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『刑事と泥棒』『日の出』
***『刑事と泥棒』***
「そこまでだ」
刑事が泥棒に銃を突き付ける。
「盗んだ宝石を床に置け」
「世間を騒がせた俺も、ここまでか」
泥棒が宝石を置く。
「いや、終わりじゃないさ」
ドンッ! 銃声が響き、泥棒が倒れる。
それから数年。世間を騒がせた泥棒と宝石の行方は分かっていない。
ただ1人、宝石を手にした元刑事を除いて。
***『日の出』***
寒い。足が動かない。この調子では日の出までに山頂に着けない。
「平気か」
「うん」
彼の手を掴んで進む。
「あっ」
地平線から日が昇った。
「ごめん。私のせいで。山頂で見たいと言っていたのに」
「山頂で見たかったんじゃない。君と見たかったんだ」
彼が私に唇を重ね、光に包まれる。
もう寒くなかった。