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勇者の系譜~俺に勇者のスキルがなくとも~  作者: アオト
第四章 クローネン王国
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第九十八話 突入作戦

ルトロは失礼に当たらないように丁寧に話始め、内容は、正確に核を壊せない矢や投石ではスケルトンに対してあまり意味は無いので、城門の外で戦った方が良いと言う事と、グールは既に此処に迫っていると言う事だ。


「何だと後方にいるグールも全て来たと言うのか」


「それは分かりません。ただグールがいるとなればネクロマンサーも近くにいるはずですので、私達だけで少し確保してきますよ」


「君達だけでか、それは無謀では無いのかね」


 ただでさえ敵の数は五千は確認されていて、それにグールも来たと言うのであれば、あまりにも無謀だと思っているのがその表情に表れている。


「確実に確保出来るとは思っていませんが、それでも情報は持ち帰るつもりです。出来れば陽動はお願いしたいのですが」


「それ位はやらせてもらうが、どうすればいいのだ」


「正門からの攻撃を強化して下さい。タイミングはお任せしますので私達の部隊を上手く使って下さい」


 更に細かい打ち合わせが終わり、配置場所では司令官の一人であるヤロミール司令官とルトロは打ち合わせを始めた。

 ルトロが敵陣に入って行くのでその間だけヤロミール司令官がこの救援部隊をまとめることになった。


 司令官は直ぐに騎士達を城門に集合させ、ドワーフの有志も含めた千人が正門から打って出る。

 あまり深くは攻め込まないで街の近くで戦闘を行い、別部隊の存在を気付かせないようにする。


 俺もその別部隊の一員に選ばれたので、自然と気分が高揚してくる。

 魔族に囲まれて思いきり力を出す事が出来るので俺にとってはこの上ない状況だ。


「楽しそうだねアル君、だけど俺の指示に従ってくれよ、興奮して一人になったら危ないからね」


「勿論指示に従いますよ、けどどうやって此処に戻って来るのですか」


「行けるところまで突き進んで消えるんだ。ただそれだけだよ」


 ルトロの説明は意味が分からなかったので、どう答えていいのか言葉に詰まってしまったが、それを見かねたロミルダが分かりやすく説明をしてくれた。

 

 突撃作戦は東門から闇夜に紛れて大幅に敵陣を迂回してルトロの判断した場所から突入する。

 ネクロマンサーの場所は誰も知らないが、全てがルトロの状況判断に掛かっている。


 俺達は矢の形なって陣形を組み、頂点は体格のいいヘイデンが担当し、二列目はシリノとドニがそして三列目に俺とルトロでその中に隠れるようにコランタンが配置に付く。

 決して楽な突撃作戦ではないが俺は魔族と戦えるというだけで興奮してくるが、気持ちが高まるにつれて俺の心は静まっていく。


 シリノはかなり緊張していて、武者震いが斜め後ろにいる俺にも伝わってきている。

 そこにバルテル中隊長が配置場所からやって来た。


「大丈夫か、お前達はいきなり大役を背負ったな、いいか決して無理はするなよ」


「危なそうだったらアルに助けて貰いますよ」


「どうなるか分かりませんが全力を出し切ります」


「そうか、お前らが突入するまで気づかれないようにこっちはしっかりとやるからな、死なないで帰って来いよ」


 バルテル中隊長は俺達の肩を叩いて再び正門に向かって行く、すると少ししてから街の中に合図の音が鳴り響いた。


 俺達は東門を抜け更に東に進み、頃合いを見て南に進路を変えていく。

 まだ作戦が始まったばかりだと言うのに、シリノからかなりの緊張が伝わって来るが、俺自身の感覚も無くなって来ているので、俺も本来ならかなり緊張しているのだろう。


「シリノ君、深く深呼吸するんだ。そのままだと視界が狭まってしまうよ、君がちゃんと広い視野を持ってくれないと作戦の半分は失敗してしまうんだからね」


 ルトロは緊張を和らげようとしたつもりなのだが、それだと余計にプレッシャーを与えていることに気が付いていないので、見かねたヘイデンが声を掛けた。


「副隊長、言い方が下手ですよ、いいかいシリノ君、分かっていると思うが俺のスキルで殆どの敵の攻撃は弾き返せるんだ。俺のスキルを信じると共に自分のスキルを信じるんだ。いいね」


「有難うございます。ヘイデンさんを信じていない訳では無いのですが、実戦は初めてなのでそのせいで緊張してるんですよ」


「初陣がこれか、副隊長、いきなりこれは無理がありませんか」


「いいんだよ、もう引き返せないしな、なぁシリノ君」


 ルトロは豪快に笑いだしたが、シリノは苦笑いをするだけで精一杯だ。

 多分、シリノの顔色は悪くなっているはずだが、もうこの暗闇では確認できない。


 正門の方では激しい戦闘が行われているようでさ、ずっと魔法による光や火と騒がしい位の喧騒が聞こえてくる。

 暫く道なき道を進み、小高い丘の上から敵の部隊を見下ろした。


「さぁ俺達も行ってみようか」


「副隊長、何処から中に入りますか、霧が深い場所かそれとも敵が集まっている場所か」


「そうだな、気にが深い所だとシリノ君を連れて来た意味が無いからな、まぁあそこの敵が固まっている場所に行くか」


 ヘイデンは迷うことなく丘から突入を開始する。


「みんな、絶対に俺のスキルの幕から出るなよ、幕の色が変わったら直ぐにコランタンに任せるからな」


「あぁ安全にロミルダの元に帰してやるよ」


 もう目の前には何も警戒していないスケルトンが見えてきた。

 


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