13 Trial ― 好 ―
ある日の世界史の授業である。蓮は古代ギリシャについて勉強していた。
教員がいろいろと話をした後、自分たちで学んだことや思ったことをワークシートに書き込み、生徒同士で意見交換をする流れになる。
蓮はよくわからないので、なんとなく聞いたことある髪が蛇になっている女のことを書いた。
髪が蛇だとお風呂の時、蛇の目にシャンプーが染みて痛いんじゃないか、髪を洗う時手が蛇に嚙まれるんじゃないかなど、何か間違っている気がしながらも、なんとか思いつくことができることを書いていった。
その後、例のごとく蓮は後ろの席の凜とペアになり、お互いのシートを交換し意見を書き込む作業になる。凜のワークシートにはこう書かれていた、
〈ヘラクレス十二の試練。それは過去の出来事である。しかし、その試練には続きがあった。第十三の試練、定期考査だ。
この試練の恐ろしいところは、対象者が学校という組織に所属し続ける限り、呪いが解けないという点が世界各地で共通していることだ。さらに恐ろしいことに、各試練における敵の数は一つではなく複数存在し、その試練に応じた結果を残さなければ、延長戦、再延長戦、果ては一般生活における補習や課題というデバフを追加され、苦しみに縛られ続けることになるのだ。ヘラクレスは、この試練から目を背け、呪いとして後の世の人に解決を託すことで、ヴァルハラへと旅立ったのである〉
最高に中二病の言葉であった。
蓮はワークシートのコメント欄に〈そうですね〉と書いて凜に返した。凜から返ってきたワークシートには蛇女と戦う猫の絵が描かれていた。無駄にうまい。その後二人は特に会話もせず授業は進んでいった。
〈定期考査かー〉
確かに凜の書いた通り学校に通う多くの学生は、テストという試練を乗り越えなければならない。それが蓮の学校では来週始まる。蓮の高校では一学期の中間考査はなく、期末考査が成績に関係する大きな試験であった。
蓮もさすがにちゃんと取り組まないとまずいとわかっている。
高校は中学と違い留年があるからだ。いい成績を残さなくていい。最低限の点を取りとにかく赤点をとらないというのが目標だ。
気分は乗らないが、どのみちテストを受けなければならないのである。
追試も補習も課題も嫌だ。
蓮は念のためテストの少し前からバイトを入れずに、頑張って勉強することにした。暗記科目系のように、憶えればいいものはなんとかなる見通しはもてるが、やばいのが数学であった。
小学校の頃算数はどちらかというとできたような覚えがあった。
小三のころすでに負の数であるマイナスの概念のようなものはわかっていたが、学校では割り算掛け算のレベルしか教えられてなかったので、それを教師に質問しても何も答えてくれず、やる気をなくしたことだけは何故か鮮明に覚えていた。
中学では、半分ぐらいは授業に出ていたものの、全く内容は聞いていなかった。
数学が世界のいろいろなものに役に立っているということは、父親の知り合いの人たちから聞いて知ってはいた。建造物や、乗り物、その他身の回りの多くのものが、緻密な数字の計算の上に成り立っているのだ。
しかし実際に自分で学問として数学を勉強してみると実に苦痛にしか感じられなかった。その根底にある思いは、因数分解や微積分が自分が社会で生きていく上で何の役に立つのだろうか?という思いである。実際蓮の知っている人の全てが、学校を卒業した後に因数分解を使ったことは無いと言っていた。
蓮としては数学の専門分野や研究はそれが得意な人間には任せておけばいいという考えである。数字に興味が無い人間は必要最低限の算数ができれば生活に困ることはない。
とはいえそんなことを考えていても、実際には試験をパスしなければならない。
