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RR ー Double R ー  作者: 文月理世
RR ー Double R ー EN
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30-3 A Parent ― 幸 ― ③


 プレゼント交換の後、四人はテレビゲームをして遊ぼうという流れになった。

 とはいうものの蓮と凜はほとんどテレビゲームというものをしたことがない。そのため操作が難しい格闘対戦ゲームのようなものではなく、みんなでできるすごろくゲームをすることにした。


 選ばれたのは金太郎鉄道というゲームだ。

 世界各地をつないだ経路を、サイコロの出た目で進みながら、指定されたゴールの都市を目指すゲームである。このゲームの面白いところは、単純にサイコロの出た目だけコマを進めていくだけではない。

 各プレーヤーがコマを進めながらゲームの中で使うお金を貯めていき、そのお金で各マス目に設定されている会社や不動産を買ったり、別のプレーヤーの物件を買収したりしていくのだ。

 もちろん進むのを邪魔する場合もある。最終的には、プレーヤーが決めた期間で誰が一番総資産を増やせたかを競うものであった。


 これであれば、一応操作の上手い下手は関係なく遊ぶことができる。はずであった、が、蓮はなぜか全くマスが進まなかった。おまけにタタリ神と言って、ゲームの中の変なキャラクターが最初からつきまとい、勝手に蓮のお金を使ったりして酷い目にあわせてきた。


 早速最下位になった蓮が、はぁー、、とため息をついていたら、凜が二人一組でチーム戦をしようと提案した。ペアは、凜と那珂島、蓮と美月で組むことになった。それを始めようとしたとき那珂島のガジェットに真野からメッセージが入った。


 真野と渡は同じバイト先であるらしく、先ほど仕事が終わり一緒にご飯でも食べないか、と那珂島を誘ってきたらしい。那珂島が家で蓮たちといることを伝えると、真野たちも遊びに行っていいか、とのことであった。蓮も凜も全然気にならないので、そのことを伝えてもらう。



 しばらくして真野と渡が那珂島の家の前に到着した。

 那珂島が家の外に迎えに行き、二人をリビングに連れてくる。蓮や美月に、おつかれーと挨拶してきたが、凜を見た途端に固まってびっくりしていた。那珂島はどうやら凜のことを二人に伝えていなかったようだ。凜は初めて二人に会うので、はじめましてー、と挨拶をした。


 二人とも女子に免疫がないわけではない。しかし、凜レベルの女子はそうそういるものではなかった。真野も渡も、妙な噛み方をしながら挨拶をしていたが、どっちが凜の横に座るかでお互い譲らなかった。

 そこに蓮が割って入り、二人を凜から遠ざける。二人は、蓮の徒手空拳の恐ろしさを間近で見ている分、それが正解ですと言わんばかりにそそくさと二人並んで凜から離れた場所に落ち着いた。


 せっかくなので真野と渡のペアも入れて三組でゲームを始めることになる。

 開始直後から真野と渡にタタリ神が降臨し、ゴールからかなり離れた場所に飛ばされてしまった。蓮と美月のペアと、凜と那珂島のペアはいい勝負をしていたが、最後の収益決算でほんの少しだけ凜と那珂島のペアが勝った。蓮はたかがゲームと思っていたが、負けるとやっぱり悔しいものだな、と不思議に思った。


 またペアを変えてやろうとした時、美月が何かを思い出したかのように二階に上がっていった。すぐに小包を手に戻ってくると、それを凜に渡した。その小包を凜が開けると、蓮が少し前に見たことのあるカーディガンが出てきた。

「え、私?プレゼントさっきもらったよ」と凜が言う。


 美月がうまく事情を話せないようなので、蓮がこの間、蓮も同じものをもらって、凜にも渡してほしいと言われたが、直接本人に渡したほうがいいと伝えていたことを説明した。凜が袖を通してみると、ほぼぴったりのサイズであった。


「すごい。ぴったりだ」と凜が驚く。

 蓮が、前撮った写真から採寸して、美月が自分でデザインから縫製までしたことを伝えた。よく見てみると、デザインはほぼ一緒なのであるが、細部の印象が蓮のものと少し違っている感じがした。蓮がそのことを美月に伝えると、全体は同じように見えるが、細かいところで蓮と凜、それぞれのイメージに合うように変えているらしい。


「美月ちゃん、こうゆうの得意なの?」凜が聞くと、美月は素直にうなずいた。服の裏地を見てみると、細かいところまでしっかりと手が込んでいた。そのカーディガンの縫製を見ながら、「自分でデザインとか描いてるの?」と聞く。美月はもじもじしながら再度うなずいた。

「嫌じゃなかったら、ちょっとみせてもらってもいい?」と凜にお願いされ、美月はまた二階に行くと何冊かノートを持ってきた。

 

 ノートの中を確認すると、シャツ、ジャケット、パンツ、スカートなど様々なデザインが描かれていた。一般的なデザインもあるが、美月の独創的な世界観がうかがえるものも多く見られた。

 その中にあった一冊に目が留まる。それは、比較的新しいノートで、表紙に凜と蓮の名前がアルファベットで書かれていた。

「これ最近のやつ?」と凜が聞くと美月はうなずいた。なんでも蓮と凜に着てもらいたい服を中心にイメージして描いたものらしい。


 そのデザインは万人受けする意匠ではないかもしれないが、いい意味で個性が立っていた。

 刺さる人間には間違いないものだ。蓮と凜が美月からもらったカーディガンは、まさに美月の個性が感じられるものであったが、何故か二人ともそのデザインは一瞬で気に入っていた。


「絵の写真撮ってもいい?」と凜が聞くと美月は相変わらずもじもじしながらうなずいた。

「美月は小さいころからデザインとか裁縫とか好きだったんだよ」那珂島はそのやり取りを眺めながらひとり言のようにつぶやいた。蓮はデザインや裁縫とは無縁の生活をしてきたので、そうゆうことができるのはすごい、と言うと美月は顔を真っ赤にした。


 その時空気を読まない真野がフライドチキンを食べながら「仲西は来ないの?」と聞いてきた。

「まあ、あいつもいろいろあんだよ」那珂島が答える。

 蓮は先日、仲西が会わなきゃならない女がいると言っていたのを思い出し、

「仲西の彼女って会ったことあるの?」となんとなく那珂島に聞いてみる。

 那珂島は、うーん、と言葉を濁すと、ちょっと待ってて、と言ってガジェットを取り出し席を離れリビングから出て行った。


 那珂島が席を外している間、真野は懸命に最新型のロケットランチャーについて、渡は推しの地下アイドルのチェキ会について、それぞれ凜に熱く語りかけていた。

 凜は交互に話しかけてくる二人に絶妙な返しをしながら、同時進行で会話のキャッチボールをしている。蓮と美月は真野と渡の相手の気持ちを考えない支離滅裂なトーク合戦を感心しながら静観していた。

 しばらくして那珂島が戻ってくると真野と渡の頭を軽くひっぱたき「仲西の家に行こう」と言った。








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