第八十五話 王都に帰還
輸送してくれている飛竜とルーサーでは一回り程大きさが違う為に、港で働いている兵士は悔いるようにルーサーを見ている。
「お久しぶりですヴィーランド少尉、今日はどうなさったんですか」
「レオニダス様と一緒に砦に来たんだ。それにな実は俺は大尉に戻ったんだよ」
総司令官であるレオニダスはシーサーペントの報告を聞くためにわざわざハルティ砦にまでやって来たそうだ。
一時期は引退を考えていたはずなのに未だ現役で総司令官の地位にいるとは驚きだ。
「じゃあ行くぞ、レオニダス様に挨拶をしたら王都に送ってやるから」
「あの、私は休暇が無いんですよ、ですので挨拶だけ伺います」
「大丈夫だから、早く乗れよ」
せかされるようにしてルーサーの背中に乗り込むと、やはりルーサーは普通の飛竜に比べて別格のように思える。
ルーサーの元からの力に大尉のスキルが合わさっているせいなのだろう。
ハルティ砦に到着すると、俺と大尉は直ぐに司令官室に歩いて行く。
ヴィーランド大尉は今ではドラゴンライダー部隊の隊長をしていて、式典の時には仕事で参加出来なかったらしく、その事を謝まってきたが、あの時助けられたのは俺の方なので俺は何度もお礼を言った。
「この先お前が遊撃隊に入ったら、俺の部隊と連携をとることになるから早く入れよ」
「はい、ただ私は何時になったら遊撃隊に入れるのかは分かりませんが」
「そんなに遠い話じゃ無いと思うぞ」
司令官室ではレオニダスが優雅にお茶を飲んでいるだけなのだか、オイゲンは緊張しているらしく、此方迄身構えてしまいそうになる。
レオニダスは俺を見ると満面の笑みを見せてくるのだが、その裏に何かがありそうで少し怖い。
「いきなりシーサーペント討伐とは運が良いな、まさかこんなに早くに功績を上げるなど思ってもみなかったよ。ランベルト様も喜んでいたぞ」
「有難うございます。ただ今回は私だけの力ではありませんので喜んでもいいのでしょうか」
「勿論だ。部下と一緒に戦ったのだから胸を張っていいぞ、だからといって直ぐに遊撃隊に入れる訳にはいかんが、一年此処で過ごしたら遊撃隊に入るんだ」
思いがけずに一年後には王都に帰れる事が決まったが、何故かオイゲン司令官は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべている。
「有難うございます。それまで此処で精一杯頑張らせてもらいます」
「それとだな、今から君は部下達と同じように休暇に入りなさい。その為に大尉がいるんだからな」
レオニダスが俺に休暇をくれる事に驚いたが、更に飛竜で帰っても良いと言われるとは予想も出来ない。
あまりの好待遇に益々不安が高まって来る。
「総司令官、彼の遊撃隊入りは良いとしましても、休暇を与えるのはいきすぎだと思います。彼は勝手に休暇を部下達に与えてしまったんですよ。他の隊に示しがつかないのですが」
「そんな事は君が何とかしなさい。その為に君がいるんだろ、出来ないなら司令官を辞めたまえ」
気まずそうな話が始まりそうだったが、レオニダスに促されて部屋を退出する事にした。
もう気分は王都に向かっているのだが、この事が原因で後に面倒に巻き込まれるとは予想だに出来なかった。
「さぁ王都に送って行くぞ、ディアナは驚くんじゃないか」
ルーサーは全力で空を飛んでくれたおかげで、半日を過ぎた頃には王都に到着する事が出来た。
ただ何処に俺の新居があるのか知らなかったので、ディアナのいる治療院におくって貰った。
「まさか自分の家も知らないなんて難儀な奴だな、まぁせいぜい頑張れよ」
「ちょっと待ってくださいよ、ディアナに会って行かれたらどうですか、きっと彼女も喜びますよ」
「次の機会でいいよ、俺にはまだ仕事が残って居るからな」
ヴィーランド大尉は直ぐに飛び去って行ってしまったので、俺は治療院の受付でディアナを呼んで貰うことにした。
少しの間受付の前で待っているとディアナが走ってきて、飛びつく様に俺に抱きついて来た。
「お前り、こんなに早く会えるなんて思わなっかったわよ」
「ちょっと落ち着こうか、ディアナはまだ仕事なのだろ、俺達の新居ふは何処にあるんだ」
ディアナが簡単な地図を書いてくれ、此処からさほど離れていない場所に俺の家とユナの家とテオの家が並んでいる。
その家はあの貴族達からの気持ちと言われてしまったので有難く住ませて貰うことにする。
家に入ると前に訪れたディアナの家に比べ華やかになっいるようだ。
ディアナなりに一人だけの新婚生活をしているのだろう。