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RR ー Double R ー  作者: 文月理世
RR ー Double R ー EN
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34-1 Pentiment ― 素 ― ①


 三月になると、時折春を感じさせる暖かい風を感じる瞬間が多くなってくる。

 蓮と凜は屋上でお昼ご飯を食べていた。その日の天気は快晴であることを前もって調べ、蓮は先日約束したサンドイッチを作っていくことを、昨日の帰り際に凜に言っておいたのだ。


 凜は今日の朝ごはん抜いてきたー、と楽しそうに食べてくれた。凜の好きなハムとキュウリのサンドイッチは多めに作ってきたので、食べきれず残ってしまったが、おやつに食べるんだ、と言って奇妙な包みに入れていた。

 屋上から眺める景色は素晴らしく、蓮が自分の家がある方角を見ると特徴的な形をした建物のある辺り一帯が一望できた。


 二人でしばらく街の眺めを見ていると、「ランバトはどう?」と珍しく凜が聞いてきた。

 普段、蓮からはそれについて話さないようにしていた。蓮がランバトに復帰してから、凜は以前のように仲西や那珂島とグリルガーデンに行く機会もめっきり減ってしまった。蓮はバイトに合わせ、ランバトの練習にできるだけ出ているので、平日の放課後に凜と過ごす時間もほとんどなくなっていた。


「なんとかみんな頑張ってるよ。こないだも一回戦があって全勝で勝てたんだよね」と蓮は何かの報告のように言った。凜はランバトのルールついてある程度教えてもらっているので、すごいじゃない、とえへへと笑った。


 風が屋上を吹き抜けていく。二人の髪が風に煽られて不規則に揺れた。

 しばらく沈黙の後、蓮は以前から何度も凜に繰り返している質問を口にした。

「凜、余計なお世話かもしれないけど、家のこと大丈夫?」

「家のこと?」と凜はいつもの素振りである。


「うん。今年になってから、何だか無理してる感じがして、具合悪そうだったし」

「全然何ともないよ。そんなひどかった?」

「最近学校も休みがちだし大丈夫かなって。役に立たないかもしれないけど、何か私ができることあればいいんだけど」蓮の声のトーンが自然と落ちた。


「うーん。本当に何もないんだけど。まあ、何かあったら助けてもらうね」と凜はおおげさに、えへへと笑った。

「ランバトの脆る前は、放課後とか結構一緒に遊んでたのに、最近全然一緒にいれなくて。私、自分の好きなことばっかり優先して、それまで凜のこと利用してたみたいな感じがして、なんか私、すごく自分勝手だなって」と言う蓮の顔が歪んだ。


 凜は、蓮がそんな表情をするのを初めて見た。今にも泣きそうな感じがして、何か面白いことを言わなければと焦った。

「別に、私も鬼退治で忙しかったから気にしないで。鬼だけじゃなくてすっごいやばい女狐とかもいたから大変だったの」と言うが蓮は下を向いたまま全く笑ってくれない。もう今にも泣きそうである。何とかその場を取り繕おうと凜は焦った。


 こんな時に何を言っても逆効果なのはよくわかっている。しかし、何もしなくても同じ結果になるなら何か言ったほうがいい。

「蓮にはあんな面白い人たちがいるんだから、私なんかいなくても大丈夫だよ」と凜が言った瞬間、蓮が表情が固まった。凜は焦りのあまり余計なことを言ってしまったことを後悔した。


 冷たい風が二人の周りを吹き抜けていく。堰を切ったように蓮の両目から涙が溢れた。凜はなんとか取り繕おうと、えへへと笑いながら、

「その、いなくなるって別に消えるわけじゃー「なんでそんなこと言うの」蓮は泣きながら震える細い声を出した。蓮のそんな声を聞くのも初めてであった。


「ごめん、そんなつもりじゃ―」凜は動揺し、その先の言葉を見つけることが出来ない。

 蓮はしくしく泣き続けていた。


 不用意に出してしまったその言葉は、素の凜の言葉であった。

 少し前であったら、決してそんな言葉を口にすることはなかったはずだ。最近凜は素のなっている時間が多くなり、ふと気が緩むとそうなってしまっていた。それがいいことなのか悪いことなのかわからない。


 蓮には本当の自分を見せても、間違いなく受け入れてくれるだろう。

 自分の過去の重荷を一緒になって背負ってくれるはずだ。そしてそれを話したところで、決して二人の関係は変わらないと思う。

 しかし何も変わらないのであれば余計な心配をかけたくない。蓮には少しでも幸せになってもらいたいのだ。そして改めて本当の自分は見せないほうがいい、と凜は強く思った。








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