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勇者の系譜~俺に勇者のスキルがなくとも~  作者: アオト
第四章 クローネン王国
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第九十九話 突入開始

 スケルトン達の集団に突入しようとする瞬間に俺達の陣形に青い膜が覆い始める。


 その膜にスケルトンが触れると次々と砕け散って行くが、後ろを振り返ると再び復活している個体もいるので完全には倒しきれていない様だが、それでも速度を緩めずに進む事が出来る。


「副隊長、右に見えるリッチはネクロマンサーです」


「いいねシリノ君、正確な場所をヘイデンに伝えてくれよ」


 シリノは早速ネクロマンサーを発見しそこに向かうように指示を出したが、更に強力なネクロマンサーを発見したので再び進路を変えて進んで行く。


「あの中のどいつがネクロマンサーなんだ」


 ドニがシリノに尋ねていると、俺達に気がついたリッチの部隊が様々な魔法をぶつけてくるが、ヘイデンのスキルが全てを反射して奴らを自滅へと追いやっている。


「胸に紫の線が入っている服の奴がそうです」


「あいよ、見えたぞ、じゃあ掴まえるか」


 ドニが手を翳すと狙っていたリッチを包み込むかのように箱が何処からか現れる。

 その中にリッチが入ると箱ごと姿を消してしまった。


「確保したぞ、次はどこだ」


「左にかなり強力なデュラハンが来ますがどうしますか」


「ネクロマンサー以外は気にしなくていい」


 迫って来るデュラハンを無視して、もう一体確保すると目の前の膜が赤色に変化し始めた。


「副隊長、もうすぐ限界です。撤退しましょう」


「よし分かった。みんな、もっとコランタンの側に寄れ」


 未だに膜は敵の攻撃を弾き返し、動きを止めた俺達の周りにはスケルトンの破片で覆われている。

 膜の色はどんどん薄くなるが、地面からは光の柱が現れ、大きさを増していく。


「危ない」


 膜から飛び出したルトロはヘイデンに目掛けて投げられた大きな槍をその身体で受け止めている。

 更にはルトロの頭上に骨の塊が落ちて来た。


 俺も飛び出してルトロを抱きしめるような形になりながら転がり、骨の直撃を避ける。

 その攻撃をしてきたのは肉体が半分以上腐っているドラゴンゾンビとその背中に器用に跨っている巨人族のデュラハンで、俺達の眼前に姿を現した。


「二人とも、早く戻って…………」


 コランタンの叫びのような声が聞こえたので振り返ったが、丁度光の柱が消える瞬間で、全てが暗闇に戻った時にはみんなの姿はそこには無かった。



 ……敵陣深くにアルとルトロは取り残されてしまったが、シリノ達は無事にカバラの街で待っていたロミルダの前に戻る事が出来た。


「ちょっと、副隊長がいないじゃない、どうしたの」


「副隊長とアル君はまだ向こうだ。発動している最中だったのでどうにも出来なかった」


 コランタンは悔しそうに南の方向を見ながら呟いた。

 直ぐにでも助けに行きたいが正確な場所が分からないので彼のスキルである「転移」は使えない。


「俺のスキルで防げない攻撃が来たから副隊長は飛び出してしまったんだ。全部俺のせいだ」


「あの、そんな事を言っていないでネクロマンサーを出して下さいよ、悔やんでいる時間がもったいないですよ」


 シリノは勿論二人の事を心配しているが、その二人を助けるためにはネクロマンサーの情報が大事なように感じている。


「そうだな、嘆いている時間何て無いな、ドニ、奴らを出してくれ」


 ドニが布袋から小さな箱を出すと、その二つの箱を囲むように立つ。


「まずは一匹出すぞ」


 ドニが手を翳すと小さな箱は大きくなっていき、元の大きさに戻った途端に箱は消えリッチが姿を現した。

 直ぐにガストーネは両腕を光の剣で粉砕し、喉元に剣先を突きつけるとロミルダは肩を軽く叩いてガストーネをどかし、リッチの暗い目を見ながら話掛けた。


 リッチはロミルダの質問に素直に答え始め、全ての情報を聞き出した後で最後の質問をした。


「それであんたはどうしたいんだ」


「そうだな、もっとドワーフのグールを増やして、苦しみながら戦うドワーフの姿を楽しみたいな。なぁ面白いだろ、所詮魂なんてものは無いのにそれでも戦うのをためらって……」


 ヘイデンが最後まで話を聞かずに脳天から叩き斬った。

 もう一体は箱のままジーモンの所に連れて行き、同じように質問すると、その内容は全く一緒だったが最後の答えだけは違った。


「私はね、命令されたからドワーフをグール化したんですよ、あなた方と同じで上の命令には逆らえないんだ。本当は森の中で暮らしたかったのに何でここに居るんですかね」


 ロミルダは苦渋の表情を浮かべてリッチを見ているジーモンを横目にしながら更に質問を続けた。


「お前はどれ位グールを操作できるんだ」


「動かすだけなら千体で、思い通りに動かすとなればその半分ですね、まぁ生前に強かった者がいればもっと減りますがね」


 ロミルダはジーモンに耳打ちして、それにジーモンは頷いた。


「今、お前が操っているグールを全て解除すれば捕虜として扱ってやるがどうする」


「それは願っても無い事ですけど、変な箱に入れられた時に魔力を遮断されてしまったので、私の支配下にあったグールは全て死体に戻っていますぜ」


「どうやってそれを証明……」


 ジーモンはそのリッチに詰め寄るが、ロミルダに肩を掴まれて冷静さを取り戻す。

 ロミルダが質問をする限り、それは本当の事だと思い出したからだ。


 その時、一人のドワーフの兵士が飛び込んでくる。


「大変です。大型のドラゴンゾンビが此方に接近しています」


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