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RR ー Double R ー  作者: 文月理世
RR ー Double R ー EN
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22-2 Spell ― 半 ― ②


 それは凜がまだ小学生の高学年だった頃、海外にいた時の話だ。

 一人の子どもが凜の通っている日本人学校に転入してきた。名字は忘れたが名前は確か、コータであった。


 そのコータ君、非常に個性的で、転入初日の挨拶からいろんな意味ですごかった。

 その学校では、転入生の挨拶は全校朝礼のついでに全学年の生徒の前で行われた。朝礼の場所は、玄関を少し入ったところにある開けたホールだ。その日、コータ君は前に並んでいる教職員の端に置かれた椅子にちょこんと座り、自分が紹介されるのを待っていた。


 体の成長具合から小学校低学年。その学校の規模はかなり小さく、全学年合わせて五十人もいなかったため、ほぼ全員の視線がコータ君に集まっていた。そんなことを全く気にせず、コータ君はのほほんと椅子に座っていた。椅子に座ると、まだ地面につかない両足をバタバタさせながら、きょろきょろと辺りを見回していた。


 校長の無駄に長く中身が激薄で、終わった瞬間に内容が飛ぶ呪いのような無駄話が終わり、ようやくコータ君が紹介される番となった。

「今日は転校生を紹介します。今日から新しくこの学校の仲間になる○○コータさんです」司会担当の教員がコータ君に、みんなの前に出てくるように伝えた。


 コータ君は、椅子からすとんと降りると、生徒の前には来ず、「ちょっとまっててー」と言って、どういうわけかホール横にあるピアノの横に向かった。

 すると、みんなに背を向け肩幅の二倍足を横に開き、両手は力こぶを見せる形を作ってふんばる姿勢で腰を落とした。全員の視線がコータ君の小さな背中に向けられたその瞬間、

「おならでちゃうー!ぶー!」と言って奇妙なサウンドをそのおしりで奏でた。



 コータ君は、なにかと手間のかかる生徒だった。

 授業中に抜け出す、大声で喚く、給食で他の生徒のものを横取りする。担任の教員も大変だったが、まわりの生徒も大変だった。そんなある時、一人の教員がコータ君の運命を変える言葉を口にした。それが〈半分にする〉であった。


 きっかけはある日の給食のことだ。コータ君のクラスは、おかわりのデザートをじゃんけんで勝った人がもらえるやり方を採用していた。その日はコータ君の大好きなプリンだった。

「かつー!」とコータ君は宣言したものの、あえなく敗退。普通であればそれであきらめるのだが、コータ君は一筋縄ではいかない子どもだ。


「食べたい、食べたい!」を、泣きながら連呼し、自分の席に戻ろうとしない。教員も困ったが、じゃんけんに勝った生徒も困惑してしまった。その生徒が譲ろうとすると、コータ君今度は、

「いらない、いらない!」と言って泣きじゃくるのだ。困った教員は、そこで提案した。

「半分にしようか」

「はんぶん?」その言葉にコータ君はひどく反応する。

「そう、半分にすれば、コータ君も食べられるし、亮君も食べられるし、いいことだらけでしょ」

 そうして問題は解決した。


〈半分にする〉はコータ君の大好きな言葉になった。

 給食のおかわりは半分にする、宿題が嫌だったら半分にする、困った事があったら半分にする。コータ君にとって〈半分にする〉という言葉は、みんなを幸せにする魔法の呪文であった。


 そんなある日、学校でこじんまりとした運動会が開催された。その地域は、まだだいぶ平和な地域であったので、校庭を使ってちょっとしたお祭りのような運動会を毎年行っていた。

 生徒数が少ないために、生徒や保護者、教員を交えた二つのチーム分けを行い、それぞれの種目に点数を設定し、勝ち負けを競った。その年、凜は自分のチームの勝敗がどうだったかは覚えていない。


 ただ、コータ君がいたチームが負けてしまい、教員になだめられながら泣きじゃくっているその姿は、鮮明に覚えていた。そしてそのときも、彼は魔法の言葉を唱えていた。

「ゆうしょうも、はんぶんにするー!」




 凜の提案は、凜が受け取ったお金の半分を蓮がもらい、蓮が返したお金の半分を仲西と那珂島で半分にすればいいんじゃないの、という単純なものである。

 それで受け取ってもらえるならそうしてほしいと、困惑しながら那珂島が言う。

 蓮もなんだかよくわからないが、凜の言っていることは正しいような気がして、それでいいならとしぶしぶ承諾した。仲西は、

「半分こ、最高だな」と言ってくっくっと笑いをこらえている。

「これで、なんかおいしいもの食べられるねー」と言いながら、凜は炭酸の抜けたドクターペッパーの残りをごくごく飲んでいた。








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