拝啓、初音ミク様
あなたに私の想いを伝えることは初めてのことです。拙い言葉かとは思いますが、どうか最後まで読んでいただけると幸いです。
初めてあなたを知ったのはもう何十年も前のことになりますね。とあるレストランの店内放送で聴いたあなたの声に、私はひと聴き惚れをしました。
あなたの存在を知り、存在しないあなたから無数に発されるその音に受けた衝撃は、今でもよく覚えています。
緑の長い髪の毛と華奢な体。可愛らしい見た目のあなたから産まれるその声は初めて聴くもので、耳をふさぎたくなる甲高さに不快を覚えたりもしました。
けれど、私は光にたかる虫のように、歪で不安定なのに綺麗なあなたに無意識に吸い寄せられたのです。
沢山のあなたの声を聴きました。
光速で流れるその声を、透明で聞こえないほどに高いその声を、電子音と共に合わさる言葉にならないその声を、転がって傷だらけのその声を、貪るように聴いたものです。
私が聞き始めた時、世間はあなたの声に批判的でしたね。
機械でつくられた声で歌うなんて歌では無い、声に感情がないから聞きたくない、そんな言葉が飛び交っていたこと、覚えていますか?
それでも世間がなにを言おうともあなたの声を聴いていたのは、私があなたの声と音に、何度も救われてきたからです。
イヤホンから流れるあなたの声に背中を押され、時にはあなたの声すらも盾にして世界と向き合ってきました。
存在しないあなたから、存在していくことの意味を教わりました。
そしてひとりぼっちだった私は、1人ではないと気がついたのです。
私と同じように沢山の人があなたの声に魅了され、熱狂してきました。
あなたがいたからこそ生まれた世界が沢山あります。出会えた人が沢山います。
今では世界中にあなたの声が響き渡っています。
テレビやラジオ、動画やゲーム、様々なコンテンツからあなたの声を聞くことが出来る。
あなたがいたから生まれたスターも沢山いるんですよ?
世界があなたの声で満ちていくなんて、想像もしていませんでした。
あなたが歌い続けてくれたから、見ることができた世界です。
これを歌に出来たら、どれだけ良いでしょう。
私の言葉を、あなたの声にして届けることが出来たら、どれだけ素晴らしいでしょうか。
でも、私にはそんな技術も才能もなにも持ち合わせていません。
あるのは言葉だけ。
あなたと同じ、言葉だけです。
なにもない私だけれど、いつかそれを言葉に出来たらと思っていました。
今日、あなたの誕生日にこの想いを言葉に出来たこと、とても誇らしいです。
どうかこれから先、限りのない命で唯一無二なあなたの歌声を世界に、宇宙に響かせ続けてください。
いつまでも、あなたは私の歌姫です。
16歳のお誕生日おめでとう、初音ミク。
敬具
追伸
いつか会いに行くので、待っていてください。
16歳って、世界がミクに追いついたってことだね。
これからも楽しみだね。




