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勇者の系譜~俺に勇者のスキルがなくとも~  作者: アオト
第四章 クローネン王国
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第七十二話 急展開

祖父はあれから三日も過ぎたというのにこの場から動こうとはせずに二人だけの訓練が続けられたが、四日目の早朝にいきなりグリフォンに乗せられかえることになった。

 領主館のに入って行くと、何やら慌ただしく皆が動いている。


「ただいま戻りましたが、どうかしたのですか」


「遅いわよ、いいから早く着替えなさい」


 いきなり母に怒られて言われるがままに正装に着替えると、その勢いのまま馬車に乗せられる。

 そこで初めて分かったのだが、本日の午後に王宮にて俺達が守ったあの事件の式典が行われるそうだ。

 式典とは随分と大袈裟な事になっているが、あの中には貴族の子息が数多くいたので、その貴族たちが発起人となっている。


 ゴンザは普段より馬車を飛ばし、王宮に早く着く事は出来たと思うのだが、到着するや否や俺は近衛兵にせかされるように王の間に走らされた。


 王の間に着くと奥にはユナとテオが壇上の前に立っていて俺に向かって必死に手を振っている。


「お前何やってんだよ、国王様を待たせるなんてどうかしてるぞ」


「ねぇいい加減にしなさいよ、子供じゃ無いんだから」


「俺のせいじゃ……」


 壇上にいるレオニダスから殺気にも似た視線を浴びせられ、俺はそれ以上話すのを止めて周りを見渡すと、壇上にはレオニダスとラウレンス侯爵や王族、更にはこの国の重鎮ともいえる方々が座っていて、俺達の左側には若い騎士や近衛兵が並んでいる。


 右側には楽団やら貴族方々が俺達に注目していて、祖父がようやく壇上に登ると楽団の音楽が鳴り始めた。

 あの事でまさかここまでの大袈裟な事になるとは全く思っていなかったので、もしかしたら本当に隠し子がいたのではないかと勘繰ってしまう。


「国王様が入られます」


 奥から国王様が登場し、壇上の上ではあるが俺達の目の前に立った。


「皆の物、七年前にそこに整列している騎士達を守った、三人の英雄を讃えようではないか」


 国王様に挨拶が始まり歓声が巻き起こる。

 左側にいる若い騎士達はあの時の子供だったらしく、時の流れを感じてしまう。


 大臣が式典の発足が今になってしまった説明を始め、本来ならばあの後にテオとユナに直ぐに褒章が贈られるはずだったが、二人は頑なに三人でなければと拒んだので今回はその分このような大きなものになったそうだ。


 記念品と金貨が俺達に配られた後、俺達には更なる贈り物が待っていた。


 テオには爵位が与えられ、男爵家の次男だったテオは子爵となり、ユナには配偶者のイーゴリが一階級昇進する事が決まった。


 俺には学校の卒業証書が与えられた後で、何か俺に言おうとしたが何故か口籠ってしまっている。

 するとレオニダスが前に出て来た。


「本来ならここで遊撃隊入りを任命する予定だったが、今しがたランベルト様と話してそれは取り消すことにした」


 周りは動揺したどよめきが訪れているが、名前を出された祖父は笑っていてそれを国王様が苦々しい顔で見ている。


「君は前に国王様から国境警備隊に配属が決まられたよな、だからこれを覆す訳にはいかないと判断した。君はこれからハルティ砦に行ってそこの小隊長に任命する。いち早く功績を上げて遊撃隊に入れるように頑張りなさい」


「有難うございます。精一杯やらせていただきます」


 遊撃隊が何なのか知らないが、それよりハルティ砦は友好国であるクローネン王国に隣接しているのだからそこで功績を上げるにはどうしたらいいのだろう。

 俺に内政力を求めるのならかなりの難題だ。


「ちょっと待ちなさい」


 国王様が立ち上がったので一気にこの場は静かになる。


「まるで私が悪者では無いか、まさか勝手に行先をかえてしまうとはな」


 国王様は祖父とレオニダスを睨むが二人とも素知らぬ顔をして目を合わせようともしない。


「君が手合わせした者は遊撃隊の隊員なんだ。だから君には遊撃隊に入る力は認められたのだが、君は入りたくないかね」


 だから遊撃隊って何ですかとは国王様に聞ける訳は無く、さりげなく祖父に視線を送ると祖父は首を横に振っている。


「国王様の最初に指示に従いたいと思います」


「本当にそれでいいのだな、何年も帰って来れない事になるかも知れんが、その覚悟はあるのか」


「勿論です。ちゃんとご期待に添えて見せます」


 国王様は深いため息を吐くと、後ろに控えているラウレンス侯爵に声を掛け、侯爵は一度奥に下がると直ぐにディアナと共に出て来た。


「君達の事はこの王宮内でも随分と噂になっていたのでな、何かややこしくなっているそうだから私が勝手に決めさせてもらったよ、それなのに君は……。まぁいい、この場で君達が婚姻関係を結ぶことを命ずる」


 今まで以上に歓声と拍手が巻き起こり、テオ達や若い騎士の中にも涙を流している者がいるが、俺にはあまりの展開の速さについて行けず茫然としてしまう。


「ねぇ新婚なのにどうするのよ、七年も待たされていきなり別居何てありえないじゃない」


「しょうがないだろ、俺は知らなかったんだから」


「また勝手に決めて」


 ディアナは俺だけに聞こえるように言いながら笑顔を振りまいている。

 ラウレンス侯爵は無表情で俺を見ているので、どうやら国王様に言われた渋々了承したのだろう。


 祖父もレオニダスもこの事を知っていたのだったら、辺境の地に追いやらなくても良いと思うし、国王様ももう少し話す順序を考えてくれればこのような事にならなかったのにと少しだけ恨みたくなってしまう。


 その後は、会食があったり手続きに追われたりたりしたのでゆっくりとディアナと話す時間は無く、二日後にはハルティ砦に出発する時間になってしまった。


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