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勇者の系譜~俺に勇者のスキルがなくとも~  作者: アオト
第二章 マテウス王立上級学校六学年
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第六話 宿舎の中で

 急いで家に戻ると慌ただしく学校に戻る準備を進めていく。

祖父はレオニダスから話を聞き、かなりご満悦のようだった。

「勇者」のスキルでは無かったが、それでも有能なスキルだと確信して魔族討伐の任に付く可能性が絶たれていない事が余程嬉しいのだろう。

しかし母は複雑な表情をしているのが気になったが。


「準備が整いましたので、私は学校に戻ります」


 のんびりする暇もなくゴンザの操縦で学校に向かって行く。

母は今日ぐらいはゆっくりして欲しそうだったが、なるべくなら今日の夜までには学校に戻っておきたい。


 夕方になる頃には学校の宿舎に到着する事が出来たので、王都の隣に領地がある事は本当に恵まれている事だと強く感じてしまう。

自分の部屋の中に入ると既に同室のテオは到着していてベッドの上で天井をただ見ていた。


「テオにしては早いじゃないか、てっきりいつもみたいに明日帰ってくると思っていたよ」


「何だか家に居ずらくてな、俺のスキルだと戦術課に入ったとしても幹部騎士になれるか微妙だろ、なれないのなら何の為にこの学校に入れさせたのか、うちの親にして見ればショック何だろうよ」


 テオは未だ俺に視線を合わせず天井を見ている。

テオみたいな下級貴族はこの学校に入る為にはかなりの資金を使ったのだろう。

入ってしまえばさほどお金はかからないのだが、それまでには勉学の家庭教師やら剣術の家庭教師でかなりの金がかかったはずだ。

そこまでしなければこの学校に入学する事は出来ない。

余程才能が無ければ独学で受かる事などありえないからだ。

無理してもテオに家庭教師をつけたのは幹部騎士になれば見返りが大きい為である。

普通の兵士で良いのであればわざわざこの学校は選ばない。


「今考えても仕方が無いだろう。まだ幹部騎士になれないと決まった訳じゃ無いんだぜ、さぁメシでも食べに行こうよ」


「お前は気楽…………」


 テオは起き上がり始めて俺を見ると、言葉が途中で止まってしまい、何とも言えない表情になっている。


「どうしたんだ、何故そんな顔をする、何か見えるのか」


「お前に決まっているだろう、ハゲになっているし、身体も一回り大きくなっていないか」


 確かに俺もその事に気が付いて、今までの服が着れなくなってしまったので父の服を着る事にしている。

制服などは明日中にゴンザが届けてくれるので任せるしかないが、急な身体の変化に俺自身参ってしまっている。


「困ったものだよ、多分スキルの影響なんだけどな」


「苦痛変換だよな、使い方は分かったのか」


「少しだけな」


 俺が知っているのはまだほんの少しだけだと思う。

だから俺にはそれしか答えようがなかった。

テオのスキルを初めて聞いたのだが、「隠密行動」というスキル名で、確かに名前のままだと騎士と言うより暗殺者の方が似合っている様な気がする。

思わずほんの少しだけ笑ってしまった。


「お前な、あの場にいたんだから俺のスキルぐらい気にしておけよ、それにな多分このスキルを授かった原因の一部はお前に関係があるんだからな」


 テオが言うには、勇者の血筋として目立っている俺の同室であるテオは、俺の影にいつも隠れてしまっているので「隠密行動」のスキルが授かったと思っているようだが、俺はそれよりもこの宿舎から夜抜け出して遊びに行っていた事が原因だと思う。


「別に悪くは無いと思うけどな、鍛えれば魔王討伐部隊に入れるんじゃないか、それだったら下手な幹部騎士より待遇は良いじゃないか」


 魔国に攻め込んだり防いだりする部隊にはそれなりの戦力が求められる。

魔族の力は強力で精鋭部隊で対処に当たらないと対抗出来ないからだ。

そのおかげで給金はどこの部隊よりも高額となっているが死亡率はけた違いに高くなっている。


 テオは複雑な表情になってしまったが、それでも気を取り直して二人で食堂に歩いて行った。

いつもなら最上級生が窓際の席を占めているが、今年は最上級生がもう実習に行ってしまっているので俺達が窓際に座っても問題は無いだろう。


「やはり窓際の席は気分がいいものなんだな、アル、六年目にしてようやく座る事が出来たよ」


「先輩が戻ってくる間だけだろ、別に俺は何処でもいいよ」


 テオと話していると、食堂にイーゴリといつも手下の様にくっついているメノンとパウロス達が入って来た。

俺達を見つけると何かコソコソと話しながら近くの席に座って来る。


「なぁどうしたんだよその頭は、頭を丸めれば戦術課に入れると思ったのか、このハゲが」


 イーゴリがにやけながら言ってきたが、前までの俺ならここで立ち上がって向かって行ったのだが、今はそんな気分にならず、違う席に移動しようとして立ち上がった。


「お前、一体何なんだよその身体は……ぐわぁ」


 イーゴリは言葉を言い終わらない内に頭上に拳骨か落とされ、頭を抱え込んで蹲ってしまった。


「人の見た目を馬鹿にするのは良くないな、君は騎士を何だと思っているんだい。騎士は兵士達の模範であるべきなんだよ」


 俺と同じハゲであるレオニダスが何故か此処に現れて俺に笑顔を見せて来た。

イーゴリは涙目になりながらも立ち上がりレオニダスを睨みつけた。


「誰なんだよ貴様は、伯爵家の俺に対して無礼だぞ」


 レオニダスは笑顔のまま、イーゴリの顔面の中心を殴りつけた。


「それがどうしたと言うんだい。君はジューコフ家の子息だろ、君が家名を出して此処の教師になった私を恫喝した事は君の父上であるグラーシに伝えておくよ、さぁ君達はもう今日は食べなくていいからさっさと出て行くんだ」


 イーゴリは父親の名前を呼び捨てにするレオニダスに動揺して、メノンとパウロスに助けを求めるような視線を送るが、二人もどうしていいのか分からない。


「あの、先生はうちの父親とどのような関係なのですか」


「あのな、そんな事は気にする必要はないが、しいていえばつい先日までは私の部下だったよ、信じられないのならば聞いてみるといい」


「いいえ、失礼致します」


 イーゴリは俺を見る事は無く食堂から二人を連れて去って行った。

後で知った話なのだがこの事が原因で、父親から中間休みにも家に戻って来る事を許されなかったらしい。


「レオニダスさんは教師になられたんですか」


 俺の質問にレオニダスは眉間に皺を寄せた。


「あれから軍を引退するとランベルト様に言ったらこうなってしまったんだよ、私が逆らえる訳ないだろう。それからはあっという間にこれだよ、酷い話だと思わないか」


 少し悲しそうな顔をしたレオニダスが何だか可哀そうだった。

 ここまで読んで下さり有難うございます。早くも二章にはいりますので宜しくお願いします。この二章からは少し長くなる予定です。


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