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勇者の系譜~俺に勇者のスキルがなくとも~  作者: アオト
第四章 クローネン王国
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第七十八話 港町エスペラ

 城壁の先には待ち構えている兵士の姿が見え、俺の異様な姿を発見した一部の兵士達が何やら騒ぎ始めた様だ。

 まぁ傍から見たらこれはどう見ても拷問を受けているとしか見えないだろう。


 飛竜が速度を落としたので腰からロープを外していると、まだ家が完全に地上に降りていないのだが、アクセリとクリストバルが飛び降りてきて駆け寄って来る。


「君はなんてことをしたんだ。まぁいい」


 アクセリが俺とクリストバルに触れると目の前の視界が何か変化したように思える。

 手を伸ばして調べようとしたらアクセリ副隊長に注意された。


「動くんじゃない。これは私のスキルであまり動かなければ誰にも見えない。いいか、兵士達の移動が終わる迄はこの場所にじっとしているんだ」


「私の部下はどうなりますか」


「シリノ君に言ってあるから任せるんだ。それより君の身体は何なんだ。あれだけ引きずられてこうして無事なのも不思議だが、その後で飛竜とずっと同じ速さで走り続ける事が出来るなんて信じられんよ」


 アクセリは俺の事を見て直ぐにでも飛竜を止めようとしたらしいのだが、シリノがこのままで大丈夫だと判断したそうだ。


 ただ、万が一の事があっては不味いと思ったのか、ずっとシリノは俺の事を見ていてくれたらしい。

 シリノのスキルが何なのか気になってしまうが、それよりも先に副中隊長のスキルが気になってしまう。


「副中隊長のスキルは珍しいですね、どうしてこのようなスキルを身に付ける事が出来たのですか」


 俺の聞き方が悪かったのか、何故かアクセリは少しだけ俺を睨んでいる。


「君は何か誤解していないか、私は覗きが趣味の男では無いぞ、いいかね、私の家系は狩人何だよ、このスキルはこの話している声や気配すらもこの周りには聞こえない。まぁ移動してしまったら解除されてしまうから大したスキルでは無いがな」


「そんな事ないですよ、触れた人間も同じような効果を出せるなんて凄いじゃないですか、私は尊敬します」


 俺は本当に有能なスキルだと思っているし、アクサリに狙われてしまったら防げるものがどれぐらいいるだろうか。


「いいか、この場から誰も居なくなったら直ぐに着替えてから講堂に行くんだ。分かったね。クリストバル君頼んだよ」


「かしこまりました」


 誰の姿も見えなくなった途端にアクセリはスキルを解除して走って行ってしまった。

 クリストバルは俺の手を取って兵士の控室に連れて行き、適当な服を俺に渡してきた。


「とりあえずこれで我慢して下さい。着替えたら直ぐに講堂に行きますよ」


 急いで着替えて講堂に忍び込むと、先に到着していたイリーナ中隊長が現在の街の様子を説明している最中だった。

 俺達が遅れて入った事は気が付いているようだが、その事には触れないで話が続いている。


 俺達の部隊は港周辺を担当する事になったようで、早速向かうように指示されたのだが、俺だけは此処の残るように言われたので小隊の事は副官に任せた。


 中隊長室の中ではイリーナが不機嫌そうに頬杖を突いて俺を睨んでいる。


「お前は何がしたいんだ。確かにあの中では自由行動が認められているがあんな真似をする奴は初めてだぞ」


「申し訳ありません。通常の訓練は物足りませんので、その鬱憤を晴らしただけなのですが」


「あの訓練が物足りないと言うのか、実戦に近い形でやっているのだぞ」


 確かにそうだろうが、レベルの低い者達が形だけの事をやっている事に気が付いていない。


「私の訓練には祖父が絡んでいますので、あれよりは遥かに厳しい訓練です」


 最近の祖父は当たり前のように俺の身体を切り刻み、何度も腕や足が切り落とされた。

 てっきり兵士達もあのような訓練をしている者だと思ったが、それは勘違いだったようだ。

 俺はその訓練内容を取り入れて欲しいと思い、全てを話した。


「あのなぁそんな訓練など誰がやりたがるんだよ、あんたそんな事をされてよく生きているねぇ」


「例え祖父が私の首を落としたとしても、僅かな時間であれば死なせる事は無いと思っているからでしょうか、まぁ切り落とされるとこの私でも痛いのは嫌でしたが」


「痛いや嫌で終わる話じゃないだろうが、もういい、自分の小隊の元へ戻っていいぞ」


(あいつは馬鹿じゃ無いのか、あいつのスキルは人間の気持ちが分からなくなるのか)


 イリーナの思いは知らずに俺は馬に跨って港にある隊舎に向かって行く。

 

 港町エスペラはマテウス王国の領土と言っても飛び地になっている為に、この街で定住している者は漁で生活している者以外は殆どいない。

 商人もいるので生活物資には困る事はないのだが、唯一の欠点は調理人がこの街に居ない事だ。


 

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