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政治経済エッセイ

「国立大学だけど金儲けしろ」1か月の奇襲作戦で決まった「公立大学死刑法」

作者: 中将

筆者:

 今回はご覧いただきありがとうございます。


 僕は大学時代、真面目に通うことはしていましたね。

 ギリギリで入ったんで卒業はなんとかしようと。ただ内容はテストが終わると同時に忘れていましたけど(笑)。



質問者:

(意味ないじゃん……)


 今回の国立大学法人法の改正は「公立大学死刑法」とまで言われているらしいですけど――全く知りませんでした。



筆者:

 僕も、普通の一般の方よりかは政治に関心があるつもりでしたが、情けないことに実を言うと「安藤裕チャンネル」の動画で知りました。


 ですが、知れば知るほど問題が深刻だなという風に感じましたね。


 凄く簡単に言うと、


「公立大学の自治を脅かす法律が告知からたった1か月で成立した」


 ということです。



質問者:

 そんなに早く決まってしまったんですか……。



筆者:

 このような経緯だそうです。


・23年9月7日   

CSTI(内閣府 総合科学技術・イノベーション会議)の検討資料を通して、国立大学法人法の改正が検討されていると最初に発覚。


・9月22日~10月27日 

文科省が国立大学協会の各地区の支部会議等で改正案を順次説明。実態が徐々に大学関係者に浸透し始める。


・10月31日 

 政府は改正案を閣議決定


・11月17日 

 衆院法案可決(この瞬間までマスコミはほとんど報じることはなかった)


 と、こんな感じです。説明から閣議決定まで約1か月と言っていいので本当に奇襲的に決まったと言って良いでしょう。


 恐らくは、大学側からの反発を予測して電撃的に公表したのでしょうね。

 大学の教員らも最近、緊急集会を開くなどし、「大学の自治が脅かされる」などと反対の声を上げていたようです。



質問者:

 そんなにも反発されるような内容なんですか?



筆者:

 一番大きなところでは外部有識者も想定する3人以上の委員と学長でつくる運営方針会議の設置することになりました。(学長の上にある大学の最高意思決定機関)


会議で中期目標や予算について決定するのですが

 委員の選任については、文科相が承認した上で学長が任命するんですね。

 つまり、国が大きく関与することを意味します。


 しかも、国際卓越研究大(卓越大)候補の東北大のほか、東京大、京都大、大阪大、名古屋大と岐阜大を運営する東海国立大学機構の計5法人と大きなところばかり適用されます。


可決される際に大学の自治を尊重することなどを盛り込んだ付帯決議も可決されましたが、強制力はなく、“任意という名の強制”と言えます。



質問者:

 しかし、国が関与するとどうしてマズいんですか?



筆者:

 確かにこの法案だけ見るとあまり問題を感じないかもしれません。

 

 国はですねこれまで公立大学への予算をここ20年間でひたすら削り続けているんです。


 多過ぎる公務員を減らそうと2004年の国立大学法人化からことは始まりました。


 公立大学への運営費交付金は減らさない約束だったのですが、2009年まで毎年1%ずつ、2010年からは0.5%ずつ減らされていきました。

 2004年度の1兆2400億円から徐々に減り、2023年度は13%減の1兆780億円になってしまいました。


 さらにこの少なくなっていく運営費交付金を巡って“奪い合い”となりました。

 2013年からは前年度の実績値が目標に向けて着実に進捗しているかを,それぞれ 4段階で評価し,運営費交付金が分配されるようになったのです。 


 この時から「大学運営」から「株式会社のような経営へ」と移行していってしまったのです。



質問者:

 しかし、大学同士での競争があることは良い事ではないのですか?



筆者:

 ところが、大学の「研究力」というのは一朝一夕に評価できるものではないんです。


 そのためにこの運営交付金の“評価方法”というのが“会社のように利益”でほとんど評価されてしまっているのです。


 そのことから「研究力のある大学」から「稼げる大学」へ変貌して言っているのです。


 実際に最近の政府策定の計画には公立大学にも拘らず知的財産収入やベンチャー企業の増加といった目標も掲げられています。


 今回の法案では文科相の認可が必要だった土地の貸し付けにも触れ、届け出だけで済むように緩和しています。

 これまで資金の獲得に疲弊し、科学技術のパフォーマンスは下がっているのにさらに研究能力低下してしまうことが想定されます。


 このことから「公立大学への死刑宣告」とまで言われているのです。



質問者:

 確かに会社は利益が大事ですけど教育現場では違いますよね……。



筆者:

