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『聞いて欲しい』『100万円あげる』
***『聞いて欲しい』***
「ねえ聞いて。新しい服を着て出かけたらタグが付いたままだったの。恥ずかし過ぎる」
やれやれ。
「仕方がない。再発防止策を考えてやろう」
「いらない。話したかっただけだから」
「それはないだろう。俺の話も聞いてくれよ」
「猫に聞いてもらえば?」
猫を見る。
なんだその「やれやれ」みたいな顔は。
***『100万円あげる』***
「100万円あげる」
札束を持ったおじさんが私に話しかけた。
「100万円? いや、受け取れません」
反射的に断ってしまう。それが正しい気がした。
「じゃあ、隣の君にあげる」
隣にいた人がお金を受け取る。
え、私の100万円。
「100万円いる?」
おじさんが再び私に話しかけた。
「欲しいです」
「もうないよ」