共通ルートで死ぬ悪役令嬢ですが背中を向けられない味方しかいません
「公爵令嬢、アリサ・フォン・ガートネット! 私は君との婚約を破棄する!」
高らかに、この国の第一王子、アーノルドが宣言した。それは、私、アリサ・フォン・ガートネットには死刑宣告に近しいものだった。
王立魔法学校の卒業パーティの場で、私は婚約者であるアーノルドから、婚約破棄を一方的に宣言されていた。
「君は、マリアに対して、嫌がらせの範疇を超える非道な行いをしていたことを認めるね」
冷たい目でアーノルドはこちらを一瞥する。王子の言葉につい歯噛みする。彼の後ろに守られるように佇んでいる小娘、マリアは怯えたようにこちらを見ていた。
彼女は平民の分際で、王子に色目を使った。私のただでさえ穏やかでなかった心中に、嫉妬の炎が燃え上がるのが分かった。
「平民のくせに、軽々しく王族に口をきいて! さらに彼を誑かした! 断罪されるべきは彼女であるはずでしょう!」
私は王子へ異を唱えた。しかし、それはこの場をさらに凍り付かせ、周囲は冷たい目を渡しへ向けた。
「まだ、自分の立場が理解できないのか」
騎士団長の息子、バートが冷ややかに進み出た。
「君は自分がしたことが分かっていない。彼女の命を狙うだけに飽き足らず、数多くの生徒を危険にさらした。それも、自分の手を汚さずに。それなのに、反省の一つもしていないのか?」
精悍な男に睨みつけられ、つい怖気づく。しかし、私は見に覚えのない言葉に目を見開いた。
「い、命を狙った? それに、数多くの生徒を危険にさらしたって……」
「とぼけるな! 暗殺者を差し向けたり、井戸へ毒を入れたりしただろう! 彼女の家族を中傷し、故郷で孤立させただろう! 盗賊を家へ差し向けもしたよな! 数多くの悪事に手を染めただろう。お前のが毒を入れた井戸の水を飲んで命を落とした者、彼女を庇い怪我をした者もいる。この悪女め!」
バードは私の戸惑った様子を演技だと決めつけ、憤った。しかし、その口にするどの行為も身に覚えの無いものだった。
私がしてきたことと言えば、彼女個人への攻撃だけだ。取り巻きを使って陰口を言い、物を隠したり、日常的な嫌がらせから、階段から突き落としたりと、確かに冗談では済まされないこともしてきた。けれども、彼が口にしたような、凄まじいことはしていない。
「ちょ、ちょっと、な、何それ? 何かの間違いよ! わ、私、本当にそんなことしてない!」
「これ以上、見苦しい姿をみせないでくれ」
後ろから、乱暴に腕を掴まれる。伯爵令息にして幼馴染のフィンが心底軽蔑した眼差しで、私を取り押さえていた。
「う、嘘! やめて! 私に何する気! 私は公爵令嬢よ! 放しなさい!」
「君のした行いは君の死でしか償えない。死人も怪我人も出てる。頼むよ。これ以上、僕に君を軽蔑させないでくれ」
フィンは静かに、しかし確かに怒りを抱いた声音で、そう耳打ちした。
なんで、私がこんな目に。私は公爵令嬢。もとはと言えば、身分もわきまえずに王子へ色目を使ったあの女がいけないのに。どうして、誰も私の味方になってくれないの。そんなこと、私がするわけないって、どうして言ってくれないの!
怒りと恐怖に身を震わせながら、アーノルドを見ると、その目は静かに私を糾弾していた。婚約者であった情も彼にはないようだった。私は、彼を愛していたのに。
フィンが私を取り押さえ、バードが私を断罪するために剣を抜く。その動きに迷いはない。私は助けを求めて周囲を見るが、誰も彼もがまるでそうされるのが当然であるかのように、静かに、冷たく、その行く末を見守っていた。
ふと、王子の傍にいた一人と目があった。マリアではない。この場にいる、唯一の私の身内、血縁者、従兄のヨナス・フォン・ガートネットだ。今まさに、従妹が命を落そうとしているのに、眉一つ動かそうとしない。不自然なその様子に、私は王子にもマリアにも目もくれず、彼を見つめた。
ヨナスはその視線に気づき、嘲るように口の端をあげた。
思い出した…。そうだ、私は!
無慈悲にも、剣が振り下ろされる。電源を切ったように意識が消えた。
連載は不得意なので、目標完結でぼちぼち書いてくぞー!
習作だと思って優しく見てね。
下書きの整理供養も兼ねているので…(先日間違って消したデータを思い出しながら)