追試や補習といった救済制度もあるがなんとかそれは避けたかった。
原因はある。蓮は今の数学の教員が大嫌いであった。
数学科の田中田の第一印象は、ひげの濃い中年のおっさんである。
背は少し高め、顔が茄子のように長く、異様なほどひげが濃い。朝きちんと剃っているのかどうかわからないほど有り余る濃いひげを常に生やしている。そのあごで大根おろしでもすりおろせそうだ。もちろんそんな大根おろしを食べたらソッコーで腹を壊すだろう。
そして休憩中にタバコを吸っているせいかスーツにヤニ臭い異臭を纏いながら偉そうに出席を確認するのだ。ニコチンの禁断症状なのかわからないが、ペンやチョークを持つ手がいつも震えていた。
外見も臭いも不快であったが近寄らなければ問題ない。しかし蓮はすぐに田中田の行動にさらなる嫌悪感を覚え始めた。田中田は授業で生徒が質問に答えられないと平気で生徒をバカにしてくるのだ。
「そんなこともわかんねえのかww」と得意げに鼻息をフンフン鳴らしながらタバコのヤニで黄ばん歯をのぞかせた。
当然蓮も早々に田中田に馬鹿にされた。
最初の三日で蓮にとって田中田は人を見下す鼻息の荒い髭ヅラのヤニ臭い嫌なおっさんになった。
田中田はある時、授業中に蓮の肩に手を乗せようとしてきた。
他の女子に同じようにボディタッチをしている場面を何度も目撃していた蓮は、田中田の気色悪い気配を感じ素早く身をかわすと、「触らないでください」と吐き捨てるように言った。
「悪い悪い」と言いながら教卓へ戻っていく田中田の顔は引き攣り、濃い髭の下の作り笑いがプルプル震えて顔のデッサンが大きく崩れ、鼻息の音を普段以上にピスピスと大きく鳴らしていた。
その時ばかりは、蓮に対してあまりいい感情を持っていない周りの生徒も、
〈田中田、ざまぁ〉という思いになったという。
そして蓮の田中田の評価は、人を見下す鼻息の荒い髭ヅラのヤニ臭い差別的でスケベで最悪なジジイになった。
その後も何度か触ろうとしてくるので、ある時「セクハラで訴えますよ」と言うと途端に蓮に近寄らなくなった。そしてそれからというもの田中田のあからさまに蓮を馬鹿にする態度が輪をかけてひどくなった。
教員にもいろいろな人間がいるのは仕方がない。
蓮は、なるべく関わらなければいいと思っていたが、授業という空間を共有しなければならないと中々そうはいかない。
今や田中田は、蓮にとって猛毒性産業廃棄物以下の存在であった。
最初からそんな奴だと知っていたら別の教員の数学クラスを選択していたのだが、田中田のクサレ具合を四月当初の段階でわかるはずもなかった。
期末考査の前の週、蓮は数学を教えてもらえるよう、凜に思い切ってお願いをすることした。
凜はいつものように、えへへ、と笑いながら引き受けてくれた。しかし、その日の放課後少し教えてもらったが、ちんぷんかんぷんであった。
凜の勉強する時間を割いてもらっているので、蓮は自分の理解力の無さに申し訳なく思ってしまう。
金曜日の放課後も、凜が勉強しようと誘ってきてくれたのだが、蓮は何だか悪いと思って〈もう大丈夫だから〉と教えてもらうのを断った。
放課後すぐ家に帰り、数学の参考書を開き、問題とにらめっこする。
しかしわからない。他の教科も少しはやらなければならないので、しばらくして数学はあきらめ、他の教科を勉強した。問題集をやればいいだけのものは楽であった。
ある程度勉強をこなし、ちょっと休憩しようと思っていた時、不意にガジェットが鳴った。
瞬間的にバイトの連絡かと予想した。その日はバイトを休むことは前もって伝えてはいたが、金曜の今の時間はちょうど混み始める時間帯だ。そんな時まれに当日人出不足になることがあり、急遽でシフトに入ってほしいと連絡が来ることがあるのだ。
