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勇者の系譜~俺に勇者のスキルがなくとも~  作者: アオト
第四章 クローネン王国
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第九十五話 王宮にて

 王都に入る直前に一部の兵士が振り返り騒ぎ始めたので、俺も釣られてみると飛竜部隊によって運ばれている兵士達の集団が王都に迫って来るのが見える。


 ただ、ハルティ砦からのような低空飛行ではなく、それに屋根も無い只の囲いしかない状態なので見ているにはいいが、乗ってみたいとは思えない。


「ありゃ堕ちたら終わりだな」


 誰かが俺が考えていたことを呟くと、その危険性に気が付いた兵士達は複雑な表情へと変化させた。


「よそ見していないで進まんか、ドワーフ族の人達も見ているのだぞ」


 アクセリが珍しく声を張り上げ王都に入るように促すが、此処には決して遊びできている訳では無いのだからその言い分はもっともだ。

 此処の住民は迫りくる魔族の影に恐怖に震えているのだから。


 ドワーフの兵士によって広場に案内されると同時に飛竜も降りてくる。

 一気に兵士が集まってしまったが、それなのに混乱する事はなく綺麗に整列していく。


「中隊長以上の者は広場の入口に来てくれ、これから作戦の伝達と国王様の謁見が行われる。小隊長はクローネン王国の兵士の指示に従って部下を宿舎に連れて行ってくれ」


 伝令が叫びながら列の間を駆け巡っている。

 俺は列の先頭にいるのでこれからの指示を待っていると、イリーナ中隊長がシリノ小隊長と共にやって来た。


「アルも来るんだ。お前とシリノは遊撃隊に入る事が決まっているのだから特別に参加を許可された。後の事は副官に任せろ」


「もう遊撃隊は到着しているのですか」


「私等より早く着いているそうだ。今後の作戦は遊撃隊の主導で行われる。いつか私もお前達の指示で動く日が来るのかも知れないな」


 広場の入口ではルトロが何やら忙しそうに動いていて、その恰好は暗赤色の鎧と言う遊撃隊の正式な姿なのだが、目の前で見ると益々早く入隊したくなる。


「アルよ、俺はやはり辞退したくなってきたよ、どうして遊撃隊が近衛兵みたいな煌びやかな鎧では無くてあんあ地味な色をしているか知っているか」


「いえ、そもそもまともな格好の遊撃隊は初めて見ましたから」


「あれはな、返り血を浴びても目立たないようにしているんだよ。戦場で一々血の汚れなんか気にしていられないだろ、それだけの事をする証だよ」


「それは単なる噂ですよ」


 背後からいきなり遊撃隊員に話し掛けられたが。その綺麗な顔立ちの男性は何処かで見たような気がする。


「あっあんたはこの間俺に色々質問してきた人だよな」


 危なかった。この人は男では無く、女性じゃないか。


「そうですけど、それよりアル君は何を驚いた顔をしているのかな、また私の事を男だと思っているのなら只じゃおかないよ」


「いえっそんな訳ないです。ただ後ろから話し掛けられたので驚いてしまったのです」


 ロミルダさんは俺の事を冷たい目で見ているが、シリノ小隊長に対しては普通にしている。

 と、言う事はルトロは俺の失言だけを伝えたに違いない。


「まぁいいや、いいかい私達が身に付けている鎧は全て竜の鱗から作られているんだ。竜種によって色が違うからと逸する為に塗り替えているだけだよ」


「そうなんですか、飛竜の鱗なんですね」


「違うよ、飛竜じゃ無くて違う竜種だよ、お前はそんな事を間違ってもドラゴンライダーに言うなよ、彼等にとって飛竜は家族同然なんだからな、まったく少しは考えて話しなよ」


 ロミルダさんは呆れているが、何故かシリノ小隊長まで同じような視線を俺に向けてくる。

 そもそも変な噂話を俺に言ってきたのはシリノが原因なので理不尽ではないか。


 前では精悍な顔つきをして中年に差し掛かりそうな男が一段高い場所に立った。


「皆さん聞いて下さい。私は遊撃隊の隊長をしているリベリオです。今からクローネン王国国王との謁見があります。終わり次第に今回の作戦を伝達いたしますので付いて来て下さい」


 遊撃隊が先頭を歩き、その後ろにオイゲン司令官が後を付いて行く。

 勿論、今の俺は最後尾だが遊撃隊に入るとこのような場所では司令官よりも立場が上になるのだろう。


 王宮の中は派手さこそ無いのだが、どれもが大きく作られていて扉などは一人では決して開けられない様な気がする。

 そして王の間の中は重装備を身に付けた兵士が並んでいて、その兵士達の武器はメイスや斧ばかりで剣を持っている者は誰一人としていなかった。


 部屋の奥にはこの国の国王と思われる人物が玉座に座っていて、その隣の王妃は顔の半分以上がベールで包まれている。

 国王は兵士達に比べてしまうと心無しか小さく見えて、着ている服も作業着にしか見えない。


 俺達は壇上のすぐ下まですすんで行くと一斉に膝をついて頭を下げ、国王の言葉を待った。


「マテウス王国の精鋭の諸君、今回はよく来てくれた。本来ならばその手を煩わせる真似などしたくなかったのだが、今回は奴らの行動が読めない為に我が国の部隊は広範囲で防衛をする羽目になってしまった。申し訳ないが是非ともこの国の危機を救ってくれ、頼む」


 短い謁見が終わると直ぐ近くの部屋で今回の作戦の伝達が行われる。


 その部屋の中には三十人程の遊撃隊員とそれとほぼ同数の中隊長以上の者達で埋め尽くされた。



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