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勇者の系譜~俺に勇者のスキルがなくとも~  作者: アオト
第四章 クローネン王国
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第九十六話 シリノのちょっとした試練

遊撃隊の隊長であるリベリオはゆっくりと現状を話し始め、飛竜による偵察の報告は敵は二つの部隊に別れて王都を目指しているそうだ。


 一つは山間部の道幅が広いルートと、もう一つは山を越えてくるルートでそれらを道を塞ぐかのように要塞街がある。

 現在は更にその手前の村で交戦が行われているが、街の防衛準備が終わり次第に村を放棄して二つの街で最後の防衛戦が行われる。

 それを抜けられてしまったら後は王都で籠城するしか無くなる。


 魔族の後続部隊は未だ現れないので広がっていたドワーフ族も後方から攻撃を開始したのだが、敵の本体を守っているのは殺されたドワーフ族のグールだそうだ。


 仲間をもう一度殺さなければいけない状況にドワーフ族は攻撃に手を焼いているらしい。


「奴らの本当の目的は未だ分かっていない。本隊はスケルトン、ワイト、デュラハンなどの死者軍団の二万五千だがその背後には深い霧に包まれて正確な数は不明だがグールが十万はいるのではないかと報告が入った。ただしグールは統率が取れていないのかバラバラで行動をしているグールも確認されている。どこかにグールを操るネクロマンサーの部隊がいるはずなのでそいつらを倒さないとどうにもならん」


 その話を聞いたオイゲン司令官は青ざめた顔で立ち上がった。


「そんな、十万もの軍勢を作り出すほどのネクロマンサーの部隊がいるなんて聞いたことありませんが」


「私も聞いた事ないよ、ネクロマンサーは希少種のはずだからな、それにそれだけの数がいるのに前線に送り込んでこないのも謎だ。だがな、そんな事を考えたり調べたりしている時間はないんだ。幸い本体は前線にいるのだからそれを叩くしかない」


 奴らの主力は山間のルートに二万で山越えのルートは五千となっているそうなので、俺としては二万の主力と対峙したかったが、残念ながら山越えの先にある街での防衛戦に参加する事が決まった。

 ただ、慰め程度に嬉しいのはこの部隊をまとめるのはルトロだと言う事だ。


 報告が終わったようなので早速準備に取り掛かろうとしたが、ルトロに呼び止められた。


「シリノ君とアル君はこっちに来てくれ、折角だから少しだけ紹介するよ」


 戸惑いながらも二人して遊撃隊員が集まっている場所に行くと、一斉に俺達に視線が降り注うだので俺達を見定めているのだろう。

 シリノは始めて見る顔が殆どの為に緊張しているようだが、俺は訓練でお世話になった方がちらほらいるが幸いしている。


「アル、あの時以上に良い体つきになっているじゃないか、本当に良かったな」


「その節はお世話になりました。おかげさまで身体は何も心配する事はありません」


 どの隊員も穿った目で俺を見る者はいなかったが、シリノを見ると少し怪訝な表情になる者もいて、微妙な空気が流れているが、二人してリベリオ隊長の元に行き挨拶を交わした。


「みんな、この二人がこんどうちに入る事が決まったシリノ君とアル君だ。今回は特別に遊撃隊の一員として活躍してもらう。この二人とカバラの街に配属された者はよろしく頼むな」


「隊長、アル君の方はあらかた聞いておりますが、失礼ながらシリノ小隊長はどう見ても実力不足だと思います」


 一人の隊員がシリノを否定する。

 遊撃隊でサポートに徹する者でもその実力は上級者以上にあるのだからシリノがそう言われてしまっても仕方無いのかも知れない。


 今までだったら実力不足を疑われるのは俺で、そのような視線は今は俺では無くてシリノに向けられてしまっている。

 助け船を出してあげたいが、どうしていいのか分からない。


「そうだな、見た目はそう見えるが彼の実力は違うところにあるんだよ。申し訳ないがシリノ君。ここに居る部下達の中で強い者を五人選んでそれぞれのスキルを当ててくれないか」


 シリノに向けらえれた言葉なのだが、緊張のせいで全く動こうとしないので俺はそっと肩に手を置いた。


「いつもみたいにすれば大丈夫ですよ」


「あぁ、えっとですね、スキルの性能の全てを当てる事が出来るか分かりませんが、純粋な力は貴方が一番強く…………」


 シリノは強うと思う人物から順番に当てて行き、更にはスキル名まで正確にいい当てた。

 始めは余興のように聞いていた隊員も三人目にもなると真剣な表情に変化している。


 俺もシリノがスキル名まで見れるとは思っていなかったし、そこまで丸裸で分かってしまうとは聞きながら驚いてしまった。


「どうかな、彼は正確だったろ、それに彼の力は人間だけに通用する訳じゃ無いんだ。これを聞いても反対する者はいるかな」


 すると、先程シリノを否定した隊員が立ち上がり頭を下げた。


「シリノ小隊長、先程は失礼な事を言ってしまい申し訳ありませんでした、何ならこの場で殴ってくれても構いません」


「いいんですよ、実際にあなた方に比べたら格下ですので未だに入っていいのか不安になります」


 ルトロが満面の笑みを浮かべてシリノの両肩を掴んだ。


「不安になるなよ、君は普通の兵士より強いぞ、だから早く私達に追いつけるように鍛えてあげるからな。


 この一言でシリノは今までに経験しなかった訓練をさせられることが決まった。

 シリノも何かを感じ取ったようで顔が引きつってしまっている。


 少しして第二援軍隊と呼称された俺達は山を抜け、カバラの街を目指している。


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