しかしガジェットの表示を見ると凜であった。
「はい」
「蓮、今どこ?」
「家だけど、どしたの?」
「今駅に着いたんだけど、家どこ?」
「は?」蓮は驚く。
「今ね、元町中華街って駅にいるの」
蓮の家の最寄り駅だ。
「え、どうゆうこと?」
「一緒に勉強しようよ」
「え、だって凜も勉強しなきゃでしょ」
「だから、これからする。蓮の部屋で」
「でも準備とか何もしてないし」
「何の準備よ」
「いや、いろいろとさ、部屋とかも散らかってるし」
「駅前で待ってるから、早く迎えに来て」と凜は言うと一方的に通話を切った。
蓮は少しの間唖然として動けなかったが、すぐに立ち上がり、短時間で部屋の片づけを済ませた。散らかっているといっても蓮の持ち物はほぼ無いと言って等しい。数分で家を出ると駅まで凜を迎えに外に出た。
蓮が今一人暮らしをしていて元町中華街駅の近くに住んでいるということは、ついこの間の放課後、図書室で勉強を教えてもらっている合間に話したばかりだ。
お互いの話をなんとなくしている中で蓮がなんとなく話したものだ。その時の凜はあまり興味がなさそうだったのだがしっかりと覚えていたのだろう。
駅につくと、凜は改札を出たところにちょこんと立っていた。
ベージュのチェック柄のワンピースにそのしなやかな細い体を包み、制服でいる時よりも変に大人びて見えた。手には旅行鞄のような茶色の四角いケースを持っている。まるで海外に一人旅をしている令嬢のような雰囲気を醸し出していた。
蓮は思わずドキッとしてしまい、ほんの少しの凜の姿を眺めた。
何人かの男が通り過ぎざまに凜を振り返って見ていた。近くにいる男性のグループがちらちらと凜のほうを気にしているようであった。
蓮はゆっくりと、凜に近づいていく。凜とは違い、Tシャツにハーフパンツ、サンダルと、ラフを通り越して残念すぎる格好であった。
蓮が凜に声をかけると、近くで凜の様子をうかがいながら何か話していた数名の男たちが意外そうな顔をした。おそらく男が凜を迎えに来るだろうと思っていたのかもしれない。遠慮ない視線を送るその男たちを置き去りに、二人はそそくさとその場を後にした。
蓮の部屋の向かう途中、最寄りのスーパーで食べ物や飲み物を買って帰った。家に着くと、凜はシャワーを浴びて軽く汗を流す。しっかりと着替えは持ってきていた。身体にぴったりのTシャツにショートパンツという格好である。クラスの男子がいたらどんなに喜ぶだろうか、と蓮は思いながら、早速数学に取りかかった。
この間から凜に教えてもらっている単元の復習から始めたが、何度同じような問題をやっても慣れないものは慣れない。しばらくして二人は少し休憩することにした。グラスに氷とコーラを入れ、それを飲みながらぐったりと休んでいる蓮の向かいで、凜が黙々と何かを書いている。見てみると、ひたすら蓮の書いた答えをノートに写していた。
「何してんの?」
蓮はコーラの炭酸を喉で味わいながら聞いた。
「え、蓮の字って丸くてかわいいなと思って書いてんの」
「そんな丸いかな」
「丸いっていうか、なんかかわいい」
「ふーん」
蓮は自分の字と人の字を見比べることはほとんど記憶にない。
そもそも自分がこんなに一生懸命数字やら漢字やら書いたのは、思い出せるのが中学一年の一学期ぐらいが最後であった。
確かに、自分の字はそこで成長が止まってしまったのかもしれない。
当時は中学生と言っても、小学校を出て数か月しかたっていなかったのだ。改めて自分の字をよく見てみると、凜の字に比べて確かに丸かった。数字の2がひらがなの〝て〟に見えたり、7が〝つ〟に見えなくもない。蓮は、今さらどうしようもないので、あまり気にしないことにした。
