29-3 Karma ― 結 ― ③
その日、仲西と那珂島はグリルガーデンで栄養補給をするというので、蓮も一緒に行く約束をしていた。凜は家の用事があるので先に帰ってしまっていた。
凜が帰ってしまったのは、今日蓮がランバトの話を仲西たちにしようしていたことをわかっていたのことが原因な気がして心がチクチクした。同時に正直、蓮は凜がいるところでランバトの話をあまりしたくなかったので、変に自分が安心してしまうのがわかった。
放課後、三人でグリルガーデンに行き特製ランチを食べ終わると、蓮は仲西たちに、チームメンバーに加えてもらえるようにお願いした。
二人とも、最初は何の話をされたのかわからない様子だった。蓮が同じ言葉を二度繰り返して、ようやく二人はその内容を理解できた。
「今四月じゃないよな」と仲西は言いながら真顔でエイプリルフールかどうか考えた。しばらく妙な沈黙が続いた後、
「なんでいきなりそんな気になるんだ」那珂島が怪訝そうに尋ねる。
「いきなりってわけじゃなくて、前一回断った後から、気になってたんだよね」蓮は用意していた答えを言った。
再度しばらくの沈黙が続いた後、仲西が口を開く。
「でも、俺たちもう、ダメかもしれない」
蓮も仲西たちのチームの状況は知っていた。
今シーズンのチーム戦績は二戦とも負け、リーグの中での順位は最下位である。もうじき行われる三戦目の勝敗に関わらず、アンダーリーグ下位二チーム特有の呼称である、ランクバトルリーグ参加権利確定戦、通称〈利確戦〉と呼ばれる十二月のバトルは決定している状態であった。
「蓮には、何のメリットもないよ。前も言ったけど。俺たちのチームに入るぐらいなら、別のー
「縁って知ってる?」凜が仲西の言葉を遮ると、仲西は口をつぐんだ。
「縁って。巡り合わせみたいなものだろ」那珂島が代わりに答える。
「うん。そんな感じだと思う。私もあんまそうゆうのよくわかんないけど。でも、私がここにいて、仲西や那珂島と会えたのは縁があったからだと思う。いろんな縁があると思うけど、私はこの縁は大切にしたいと思ってるの」
「縁、か」仲西がつぶやく。
「全部、凜の受け売りだけどね」と蓮は言いわけするように話した。
「凜がそんなこと言うんだ」仲西は意外に感じながら、不意に自分が那珂島と初めて会った時のことを思い出した。
「俺と那珂島ってさ、最初会った時めちゃめちゃ仲悪かったんだぜ」
「その話、だいぶ前に那珂島から聞いた」と蓮が言うと、仲西は意外そうな表情で那珂島を見る。那珂島は、いつもの仏頂面でうなずいた。仲西は、那珂島が決して口が軽い人間ではないことを誰よりも知っている人間の一人だ。
「そうかー」仲西は逡巡する。
どうしても確認したいことが、一つだけ、あった。
「俺、自分が言ったこと無しにするの、すげえかっこ悪いと思うんだけど一つだけ教えてもらってもいいかな」仲西は歯切れ悪く聞く。
「まあ内容にもよるけど」蓮は答える。
「チームの入るって決めたの、あの手紙関係あるの?」遠慮がちに尋ねるその表情から、自分たちの無力さを嘆く一種の寂しさのようなものが読み取れた。
「違うよ。全然関係ない」蓮は即答した。
「そうか」仲西はそれを聞くと、気の抜けたようにソファの背もたれに体を預け、天井を見上げながらしばらくそうした後、独り言のようにつぶやく。
「メンバー登録は、すぐにできるとして、ルールで次のランバトには参加できない。だから、蓮の一戦目は、利確戦になると思う」
虚空を睨みつける仲西のその両目に熱いものが込み上げていた。




