

 これほど嬉しいことはない。








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