数学の勉強に疲れたので、凜に他の教科も教わった。基本的な勉強の仕方から、問題集の効率の良い解き方、暗記のコツも教えてもらう。テストを受けるにしても、どういった問題が出題されやすいのか、どういった問題を捨てればいいのかなどもレクチャーしてもらう。ついでに、時間がないときは、問題文を読まずに正しい回答を、高確率で当てるための裏技まで教えてもらった。
「こんなのつまらないパズルだと思ってやっとけばいいのよ」と凜は言うが、蓮の正直な感想として、その日凜に教わったテストに関する色々なことは、それまでの義務教育の中で教えてもらった内容以上に役に立つものばかりであった。
小中学校で学習したことが全て無駄であるというわけではないが、少なくとも蓮を感心させるものはなかった。そしてテスト勉強に関して、凜ほど詳しく話してくれる人間は、今までの蓮にはいなかった。
その後いくつかの教科をこなし、その日は早めに寝ることにした。ベッドマットは一つしかないので、そこは凜に使ってもらい、蓮は冬用の掛け布団をマット代わりにして眠った。朝から学校で疲れていたせいか二人とも爆睡してしまった。
次の日の朝いつもより少し遅く起き、簡単な朝食を食べてまたせっせと勉強を始める。昼食を食べても勉強し、時刻はいつの間にか夕方になっていた。涼し気な風が吹いていたので、気分転換に蓮のお気に入りの公園に散歩に行くことにした。
公園は休日ということもあってか、それなりに人出があった。二人は空いているベンチに座り、少し休憩する。海から吹いてくる風が心地よい。試験大変だねー、と話をしながら話題は夏休みのことになった。
「蓮は夏休み何するの?」凜が聞く。
「目いっぱいバイトすると思う」
「前言ってたファミレス?」
「そう」
「そんなお金貯めてどうするの?」
「ちょっとやりたいことがあって」
「やりたいこと?」
「免許ほしいんだよね」
「え?免許?車の?」凜が興味深そうに聞いてきた。
「違うよ。バイクの免許。うちの学校バイク通学できるから」
「へー、初めて知った」
「私もこないだ知ったばっかなんだけど」
「免許ってそんな簡単にとれんの?」
「教習と学科試験に受かれば誰でもとれるよ」
「年齢制限とかは?」
「車は十八だけど、バイクは中型なら十六で取れるみたい。私はまだ誕生日が来てないから、教習所に行くのは十月からだけど」
そうなんだ、と凜は言いながら、
「じゃあ私七月生まれだから、もう教習所行こうかな」と続けた。蓮は少しびっくりして、「え?、免許取るの?」と聞く。
「今決めた」と凜はいたずらっぽく笑った。
「バイクって、結構重いし危ないよ」
「知ってるよ。大きいバイクは無理だけど、中型ぐらいなら大丈夫だと思う。向こうで乗ったりして遊んでたから」と凜は事も無げに言った。
凜の言う向こうというのは、海外のことであろう。その向こうで、凜がどういった生活をしていたかを、蓮はまだほとんど知らない。凜もあまり自分からそのことを話そうとしないのは、話したくない理由があるのかもしれないと思い、蓮はあえて聞くことはしていなかった。
「一足先に免許取りますよ」と凜はえへへと笑う。
「そしたらバイクでどっか遊びいけるね」と蓮は答える。
カモメが風に乗って美しい弧を描きながら海の上を踊るように飛んでいた。
「今日も泊っていって大丈夫?」家に戻る途中で凜が聞いた。
「別にいいけど」と蓮は言って、二人はまた、スーパーで買い物をしていくことにした。食べ物を適当に選んで、飲み物のコーナーで蓮はついいつものくせで好きなカクテル缶をいれてしまい、あわてて棚に戻すと凜の視線を感じた。
「テストが終わったらね」と凜は笑っていた。
部屋に戻り、ご飯を食べ寝るまでの時間また勉強をした。
