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勇者の系譜~俺に勇者のスキルがなくとも~  作者: アオト
第三章 マテウス王立上級学校最終学年
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第六十六話 防衛戦

 森の中から姿を見せた連中は、盗賊ともどこかの国の兵士とも言えない様な何か奇妙に見える集団だった。

 装備は統一されていないのだが、盗賊のようなみすぼらしさは無いのだがかなり使い込まれている様な感じがある。


「何だお前は、良く眠らずにいられたな、まぁそのせいで死ぬことになってしまうがな、なぁどうやって死にたいんだ」


「可哀そうだろ、脅すのは止めろよ、黙って殺してやれ」


 どちらでも俺を生かす気は無いようだが、それでも時間稼ぎをしなくては。


「何者なんだ、あんたらは」


「どうでもいいだろ、それより国王の隠し子は何処に……」


 それしか情報は得られなかったが、それ以上近づかれると守る事は難しくなってしまうので急いで部屋の中に入る。


 国王の隠し子を探しているようだが、そんな事は知らないし、全く意味が分からない。

 仮にそんな人物がいたとしたらもう少し警護が厚くなるだろうに、こいつらは何を言っているのだろうか。


「ねぇ一人であの人数を相手にするの、厳しい事になるよ」


 今回は顔こそは無いものの、少年のような姿になっているスキルが話し掛けてくる。


「仕方が無いだろう、なぁ奴らは何者だと思う」


「知る訳無いだろう、僕は君がスキルを使うとき以外は寝ているんだから」


 会話が出来るようになったのは嬉しいし、新たな疑問も浮かんできたが今はここに居たとしても長く話している時間は無い。

 レバーを二つ上げて戻ろうとしたらまたしても話し掛けてくる。


「待ちなよ、全員を守りたいなら二つでは無理だよ、まぁ君は生き残れるけどね、ただ自分を犠牲にしても守りたいのなら四つ上げるしかないよ」


 俺の考えとは違うが、俺以上に理解しているのだから信じるしかないだろう。

 どのような犠牲になってしまうのか知らないが守れるのならそれでいいと思い、レバーを四つ上げた。


「いいかい、残り時間が消えても君が動きを止めなければ効果は続くからね、ただ自分が大事なら時間が無くなる前に逃げた方が良い。よく考えるんだよ、何を選択するかは君次第だ」


126.


 現実の世界に戻って行く、前よりも数字は増えているがこれでも足りないのだろう。

 

 奴らを全て攻撃をする為に右端から飛び掛かっていくが、久し振りにこの力を使うので身体の制御が効かず、一人の男にぶつかりそいつは風船のように弾け飛んだ。


 105.


 まさかたった一人でここまで数字が減ると思わなかったが、意識を奴らに向け、ハルバートを振り回すのではなく、ただ奴らの身体に当てながら駆けていく。


 それだけで何の抵抗も感じないで奴らの身体を分断していく。

 まるで時間が止まってしまっているようで、殆ど動いていように見えない奴らは次々と命を散らしていき、残りの人数は半分強だが数字はかなり減ってしまっている。


 36.


 俺に最初に声を掛けて来た男を斬ろうとしたときに、そいつの身体のハルバートは弾かれてしまい思わず落としてしまう。



 その頃ユナは必死に魔道具を握り絞めたり、手を翳したりしたが全く反応してくれない。

 完全にパニックになったユナは思わず投げ捨てようとしたときに、ようやく魔道具が緑色に光を放った。


「誰か聞こえますか」


「どうした、聞こえているぞ」


「早く助けて」


「落ち着きなさい、何が…………」


 ユナは全てを話し終えると身体が重くなったように感じるが、力を振り絞って窓に近づくと、異様な連中が右端から身体を切り裂かれているのが見える。


「アルだよね、お願い、皆を守って」



 テオは安全策をとって大幅に迂回しながらあるが戦闘を始める前には目的地に到着していた。

 そこは、森が切り開かれて広場になってその中央にはかなりの大きさの魔法陣が書かれてあり、その中央に黒いフードを被った人物がいる。


(本来ならばあいつを捕えたいが、そんな時間は無いな)


 テオは気配を消したまま背後から近づき一撃で心臓を貫いた。

 更に首を刎ねると魔法陣も何故か消失していくが、テオはそれを見届けるよりも首を持ってアルを助けに行く事を選んだ。



 ハルバートを落としてしまったアルは、拾い上げようとすると奴らと同じ時間が流れ出す。

 いきなり身体に衝撃を感じた男は訳も分からないまま、アルに対して槍で突き刺そうとする。


 俺は躱す事よりもハルバートを拾い上げる事を選んだが、何故かその槍は俺の肩を貫いた。

 久しぶりに痛みに思わず肩を押さえてしまうと、今度は背中から剣を突き刺され俺の腹から剣先が顔を出してくる。


「手前、何をしやが……」


 口から血を吐き出しながら立ち上がるとまたしても、周りと流れる時間が変わったようなので、今の俺には動きを止めてはいけないらしい。


 8.


 奴らの中には俺の動きを目で捉えている奴もいるがただそれだけなのでそいつの首も刎ねる。


 0.


 いよいよ時間を使い切ってしまったが、言われた通りに俺は動きを止めない。

 端から端まで駆け抜け、全ての敵を斬り終わったところで俺は足がもつれて倒れ込んでしまう。


 この身体には未だ槍と剣が刺さったままで、そこから血が流れているだけではなく、目や耳からも血が溢れ出している。


「ぐごぉぉぉ」


 今や目も見えず、口から大量の血を吐いて全身痛みと震えと戦っているが、もう限界だ。


(ディアナ、ごめんな)


 その様子を死にきれなかった奴らが恨みの籠った目をしながらアルに近づいて行く。


「お前の仕業なのか、この化け物が」


 生きのこった五人がアルを殺そうとするが、テオが森から現れその連中にとどめを刺して回った。


「おい、生きているか、返事をしてくれよ」


 ユナも駆けつけ、刺さっている剣や槍を抜いてそこに回復薬を掛けるが、傷口は塞がらずどんどん血が溢れ出している。


「何で効かないのよ、ねぇアルしっかりしてよ」


 ユナとテオは傷口を押さえながら回復薬を掛けたり飲ませたりするが、アルの顔色が徐々に悪くなっていくばかりで回復の兆しは全くない。


 そんな状況の中で一匹の竜が舞い降りて来た。


「どうした、何があったんだ」


「少尉、助けて下さい。アルが…………」


 数分後、次々と飛竜が舞い降りてくる。

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