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勇者の系譜~俺に勇者のスキルがなくとも~  作者: アオト
第四章 クローネン王国
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第八十話 会議にて

 今日は我が中隊だけでの士官会議があるのでイリーナ中隊長がいる、エスペラの本部にある会議室に集まった。


「アル君どうなの、良くなったかな」


 必要以上に身体を密着させて来るこの女性は第四小隊のカロリーン小隊長で、三十の手前だけあり、大人の色気で迫って来るので今の俺にとってかなりの脅威な存在だ。


「あのさぁ、そんな態度だから男に舐められるんだけど」


 カロリーンとは対照的に美男子と言ってもおかしく無いのが第十五小隊のマレイセ小隊長で、彼女は同じ学校の一学年上でもあるが、先輩との交流が皆無であった俺にはここで初めて見た顔だった。


「あれ以来表面上はまとまっている様には見えますが、雰囲気はあまり良くないですね、それでも仕事は普通にしてくれているので何も言いませんが」


 カロリーンはあの事件の後で、仕事をボイコットした数人も俺が首を切って表面上は大人しくなった兵士の事を聞いてきた。

 腕をほどきながら言っているとイリーナが机を叩いて怒鳴って来た。


「もっと積極的に対処しろ、確かにお前に権限はあるが、余りにも簡単に首を切るからここの兵士達に何て呼ばれているか知っているか」


「さて、何でしょうか」


「死神だよ、し・に・が・み。そんな風に言われていいのか」


「死神ですか、学生時代もそう呼ばれていたので別に何とも思いませんが」


 俺の発言に対面に座っているシリノは笑い出し、イリーナの隣に座っているアクセリは下を向いて笑いを噛み殺している。


「お前は何も感じないのか」


「少しだけ嫌でしたけど、余り気にしすぎると逆に感情が消えて行くんですよ」


「良いなぁアル君は、面白いよ」


 カロリーンはまた腕を絡めて来たが、今度はマレイセによって引き離された。


「もういい、お前と話すと疲れてくる」


 俺の話が終わりを迎えてくれた後は、いつものように各小隊からの報告が始まり、部隊の配置換えなどが話し合われた。

 その中で気が付いたのだが、港の警備がこの街で一番重要な場所なので俺達だけでは足らず、いつも他の小隊から応援を借りてしまっている。


 今は船も新たに入って来たので六十人以上の兵士が港にいることになっている。

 他の場所はさほどやる事が無いようなので、元から二つの小隊を港の警備に回せばいいと思うので提案をしたが、普段は俺の言う事は全て賛成するカロリーンや相談に乗ってくれるシリノからも反対されてしまった。


「あの、もしかしたら書類の仕事が嫌なんですか」


「そんな事詮索するなよ、お前の部隊がちゃんとまとまるように俺も考えてやるから、そんな事は忘れようぜ」


「一緒に同じ場所で私と働きたいのかな」


「浮気をしそうになっているとディアナに手紙を書くぞ、私は魔法課の先輩なんだからな」


 イリーナはあからさまに溜息をつきながらこの話を終わらせようとした。


「もうそこまでにしろ、アルも新人の役目だと思って諦めろ、内政官を港に置かないからもめるんだよな」


 イリーナ中隊長によりやはり俺だけで港の書類と格闘することになったが、それよりもマレイセ小隊長が意外と危険人物であることが判明した。

 まさかあそこでディアナの名前を出してくるとは思わなかったし、もし本当にディアナに手紙を出せる位の交流があるとすれば、これからは気を使わなくてはいけない。


 全てカロリーンについては被害者の立場だが、余計なことを書かれてしまったら大変なことになってしまう。


 その時、会議室に一人の兵士が飛び込んできた。


「大変です。港の先に海獣が出現したようです」


「落ち着くんだよ、そんなのは副官の指示で対処すれば良いだろう。それ位はして貰わないと困るねぇ」


 イリーナは追い払うように手を振ったが、その兵士は引き下がらないどころか更に声を張った。


「シーサーペント何ですよ、普通の対処では無理です。このまま沖に居座られると交易船に影響が出てきます」


 アクセリは頭を掻きむしりながら誰に話している訳でもなく呟いた。


「よりによってシーサーペントか、ここ何十年も出て来なかったのに、なんで私達がいる時に出てくるんだよ」


「黙れアクセリ、討伐部隊は私が指揮する。十三小隊は私の指揮下に入れ」


「了解しました。早速準備に取り掛かります」


 シリノの小隊が討伐部隊に選ばれたようだが、何だか納得がいかない」


「ちょっと待ってください。港は私の小隊が担当ですよね、それならば討伐は私達が行うのが筋じゃ無いんですか」


「落ち着きなって、気持ちは分かるけど、はっきり言ってしまえば君の小隊では荷が重すぎるよ、普通の海獣なら俺は何も言わないが、シーサーペントは厳しいんじゃないか」


 イリーナは黙って聞いていたが、考えを決めた様で立ち上がった。


「確かにそれだと雑用処理部隊と思われるだろうな、いいだろう十六小隊が私の指揮下に入れ、シリノには悪いが十三小隊の精鋭を入れてくれ」


 俺の持ち場でなかったらこんな事は言わないが、持ち場である以上、責任は持たせて欲しい。





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