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勇者の系譜~俺に勇者のスキルがなくとも~  作者: アオト
第四章 クローネン王国
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第九十七話 カバラの街

 カバラの街に向かう狭い山道を先導してくれているドワーフの騎馬隊は何事もない様に軽快に進んで行くが、第二援軍隊の中に馬に乗り慣れていない者が混じっているのでどうしても隊列が間延びしたような形になってしまう。


 初めは後ろを気遣ってくれたドワーフ達も口には決して出さないがこの状況を好ましく思っていないようだ。

 敵がいつカバラの街に到着するかもしれないので一刻も早く街に辿り着きたいのだろう。

 ルトロも同じように思ったのか、まだ山道に入ったばかりなのにこの状況を変えるべく中程にいるオイゲン司令官を呼び寄せた。


「どうかなさいましたかな」


「司令官、このまま後ろのペースに合わせていたら時間を無駄にしてしまう。申し訳ないが騎乗に自信ない者は道の端に寄せて、俺達に付いて来れる者だけを前に送ってくれ」


「それだと戦力が半減してしまいますが、いいのですかな」


「構わない。司令官は後続部隊を指揮してくれ、道はこのまま進むだけだそうだから迷う事はないはずだ」


 オイゲン司令官は指示を伝えるために後続に戻って行き、その際に一言だけ激励の言葉を俺にくれた。


 後ろの方で入れ替えが行われて始めたが、それが見届ける事はなくルトロは声を掛ける。


「お待たせしたクワメ殿、もう後ろの事は気にしなくていいから全速で街に向かってくれ」


「有難うございます。では遠慮なく走らせてもらいます」


 直ぐにドワーフの兵士達は馬を加速させると、砂煙を巻き上げながら進んで行く。

 この速度に何人がついて来れるか知らないが、出来る事ならばなるべく多くの人数が来て欲しい。


「あぁー、街から火が上がっている」


 暫く進んでいくと、先頭を走っているクワメが嘆くような声を上げた。

 更に速度を上げ、山道を駆け下り曲がり角を曲がると街の中が騒がしくなっているのが分かる。


「まだ分からん。このまま前に回り込むぞ、イリーナ中隊長はいるか」


 後方からイリーナがルトロに近づき何度か言葉のやり取りを交わすと、イリーナは一人の兵士を掴んでそのまま城壁の上に駆け上った。

 イリーナ達が何処に行ったのか確認する事なく馬を走らせ続けると、直ぐに後ろから光の線が現れ点滅を繰り返している。


「クワメ君、思っている以上に被害は少ないそうだ。ただ敵は正門に集中しているらしいぞ」


 ルトロは掴んだ情報をドワーフ達に直ぐに流して、焦っているだろうドワーフ達を落ち着かせた。


「凄いな、光の魔法で連絡を取る事が出来るなんてな」


「そうなんですか、あれが合図だったんですね」


 シリノはいつの間にかこの部隊にいる遊撃隊員のスキルを全て把握しているそうで、何が行なわれていたのかを説明してくれた。

 更に光の魔法が飛んでくる。


「クワメ殿、中に入りたいが何処から入れるんだ」


「分かりました。直ぐに城門が見えてきますので」


 城壁の角を曲がると百体程のスケルトンが城門に取り付こうとしているのが見えた。

 城壁の上からドワーフ兵による投石でスケルトンの身体は砕けるが、倒れたとしても直ぐに元の姿に戻ってしまう。


「クワメ殿あれを止めさせてくれ、中に入る邪魔になる」


 クワメが大声を張り上げて投石を山させたと同時にスケルトンに向かって突撃が始まる。


「いいか、胸の中心にある魔石を狙うんだぞ、いくら骨を砕いても意味なんかないからな」


 ルトロは叫びながら先陣を切って行く、メイスを振り回しているのでその度に骨が砕け飛ぶのだが元の姿に戻る様子は無い。

 俺も馬上からハルバートを振り回し、他の兵もスケルトンなど簡単に倒していくがだがそこにグールが姿を見せた。


「ガイオ、お前の出番だ。此処に近づけさせるな」


 ルトロが指示を出し、他の兵達は城門を潜り抜けて行く。

 ガイオと呼ばれた男は両手を前にかざすと、何故かグールは動きを止めて近寄って来ない。


「シリノさん、あれはどのようなスキルなんですか」


「あれはな……」


「あんたら話していないで中に入るんだよ。ガイオが可哀そうじゃないか」


「ロミルダさんすいません」


 謝りつつ中に入って振り返ると、グール達が破裂し始め静けさが戻ると、ガイオはその場で倒れ込んだ。


「あぁガイオさんが」


「私が行くから気にするな」


 ロミルダがガイオを助け起こし、中に入ると城門は閉じられた。


 クワメに案内され正門の上にある本部に遊撃隊員だけが連れて行かれると、その中ではドワーフにしては巨体の男が慌ただしく指示を出していた。


 クワメは近づいて膝をつきながら報告を始め、その男はルトロに近づいて来た。


「よく来てくれたな、私は此処の責任者のジーモンだ。今は投石と弓で籠城戦をしているのだが、君には別の意見があるようだな」


「それでは話させてもらいます」


 普段のルトロは感情で動く人間のように思えるが、こうして話している姿を見ると、やはりラウレンス侯爵の血を引いていると思い、感心してしまう。


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