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RR ー Double R ー  作者: 文月理世
RR ー Double R ー EN
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30-1 A Parent ― 幸 ― ①


 蓮たちのチームは無事にアンダーリーグに残留することができた。

 利確戦があった次の日、蓮が試合結果の報告を今井にすると、すでにサンクチュアリのメンバーから蓮についての問い合わせがきているそうで、

「みんな俺のこと蓮ちゃんのマネージャーかなんかだと思ってんのかな」と笑っていた。


 伊吹蓮の復帰はアンダーやブロンズなどの下位リーグよりもゴールドやプラチナの上位リーグに衝撃を与えたようせあった。

 蓮が以前サンクチュアリというチームに在籍していた頃、実際に対戦したことのある者も何人かプラチナリーグのチームに残っているのだ。

 全員がいったいどうゆう経緯で、あのイブキレンがアンダーリーグなどという最下層のメンバーになったのかを知りたがった。伊吹蓮とそのチームとの繋がりについて自論を展開する者もいたがすべて憶測の域でしかなかった。



 そんなことを噂されているとは露にも知らず、蓮たちは別のことで頭を悩ませていた。

 試合の次の週、チームのメンバーで軽い祝勝会を開いている時に、仲西が真剣にチーム名を変えたいという提案をしたのである。


「蓮がいなかったら俺たちはアンダーに残れなかったと思う。俺はとにかく最後までやりきるつもりだったけど、はっきり言って残留は諦めていた。だから、気持ちを切り替える意味も込めて、チーム名を変えようと思うんだけど、みんなどうかな?」と仲西が全員に尋ねた。他のチームメンバーは、特に意見がなさそうだった。


「なんで俺たちフライングゴリラーズって名前にしたんだっけ?」真野が聞いた。それは蓮も少し気になっていた。もしかしたら誰かの思い入れのある名前かもしれないからだ。

「それって先生がつけたんじゃないのか。俺は決まった後から聞いたと思うけど」と那珂島が言うと、

「俺が適当につけただけだ」仲西が真顔で答える。

 仲西以外の全員が、は?という顔になった。


「チーム登録の時、運営に提出する書類があって、ちゃんとチームの名前を話し合う時間なかったから」と仲西。

「なんでフライングゴリラなの?」蓮が聞く。

「意味はない。ゴリラ強そうだし、それで飛べたらすげえなと思っただけ」仲西が真剣に言う隣で那珂島が苦笑いしていた。


 特に反対意見がなさそうなのでチーム名は変える方向になった。

 来シーズン第一戦を迎える既定の日時の前には、変更届を運営に提出しなければならない。冬休み中にみんなで考えて、三学期の始業式前に一度集まり相談して決めようということで一旦話は落ち着いた。



 蓮の学校は冬休みが始まるのは比較的早かった。

 十二月の中旬頃には終業式があり、その後の学校は補習授業や部活で登校する生徒だけであった。

 蓮は、いくつかの補習を受けなければならずしぶしぶ学校に来ていた。

 とはいえ登校する生徒数が少ない分、食堂もいつもの喧騒も無く、そういった部分では普段よりのんびりできる感じがした。


 その日の蓮の補習は午前中で終わったので食堂で昼ご飯を食べていた。

 しばらくして仲西と那珂島もやってくる。話を聞くとどうやら同じ補習を受けていたらしい、講義は生徒が百人以上入れる大きめの教室で行われ、席も特に指定されてないのでお互いに気づかなかったのだ。


 仲西は麺類にご飯ものを合わせてかなりの量を食べていた。何やら筋肉量を増やして打ち負けない体づくりをしているとのことだ。

「マジで補習ダリーよ。あの程度ならリモートのオンラインでやれば十分だろう」と仲西は愚痴る。

 一方の那珂島は補習の必要はないのであるが、何故か仲西に付き合って補習に参加しながら別の勉強をしているらしい。


 食事の後、お互いに何気なく最近のバイトの話をしていると、那珂島が突然、蓮にクリスマスはどうしているのか聞いてきた。仲西がちらりと那珂島に視線を走らせる。

「クリスマスって何日?」蓮はあまりクリスマスの日程についてわかっていなかった。


 一般的な家であれば企業のクリスマス商戦も後押し、あれがほしいこれがほしい、こんなのを買おうか、どの店に行こうか、と日付を逆算し準備をしたりするのが普通であろう。

 しかし蓮の家庭はというと小さいころには母親はおらず、物心ついたころには父親は海外に行くことが多くなり、祖母も残念ながら世間のイベントごとには無頓着であった。誕生日なども祝ってもらった記憶も皆無である。


 学校などでクラスメートがクリスマスについて話していることもあったが、蓮はその話題に全く興味が無かったので何か特別なことをした記憶もない。

 とはいえ、日付はなんとなく十二月の二十四前後ぐらいというのはわかっている。しかしながら正式なものは知らなかった。

 それを二人に話すと、マジかよという顔をして那珂島が、十二月二十五日がクリスマス当日であることを教えてくれた。


 蓮がガジェットでバイトを確認すると、その日は十二時から夜の二十時までシフトが入っていた。そのことを伝えると、そうかーと言い那珂島はしばらく黙ったあと、

「バイト休めないかな?」と蓮に聞いてくる。

「え?休むの?」蓮は思わず聞き返した。那珂島がそんなふうに言うのは、蓮の知っている限り初めてのことであった。


 うーん、と蓮は少し考え、

「何かあるの?」蓮は那珂島に聞く。

「できたら、うちで美月と一緒にご飯でも食べられないかなと思って」と那珂島は言いながら、微妙に美月の部分を強調した。


 日時としては、クリスマスは三日後である。凜は、美月ちゃんかー、と考えた。もしかしたらバイト先に事情を言えば、少し早く上がらせてもらえるかもしれない。

「わかんないけど店長に事情話せば行けるかも」と蓮が言うと、

「時間は何時でも大丈夫だから、来てくれたらすごくうれしい」と那珂島はほっとしたようにつぶやくその隣で仲西がにやついていた。蓮が、仲西も来るんでしょ、と聞くと、

「ごめん、会わなきゃならない女がいてさ」と言って笑う。

「なんだそれ」と蓮は思わず真顔になる。


 仲西は中学の頃から女を切らせたことがなく、常に彼女的な女がいるようなことは自分で言っていた。

 確かに仲西は多少派手すぎるな感じはするものの、その顔面偏差値はかなり高めである。

 しかも無駄に陽キャであり話もうまい。加えて那珂島曰く非常にマメらしい。要はある意味女にもてる要素の塊のような男であった。


 そんな仲西であったが、どういうわけか十月以降、女性関係はすっぱり清算したらしいのだ。そして、それまで女に使っていた時間をバイトとトレーニングに充てるようになった、はずであった。

 蓮はそのことを、仲西と那珂島の普段のどうでもいい会話の中から聞いていたが、そんな簡単に人間は変われないものだなと思い、深く聞こうとも思わなかった。


 那珂島が、凜も一緒に来てくれたらいいんだけど、と聞いてきた。蓮はその場で凜にメッセージを送り予定を確認してみる。しばらくすると、凜からメッセージが届いた。

〈おっけーなりー〉、と相変わらずふざけた返事であるが、大丈夫そうだ。

 蓮が時計を見ると、いつの間にかバイトに行かなければならない時間が迫っていたので、じゃあ、詳しい時間わかったらまた連絡するね、と言い残しそそくさとバイトへ向かっていった。








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