 まぁ、会社も短期の利益ばかり追い求めると人員カットラッシュになるので危険ですけどね。


 ただ、学校教育が目先の金の利益のみを求めることはあってはならないと思います。

 お金がすぐに稼げる研究ばかりでは無いからです。


 今回の改正により「政府の認定した委員」が「短期的な数字・評価」を上げるためにどんどん金儲けだけを考えていくことも予想されます。

 政財界の人間が入ることも考えられますからね。


 短期的な利益を稼ぐために「学問の多様性喪失」や「学生の教育環境悪化」も引き起こし、日本の大学教育全体を崩壊させていくことにも繋がっていくのです。



質問者:

 いつも筆者さんがおっしゃっている「短期的な綺麗なお題目」ということですか……。



筆者:

 悲しいことにそうなります。


 現状日本人ノーベル賞は国公立大学か海外の大学出身です。

 偏差値が高いこともあると思うんですが、早慶などの受賞者もいないことから、

 「落ち着いて研究できる環境」が重要だったと僕は見ています。


 これから更に教授が短期的な競争に晒された状況だと研究に専念できなくなることが予想されています。


 このような問題は大半の国民が問題点に気付くことすらないまま、「大学の自治」に実質的な死刑宣告が下されてしまうと、

 良い学生さんは海外に活路を見出し、人材の海外流出が進んでいくことでしょう。


 日本国内で「どんぐりの背比べ」をしていないで世界規模での研究環境の比較をしなくてはいけないと思っています。



質問者:

 確かに日本内で争っているうちに海外に逃げられて海外の大学や会社で貢献されたら本当に笑えませんね……。



筆者:

 一方で国立大学内でも格差が広がっているんですね。


 今回のような規模の大きい一流の国立大学は運営費交付金が潤沢に配分されますが、

その他の競争に敗北した国立大学は深刻な経営難となっています。


 例えば、東京芸術大は23年2月、電気代の高騰による経費削減を進めた結果、音楽学部の古くなったピアノ5台を撤去しました。


 金沢大は23年10月、キャンパス内のトイレ改修を目的に寄付を募る、異例のクラウドファンディングを始めるなど窮状を見せているのです。



質問者:

 電気代の高騰分やトイレ改修代ぐらい補填してあげろよって思いますね……。



筆者:

 完全競争の新自由主義の末路だと思います。


 確かに大学間のある程度の競争は必要かもしれないですが、最低限の設備の費用・研究費ぐらい気前よく出せないものかな? と思ってしまいます。


 また、正社員をカットして非常勤にした研究者を取り巻く環境も厳しいものがあります。


 国公私立大など847機関を対象とした国の調査では、23年3月末までに有期契約の雇用期間が通算10年を迎えた研究者ら約1万2400人のうち、定年退職以外で雇用契約を打ち切られた方が約2千人いたことが分かっています。


 このようにコストカットのために人材は次々と切り捨てられていくのです。


 こんなコストカットでボロボロになった大学は誰も行きません。

有名な公立大学に人を集め、その上で政府が短期の利益を指示して衰退させる

「教育現場破壊プロジェクト」だと言えます。



質問者:

 私も調べてみましたが――「第二の学術会議問題」とまで言われていますね。



筆者:

 そうですね。学術会議も当時の菅総理大臣が任命拒否するなど教育への介入は深刻です。

 

 ただし、学術会議はGHQが打ち出した「自虐史観」などを依然として植え付けてきた罪もあるので、賛否はあると思いますが「学術会議側にも問題があった」と僕は評価していますけどね。


 だからと言って大学の自治とは切り離して考えていくべきだとは思います。


 いずれにせよ、国の政策を素直に聞いてくれる「大人しい大学」とそれに通う「おとなしい国民」を量産するシステムと言えると思います。



質問者:

 しかし、こんなに問題な法案なのに全く話題になっていませんね……。



筆者:

 僕も見逃してしまっていたので情けない限りなのですが、

 大抵、閣議決定から入る法案はゴリ押ししてくる可能性が高いので、注目していく必要があると思いますね。


 マスコミももっと問題にしていかなくてはいけません。

 完全に政府広報機関と化してしまっていて政府の都合の悪いことは報道してくれないのです。


 マスコミが報道している政治家のスキャンダルは大抵が地検が捜査に入ったなど「司法が違法を認めた」レベルです。それ以外は“無かったこと”にされてしまっているのです。



質問者:

 気づいた人から言っていかないと自由が無くなってしまうかもしれないのですね……。



筆者:

 そうなりますね。僕は「大人しくない国民」なんで言論弾圧で消されない限り発信を続けたいと思いますね。

 

 一応参院通過しないと完全には成立したことにはなりませんので、理論的にはまだ間に合うと言えば間に合いますね(「ねじれ国会」以外の状況で衆院通過して参院で否決ということはまずないですがね)。


 ということで、今回はご覧くださりありがとうございました。

 僕は時事問題や政治・経済、マスコミの問題を中心にエッセイを書いていますので、よろしければこれからも注目していただければと思います。

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