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RR ー Double R ー  作者: 文月理世
RR ー Double R ー EN
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32-1 Ring Less ― 絶 ― ①


 冬休みの間中、凜は母親に会おうとしなかった。

 母親のほうからは何度か連絡があったが、凜が一方的に距離を取っていたのだ。それには一応自分なりの理由があった。離婚した母親には新しい恋人がおり、その邪魔になるようなことはしたくなかったからだ。


 初詣には蓮と美月を誘って明治神宮へ行ってきた。

 美月と一緒に那珂島もついてくるかと思ったら、待ち合わせには美月一人で来た。蓮が那珂島からメッセージをもらっていたようで、美月には一人で出かけるリハビリをさせているそうだ。本人も四月から高校に行くつもりらしく、少しずつ自分を変えようとしているようだ。

 年が明けてからは久しぶりに蓮の家に泊りに行き、中華街でおいしいものを食べたり、近くの公園を散歩したりして楽しむこともできた。


 三学期が始まると、蓮はいろいろ立て込んで忙しそうであった。

 ランバト新シーズンの緒戦に向けての調整で、仲西や那珂島は妙にピリピリしていたが、蓮の様子は普段と特に変わらない。バイトのシフトを調整したりして体調を崩さないようにしているらしいが、何にしても無事ランバトに復帰して、楽しくやっているようで良かった。


 冬休みに蓮の家に泊まりに行ったとき、どういうわけか蓮は何度も、凜に何か心配事はないか聞いてきた。凜はいつもの調子で何もないけど、とえへへと笑いながら誤魔化したが、蓮はあまり納得していないような感じであった。


 どうして蓮がそう思うようになったかはわからないが、なんとなく心当たりはある。清里にツーリングに行った後ぐらいから、妙に凜のことを心配するような言葉が多くなった気がする。

 ツーリングに行ったあの日の夜、凜は思わず過去を思い出して布団の中で泣いてしまっていた。声は押し殺していたはずなので、蓮にばれていないはずなのだが、どういうわけか気づかれたのかもしれなかった。


 一度、蓮に自分の過去を話そうか迷ったが、やめた。

 蓮には余計な心配をかけたくないし、自分の昔の話をしたところで何もどうにもならないあい、自分の心にあるのは進んで人に言えるような類ものではないことは誰よりもわかっている。

 そのどす黒い闇に存在するのは一種の恨みとか執着とも言える哀れな足掻きでしかない。

 そんな自分を決して蓮には知られたくなかった。



 凜が日本に帰ってきてからようやく半年が過ぎ、約束の日時は過ぎた。

 東堂の決めた期限は半年、十二月いっぱいである。この時が来るまで、毎日が早く過ぎるのを祈りながら凜は闇の中で一人耐えていた。


 年が明けると、何度も何度も東堂に連絡をした。しかし彼女は全くその連絡に応えようとしない。ガジェットにメッセージを残しても既読も返信も無い日が続く。

 正月の三が日が明け、凜は東堂の会社に直接連絡を入れるが、事務員が応対し、東堂は現在休暇中のためしばらく出社しませんと言われてしまう。

 凜は、東堂が会社に出社したら、必ず連絡をもらえるようにその都度伝えるが、教えてもらった彼女の出社予定日を過ぎても一向に連絡が来る気配がなかった。


 さすがに頭にきて、事務所に何度もアポイントなしで行くが、その度に、東堂は外出中ですと言われ門前払いされてしまう。

 三学期が始まると、凜は学校の後ほぼ毎日、表参道にある東堂の事務所に行った。しかし何度行っても彼女は当然のように外出中である。恐ろしいほどわかりやすい居留守の仕方であった。


 一月も中旬を過ぎるが、凜は憑りつかれたように毎日東堂のオフィスの入っているビルに行くと、一階にある喫茶店に何時間も張り込みを続けた。

 何も変わることなく空振りが続く中、その日も喫茶店の定位置の席で凜が孤高のスナイパーの様にじっと東堂を待っていると、不意にガジェットが揺れる。

 画面に〈女狐〉と表示されていた。








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