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真打登場? 遠ざかる理想の未来!

アーノルドの後を追い、王宮の外に出る。彼だけが知っていたはずの抜け道を、ゲームのテキストで知っていた私は、難なく続くことができた。


王都の城下町は静まり返っていた。深夜2時、社交会と無縁の市民の彼らはすでに夢の中にいる。


「待って! ……殿下!」

「追いかけてこないでくれ!もう散々だ!」


息が切れ始め、限界を感じた私は精一杯彼の名を呼んだ。無視されることも予想していたが、お人好しの第一王子はわざわざ返事をする。


「落ち着いて!大丈夫ですから!」

「俺は、信じない。あいつの言うことなんて信じてない!」

「私も、ヨナスのやり方には納得いってないです!」


私の言葉にアーノルドが驚いて足を止める。昔の私ならばヨナスがどんな悪事を働こうと、それを否定することは無かっただろう。

かつてのアリサとしての記憶しか無かった頃は、ヨナスは何もかもが優秀で雲の上にいるような存在だった。


どんな傲慢な振る舞いも、高位貴族の特権だと思ってた。

他人が傷つくのは、弱いその人が悪いのだと思っていた。


今は、そんな事は違うと分かる。


人を傷つけない強さがあると知っている。


前世の私は気の弱い人間だった。いつも怯えてばかりで、人の目が気になって何をやってもうまくいかなかった。

学校にも行けなくなって、1人閉じこもって、アニメや漫画、そしてゲームにのめり込んだ。


孤独な私を助けてくれたのは、乙女ゲームの優しいキャラクターたちだった。私は彼らの、アーノルドたちの他人を犠牲にしない優しさに救われたのだ。


そうだ。あんな色んな人を傷付けるやり方をしなくてももっと良い方法があったはずだ。アーノルドに本当のことを全部言って、協力してもらうだけで良かったんだ。


泣いた跡を隠すために、乱暴に袖口で顔を拭ったあと、ゆっくりとアーノルドがこちらへ振り返った。目が少し腫れている。


そしておずおずと口を開いた。


「……君はガートネットの人間だろ。ヨナスのやる事、否定して大丈夫なのか?」


鋭い指摘に一瞬言葉が詰まる。私は公爵令嬢ではあるが、家督を継ぐのはヨナスと決まっている。彼との関係が悪化すれば立場が危ういのは目に見えている。


でも、私はそれでもただ彼の言いなりにはなれない。

私は意志を固めて、自分が正しいと思うことを口にした。


「大丈夫……とは言えないですけど、でも"私"はヨナスが間違ってると思うんです」


アーノルドが目を見開く。そして、苦笑いではあるものの力無く笑顔を浮かべた。


「君には、今日驚かされてばっかりだ」

「あはは……」


私も同じく苦笑いを返す。

アーノルドの強張っていた肩から力が抜けた。


少し歩こう。アーノルドが静かに呟いた。私はそれに頷き、静まった城下町の石畳を歩いていく。

靴が石畳にあたる微かに固い感触を感じながら、ポツポツとアーノルドは話し始めた。


「きっと、俺は自信がないんだ」


その言葉は私には予想外のものだった。いつも明るく仲間に囲まれた彼からそんな弱音が出てくるとは思わなかった。


けれどアーノルドの口調は、分かりきった事を確認するような平坦なものだった。むしろ驚いた私に対して、目をぱちくりとしていた。


「そんなに意外だったか……? こんな事、見透かされているのだと思っていた」


自虐的に笑った後、彼はさらに続けた。


「……ずっと、自分がどう進むべきなのか分からない。正しく、優しく、賢く……なるべき自分がどんな人間なのかは分かるけど、自分がどうやったらそうなれるのか分からないんだ。でも、なるべきと想像する姿の途中に、ヨナスやイヴァンの姿がある。結局、俺の苦手意識はきっと劣等感なんだ。王になる人間なのに、イヴァンを押し除けてつくはずの玉座なのに、ずっとずっと迷いっぱなしで。そんな自分を知られるのが怖かった」


それはアリサが考えた事の無かったアーノルドの弱さだった。

公爵令嬢として甘やかされ、傲慢に育った彼女の前で、アーノルドは完璧な王子様を演じていた。婚約者としてそれを誇りに思い、彼が取り繕って作った姿に心酔した。


改めて思った。婚約破棄もされるはずだ。

アリサはアーノルドに寄り添えていなかったのだから。


「ヨナスの言葉を信じないと言いながら、義母様やイヴァンを信じられない、自分が嫌だった。ヨナスの言葉を否定できない弱い自分がいる事を、皆んなに見透かされている気がして、怖かった」


彼の弱音に、私は小さくうなづいた。

せめて少しでも彼の気持ちが和らぐように、その気持ちに真摯に向き合いたかった。


けれど真剣な顔をして話を聞いていた私に対して、アーノルドは意外にも小さく吹き出し、何故かそのまま堪え切れないといったように笑い続けた。


事態を飲み込めないまま、私が固まっていると、ごめんごめんと言いながら今度は笑い泣きした涙を拭っていた。


「あんまりにも真面目にきいてくれてるもんだから。……こんな話、笑われるか軽蔑されるしか無いと思ってた。不思議だ。なんだか心が軽い」


何も変わっていないのになとアーノルドは付け加えると、清々しい表情で伸びを始めた。なんだか肩透かしを喰らった気持ちで、瞬きをする。


いきなり元気になって不思議なのはこちらの方だ。

けれどいつもの彼の調子に戻った安堵が優った。


胸を撫で下ろし、彼に話しかけようとして、ふと何かが気に掛かって言葉がつっかえた。


……あれ、さっきの言葉、なにか聞き覚えがある。

そう、ゲームのシナリオの中、同じ声で似た台詞を耳にした。


さっきの話、本来ならアーノルドの立場や境遇は隠されながら語られるはずだが、……主人公であるマリアへ彼が話すはずの内容では無かっただろうか?


じっとりと、暑くも無いのに汗が滲む。


ジャリ、と地面を踏む音が聞こえた。建物の影から、子供の人影が出てくる。


私は急いであたりを見渡した。

スチルで見たことがある景色、いや背景。


両親を亡くして遠い親戚の元、召使のような生活を強いられていたマリアが、母親との記憶にある星空を求めて、親戚一家に見つからないように深夜に家を出て、アーノルドに出会う、その日の夜空に酷似している。


振り向けば、黒髪の可愛らしい少女と目が合った。人がいると思っていなかったのか、曲がり角から出て来たばかりの彼女は意外そうな顔をしている。


狙い通り、ではある。

どんどん私の希望からは離れていっているけれど。

最近忙しくてサボってました!すみません…!!

これからリアルもひと段落つく……はず!

ゆっくりかもですが、隙を見て更新していきます!

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