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勇者の系譜~俺に勇者のスキルがなくとも~  作者: アオト
第二章 マテウス王立上級学校六学年
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第八話 授業開始

 簡単な紹介が終わった後でいきなり軽装備に着替えるように言われた。

てっきり座学が始まると思っていたので慌ただしく着替え始める。


「ほらっ早く着替えなさい。君達のスキルは自分たちで可能性を見つけなければいけないんだから、他のクラスの生徒より努力しないといけないんだよ。それに君達に足りないものは何だと思う」


 レオニダスは一番端で装備を身に付けているグレタを指で指した。


「自分のスキルの理解力だと思います」


 グレタは自信ありげに答えたが、レオニダスは首を横に振る。


「君は自分の体形を見ても分からないのかな、今の君達に必要なのは体力と精神力だよ」


 確か昨日人の見た目を馬鹿にしてはいけないと言っていたような気もするが、レオニダスは直球で体形の事を言い放った。

グレタは恥ずかしそうに下を向いてしまったが、そんな事はお構いなしに話を続けていく。もう本性が溢れ出て来てしまったようだ。


「これから学校の周りを十周しなさい。早くしないと昼休みの時間が無くなってしまうからね」


 俺以外には、とてもでは無いがかなりの厳しい条件だ。

みんなの顔は曇ってしまっている。

もう昼食は諦めるしかないと思っているのだろう。


「先生、流石に十周は昼までには終わる訳が無いと思いますが」


 勇敢にもジョンソが代表して意見を言ったが、段々とレオニダスの顔が険しくなってきた。


「やる前から諦めるとは呆れてしまうよ。別に君達は私の指示に従わなくても構わないがその時は退学にするけどいいね」


 ジョンソの顔色が青くなっていき必死に首を横に振る。

彼はとある村の代表としてここに入学したそうだから、こんな事で退学などなってしまったら村に帰る事など出来ないのだろう。


 俺達は正門の前に並び号令を待った。

誰しもが気合を入れた表情をしてきたが、レオニダスはそれをへし折って来る。


「君達は真剣さがいまいちだから条件を一つ増やすよ、びりになったら夕食も抜きにしよう。それとテオ君は二十週ね」


 その言葉を聞いたテオは目を丸くしながら俺を見てきたが、俺には何も言う事が出来る訳は無い。


「ごめん、ごめん、アル君にもハンデを与えないとね、五十周走ろうか」


 誰もが俺の方を見て驚きの表情を浮かべた。

多分、祖父の指示で教師をやっているレオニダスは俺にだけ優遇すると思っていたのに、それが間違いであったと気が付いたのだろう。


「おい、アル、大丈夫なのか」


 テオは心配して小声で話し掛けてくるので、俺はただ頷いた。

自信がある訳では無いがいくら言ってもレオニダスには届かないと思っているだけだ。


「さぁ出発の時間だよ」


 一斉に走り出す。

俺はいつものように全速力だ。

テオは俺がやけくそになっていると思ったのか呼び止めようとするが、俺の耳には届かない。


 目の前には戦術課の奴らが列をなして走っているが、俺はそのままの速度で追い抜く、彼等の中には今まで俺より剣術も格闘術も弱かった者もいるが、スキルを使いこなす事によって俺よりも遥か上の高みに登る者も現れるだろう。

だとしたらせめて体力だけは負けたくない。

少しだけ悔しさを噛みしめていると、イーゴリが俺の隣に並んできた。


「それがお前のスキルの効果なのか、息苦しさも感じないという訳か。それで何に変換しているんだ」


「俺が教えて欲しい位だよ、それよりよく付いて来れるな」


 イーゴリが息も切らさずに横に並んでいる事に素直に驚いてしまった。

「限界突破」のスキルの影響なのかも知れないが、それでももう使いこなし始めているのだろう。


「俺はどんなことであろうともお前にだけは決してディアナは渡さない。必ず俺の妻にするんだ」


「………………えっ」


 予想外の言葉が出てきて思わずスピードが落ちてしまい、イーゴリの先行を許してしまう。

一体こいつは何を言っているのだろうか。

俺は言葉の真意が掴めず、確認する為にイーゴリに並んだ。


「何でここにディアナの名前が出てくるんだ」


「お前の許嫁なんだろうが、それも国王様を利用して無理やり約束させたらしいな、ランベルト様の功績は尊敬するが、このやり方には俺は納得がいかない」


 イーゴリが去年ぐらいから急に俺に敵意を剥き出しにしてくると思ったが、もしかしたら原因はディアナなのだろう。

イーゴリを振る為にある事ない事を言ったんだろうと思う。


「あのな、俺に許嫁なんかいないぞ、ましてやおじい様が権力を使ってまで結婚させる訳無いだろうが、それにディアナの父上は執政官じゃないか、権力は祖父に負けない位にもっているし、貴族としてもこっちは伯爵家だぞ、侯爵家の息女を無理やり貰える訳があるかよ」


「嘘をいうなよ、ディアナが俺に言ったんだぞ」


「お前に諦めて貰う為に言ったんじゃないか、そんな悲劇のヒロインがあんな風に人前でお前を馬鹿にするか、意味が分からないだろうが、少しは考えろよ」


(人の気持ちをここまで弄ぶとは、やはりディアナには近づくのは止めよう)


 イーゴリは走りながらどんどんと顔色が悪くなってきた。

精神がスキルに作用しているのかも知れない。心配していると突然苦しみだしてそのまま倒れてしまう。

慌てて助け起こしたがイーゴリの顔は血だらけになっている。


「もう一度聞くが、その話は本当なんだな」


「あぁ、俺は性格が悪い女より年上が好みなんだ」


 その言葉を聞いたとたんにイーゴリは苦しみながら意識を失った。

気持ちが途切れてしまったせいでスキルが強制解除になってしまったのだろう。

これがスキルの反動なのか。


 まさかこのまま見捨てる訳には行かないので、モルテン先生に状況を伝えに戻ると、介護室まで俺が連れて行くように言われてしまった。

そのせいでかなりの時間を無駄遣いしてしまい、結局俺は特色課の中で断トツのビリになってしまった。


 勿論、レオニダスにはモルテン先生から話をして貰ったが、やはりそんな事はレオニダスにとってはどうでもいいらしい。


 今日は昼食も夕食も諦めて一人で部屋の中に居ると、イーゴリが気まずそうな顔をしながら食事を携えてやって来た。


「あれからディアナに確認したんだ。そしたら俺に言った事すら忘れていたよ、なんか今まで八つ当たりして悪かったな」


 そう言いながら俺に食事が乗った皿を渡してきた。

前なら文句の一つでも言いたいが今更どうでもいい事だ。


「気にしなくていいよ、ただこれからも戦う時は全力で来てくれ、俺はそんなお前を倒したいんだ」


「意外と恥ずかしい事を言うんだなお前は」


 イーゴリは苦笑いをしながら出て行った。

俺は恥ずかしいセリフを言ってしまったがスキルのおかげで何も気にせずに食事をほおばる。

それにしてもディアナには一度注意しておいた方がいいかも知れない。

また俺を利用されてもい迷惑だ。

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