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RR ー Double R ー  作者: 文月理世
RR ー Double R ー EN
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31-3 Crescent ― 兆 ― ③


 一月も中旬を過ぎたある日、美月に凜から連絡が入った。

 どうやら美月に会わせたい人がいるとのことであった。美月がどんな人に会うか聞いたところ、どうも凜の母親の知り合いの人らしい。凜は、パパ活じゃないから安心して、と本気とも冗談ともつかぬ口調で言っていたが、凜に限ってそれはないだろうと思い了承した。


 話の最後に凜から、その時に今まで描いたデザインノートも一緒に持ってきてもらいたいと言われる。冬休み中、美月は洋服のデザイン集を凜に何冊か貸していた。

 理由を聞くと、凜の知り合いにそれを見せてデザインの感想を聞きたいからとのことであった。美月にとっては、ただの落書きの延長線なので、あまり深く考えず何冊か貸していたのだ。


 それから数日後の午後、美月は待ち合わせの渋谷へ向かった。

 電車を降り東横線の出口を出て凜に電話をすると、もうすでに改札を出たところにいるようである。

 美月が改札を出て見えた凜の姿に急いで駆け寄ると、そんなあわてなくてていいから、とかわいい笑顔で迎えてくれた。

 凜はすたすたとどこかに向かって歩いていく。美月は凜の後ろをてくてくとついていく。

 凜の歩く速さは早すぎも遅すぎもしない。おそらく美月のペースに合わせてくれているのだろう。美月は凜と一緒に歩きながら、何だかすごくきれいな女優の人と歩いているようで、蓮といるときと同じようにドキドキした。


 二人が向った場所は、渋谷駅から歩いて十分ほどのピカピカの大きいビルであった。一階の総合受付でセキュリティーカードをもらわなければ中に入れない警備の厳しい場所である。凜が受付で要件を伝えカードをもらい、二人はゲートチェックをパスして中に入っていった。


 ビルの中は当然ながらスーツ姿の大人たちばかりであった。制服姿の凛と私服の中学生の美月の組み合わせを珍しい動物でも見るように無遠慮な視線を送ってきた。美月はすっかりおどおどしてしまったが、凜は慣れた様子でずんずん進んでいった。


 エレベーターで目的のフロアに行き、オフィス受付の電話で凜が来訪を告げると、若い女性が迎えに来てくれた。パンツルックの細身の女性で髪を後ろでまとめ、すっきりとした顔立ちをしている。

 その女性は石田さんというらしい。凜は何度か会ったことがあるらしく、美月には初めましてと挨拶してくれた。美月も何とか下を向きながら挨拶を返した。


 石田に案内され、二人は会議室のような場所に行くと、すでに一人イスに座って待っていた。

 こちらは男性で、メガネをかけ、清潔感のあるカジュアルな服装をしていた。二人が部屋に入るとその男性は立ち上がり、美月に初めましてと挨拶した。少し運動不足なのかおなか周りが気になる。髪型が特徴的で、両サイドを借り上げ上の部分を伸ばし、シニヨンのように頭の上でちょこんとまとめ上げていた。


 二人が席に座ると、美月は、持ってきたデザインノートをその男性に渡した。石田よりも、その男性のほうがそれに興味があるようで、熱心に各ページを見ている。時間をかけ見る途中、デザインの意図や、モチーフを聞かれたので、美月はできる範囲で答えた。その全てをチェックし終わると、その男性は名刺を美月に渡した。


〈 シンビーコーポレーション 代表取締役 豊岡結美輔 〉と書かれている。

「美月さん、ブランド立ち上げてみない」豊岡は、単刀直入に美月に聞いてきた。

「ブランド?」美月は意味がよくわからない。

 隣にいた石田が、簡単に概要を説明してくれた。


 豊岡の会社はいくつかの事業を経営しており、その中の一つにアパレル関係の会社があるらしい。

 その事業戦略の一つに客層のターゲットをしぼった特色のあるブランドを出していく方法があるそうだ。いわば小規模であっても必ず需要が見込めるニッチ層向けの商品を供給していくスタイルである。

 豊岡曰く、美月のデザインは個性が立っており、独自路線として戦略を立てらるのではないかと考えているそうだ。

 美月は、何を言っているのか意味がわからず、泣きそうな顔で凜を見ると、

「美月ちゃんのデザインで洋服作りたいってさ」と凜が微笑んだ。








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