日曜日の朝は、平日と同じ時間に起きた。
軽い朝食をとると、学校の時程に合わせながら勉強と休憩を繰り返し、気づけはお昼になっていた。凜曰く、これもテスト対策のようなものらしい。
蓮が以前から感じていたことであるが、凜は何事もかなり合理的に済まそうとしている気がした。勉強を教えてもらうようになって、さらにそう強く感じるようになる。とにかく無駄をなくし、目的に向かって真っすぐ進もうとするのだ。そのことを凜に話すと、
「まあ、自分でも意識してそうしようとしてるんだけど、普段は結構無駄なことばっかりしてるんだよね。蓮に言ってることもほとんど人から聞いた受け売りだから、あんまり偉そうに言えないし」と凜は自嘲気味に話した。
「私もそんなふうにできたらいいな」蓮は正直な思いを言った。
「うーん。どうなんだろうね。でも、なんでもかんでも合理的に済ませればいいってもんじゃないと思う。実際に自分でやってみてその経験からいろいろ学んで、そこから必要じゃない部分を切っていける判断力がつくのも事実だと思うよ」
「なんかそれわかるかも。格闘技の練習とかでも、こんなことしても体壊すだけでしょってのあったけど、そこから何か学ぶことあった気がする」と蓮は昔を思い出した。
「そうだね。一見無駄に見えても、実はそれが何かの支えになるってあると思う。経験した人が合理的に済ますのと、経験のない人が浅い考えで最初からなんでも切り捨てるのは全然重みが違うよね」
「そうゆうヤツ結構いる」蓮は苦笑いした。
「口ばっかの奴って、年とってても経験の少ない薄っぺらい人が多い気がするな。まあ人によってだけど、年とか関係なく子供でも自然と適切な判断できる人もいるよね。そうゆう人の割合って少ないけど」
「私は凜がそうだと思う」と蓮は言う。
「いや、私なんか全然だよ。あーあっ、て思うことだらけで。で、気づいた時にはもうだいたい手遅れなんだよね」凜は一瞬寂し気な表情を見せた。
「その部分は私も同じかも。あーあっ、て思いながら中学終わっちゃったし。でも、そんな中でもすごく充実してた部分あったな」蓮は懐かしそうな顔になる。
「私、無駄って思えることでも、一生懸命やってる人って嫌いじゃないかも。でも、その頑張りを変に人にアピールするようなヤツは嫌いだし、頑張ってもそこから何も学ばないのはちょっとって思うけど。蓮みたく一人で悩んで努力して、結果に結びつけてるのは好意に値するね」凜は言う。
「何?コーイって?」蓮が尋ねる。
「好きってことよ」
「え、何それ、私のこと好きなの?」蓮は突然の告白にびっくりした。
「何?今更気づいたの?」凜は当然のような顔をする。
二人は声を上げて笑った。
凜は、お昼ごはんを食べたら帰るらしいので、蓮はサンドイッチを作った。
パンはいつも買っている安いものではなく、スーパーのベーカリーで焼いているおいしいものを買っていた。具材は蓮がいつも食べているものだが、凜はそれをとてもおいしいと言って食べてくれる。蓮はなんだかとてもうれしくなった。
食事の後、少し休むと凜は荷物をまとめ帰り支度をした。蓮は凜を駅まで送り、改札の手前で別れた。
「明日から頑張ろうね」凜は、えへへと笑って手を振ると帰って行った。
エスカレーターの手前で凜は振り返るとまた小さく手を振った。蓮もそれに返す。
そして凜の姿が見えなくなると踵を返しその場を去った。
〈何かお礼しないとな〉
蓮はなんとなくそう思った。というよりしたくなった。自分一人であったら、おそらくここまで濃い内容の勉強はできなかったであろう。
凜と出会って一か月も過ぎていない。
それにもかかわらず彼女は蓮にとってひどく大切な存在になっている気がしてならなかった。