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爆速再登場ヨナスくん

乙女ゲームの悪役令嬢に転生した。それも、一度は悪役令嬢として死に追いやられてから、再び子供の姿へと戻った。


どんな神の悪戯か、それとも何者かの策略なのか。この世界は、剣と魔法のなんでもありのファンタジー世界だ。どんな魂胆があっても不思議じゃない。単純にやり直せられることを喜ぶことは出来なかった。


なんてったて、この悪役令嬢アリサ・フォン・ガートネットは、共通ルートで死が決まっている絶体絶命の運命なのだから。


Xデーは18歳の春。王立魔法学校の卒業パーティだ。主人公のマリアを苛めにいじめた私は、王国の裏で蠢く策謀の隠れ蓑として利用され、罪を擦り付けられて殺されてしまう。なんとかして、それを回避しなくては。


子供の姿に戻ってからというもの、私は日々悶悶とどうすれば、殺されずに済むかを考えていた。そして、いくつかの方向性を考えた。


一つ、マリアを苛めない。そもそもいじめをしていたからこそ隠れ蓑にされたのだ。品行方正に生きていけば、罪を擦り付けられないはず。


二つ、そもそもアーノルドの婚約者にならない。未来を知った今、彼に恋心を抱くことはないだろうが、火種は少ない方が良い。それに、婚約者である私が邪魔で狙われた可能性もある。厄介ごとは避けるに限る。もちろん、アーノルドだけに限らず、その他攻略対象者にも近寄らない。触らぬ神にたたりなし。


三つ、魔法の腕を磨く。チートぞろいの攻略者たちに対抗するには、パワーが必要。日々の努力に勝るものなし。


「ふふふ、完璧だわ」


つい口に出して自画自賛してしまう。非の打ち所がないこの三か条を守りさえすれば、私は平穏な日々が送れるはず。早速、日課に加えた魔法の訓練を密かに始めていると、馬車の音が外から聞こえてきた。


あれ? 裏門の方にお客様なんて珍しいな。


裏門は私用のための出入り口だ。正門とは違って、出入りできる人間が限られる。使用人用の勝手口は別にあるので、裏門を使うのは公爵家やその親族、友人に留まる。公式な客人なら、正門を訪れるはずなので、一体誰が来たのかと不思議がっていると、ドアが優しくノックされた。


扉を開けたのはメイドのリリーだった。若くて活発な彼女は、メイドではあるが、私にとっては友人のような存在だった。リリーは急いでやってきたらしく、息を切らしていた。


「お嬢様、ヨナス様がやって来られましたよ! 王都へ戻られる前に寄ってくださったんです」


ヨナスという名前に喉がヒュッと鳴った。色濃く残る以前の記憶の中で、一際異彩を放って焼き付いた最期の瞬間。記憶が戻ったいまなら分かる。私を隠れ蓑に、悪事を働く真の黒幕たちの一人の名前だった。

前世で私にすべての罪を着せた男が、すぐそばまで迫っている!


「良かったですね!」

「良かないわよ!」


反射的にリリーの言葉を否定してしまった。リリーは面食らった顔をしていた。


「どうしたのですか? 去年のクリスマスにヨナス様がいらしたときは大はしゃぎだったじゃないですか。帰られた後はへそを曲げられて、大変だったのに」

「え、いや。その、とにかく! ヨナスには会いたくないの!」

「折角いらしてくださったんですよ。会わないなんて、失礼です! ほら、行きますよ」

「やだやだやだ、やだーーーー!」


駄々をこねて拒否するものの、子供の力では叶わず、抵抗も虚しくずるずると引きずられていく。


ただでさえ、攻略対象者には近寄らないと誓ったのに、よりにもよって悪役4人組、4黒の一人、ヨナスと会うだって? まだ、心の準備も何もできてない。こんな子供の姿でヨナスに会うなんて、RPGで例えるならレベル1で中ボスに挑むようなもの。無謀にもほどがある!


全力で逆らったが、ついにはリリーに叱られ、泣く泣く連行されることになった。

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